英雄伝説~灰の軌跡~
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第34話
~パンダグリュエル・パーティーホール~
「こ、これって………」
「武器と防具のようだが……」
「どれも相当な業物だな……」
「っ!何て凄まじい霊力……!」
「武具に込められている霊力の質からして少なくても、これらの武具は”この世界では存在していない材料”によって創られているのでしょうね。」
「”この世界では存在していない材料”という事は”異世界には存在している材料”か……」
「そう言えばⅦ組の皆様が特務部隊の指揮下に入れば、かの”匠王”製の武具をⅦ組の皆様に支給すると仰っていましたが……まさかこれらがそうなのですか?」
自分達の目の前に着地した数々の武具を見たエリオットとラウラは戸惑いの表情で武具を見つめ、武具の凄まじさを感じ取ったアルゼイド子爵は静かな表情で呟き、エマは驚き、目を細めて呟いたセリーヌの推測を聞いたジョルジュは興味ありげな表情でアリサ達の前に置かれてある武具を見つめ、ある事に気づいたシャロンはレンに訊ねた。
「ええ、そうよ。武器が変わる影響で自分の手に馴染む為の練習が必要だと思ったから、今の内に支給してあげたのよ。」
「確かに得物が変わったら、威力や重さ、射程距離も違うから支給された武器に慣れる為の時間が必要だね。」
「得物が変わると言っても、武器の種類は同じだから、そんなに変わらないんじゃないか?今まで僕達も実習先で装備を変更した事もあるけど、わざわざ武器に慣れる為の時間なんて取らずに、ぶっつけ本番だったぞ?」
レンの説明を聞いたフィーが納得している中、マキアスは戸惑いの表情で指摘した。
「うふふ、ウィルお兄さんが作った武具にはそれぞれ”特殊な効果”が秘められているから、その”特殊な効果”を実戦で活用する為に練習する必要はあると思うわよ?」
「”特殊な効果”………支給してもらった武具から凄まじい”風”は感じるが……まさかそれが関係しているのだろうか?」
レンの話を聞いてある事に気づいたガイウスはレンに訊ねた。
「正解♪それぞれの武具の性能についてはレンが簡単にまとめてレポートにしてあげたから、後でそのレポートを渡すからそのレポートを読んでそれぞれの武具の性能を把握して練習してね♪」
「ええっ!?そ、それじゃあレン皇女殿下自らがⅦ組の皆さんの為にわざわざ武具の性能についての説明のレポートを作成されたのですか……!?」
「……俺達のような若輩者の為に殿下の貴重なお時間を割いて頂き、誠にありがとうございます。」
「どういたしまして♪」
レンの説明を聞いたアルフィン皇女が驚いている中ユーシスが会釈をして感謝の言葉を述べ、レンは笑顔で答えた。
「あの………後でⅦ組のみんなに支給して頂いた武具を解析しても構わないでしょうか?その……技術者の端くれとして、あの”匠王”が創った武具を調べる事でⅦ組のみんなを含めた士官学院の生徒達、それに特務部隊の皆さんをサポートする為に必ず役に立つと思いますし……」
「ジョルジュ君……」
「”持ち主”であるアリサお姉さん達から許可を取れたら、ジョルジュお兄さんの好きにしたら?アリサお姉さん達に支給した事によってそれらの武具の所有権はアリサお姉さん達に移ったのだから、内戦が終結してもそれらの武具の返還を求める”権利”はレン達メンフィルにはない―――というか”支給品”を返せだなんて、常識的に考えてありえないでしょう?」
ジョルジュの嘆願と説明を聞いたトワが微笑んでいる中レンは興味なさげな様子で答え
「ええっ!?それじゃあ内戦が終結しても、これらの武具はメンフィル帝国に返還しなくていいんですか!?」
レンの説明を聞いて驚いたエリオットはレンに訊ねた。
「ええ。―――ああ、そうそう。先に言っておくけど、解析した所でジョルジュお兄さんは当然として、”ラインフォルトグループ”みたいな導力技術に長けている企業や技術者が調べても、ほとんどわからないと思うわよ。それらの武具にはそこの黒猫さんが言っていたように、”ゼムリア大陸では存在しない材料や技術”によって創られているのだからね。」
「参考にまで聞くけど、例えばどんな名前の材料が使われているのかしら?」
「そうねぇ………少なくても、支給した全ての武器に”オリハルコン”は使われていると聞いているわ。」
「ええっ!?い、異世界には”オリハルコン”まで存在しているのですか!?」
「?いいんちょやセリーヌはその”オリハルコン”って名前の材料を知っているの?」
「それに随分驚いているようだが………そんなに珍しい材料なのか?」
セリーヌの質問に答えたレンの説明を聞いて驚いている様子のエマが気になったフィーとガイウスは不思議そうな表情でエマを見つめた。
「……”オリハルコン”は伝承や文献等で出てくる架空の鉱石の一種でね……莫大な霊力を秘めていたり、神が与えた金属とか色々諸説はあるけど………オリハルコンは存在する鉱石の中では『最も硬い』という事がオリハルコンに関して全ての諸説に共通していると言われているわ。」
「『最も硬い鉱石』という事はダイヤモンド―――いや、”ゼムリアストーン”よりも硬い鉱石なのかい?」
セリーヌの説明を聞いてある事が気になったジョルジュは質問した。
「はい、恐らくは。セリーヌも言っていたように”オリハルコン”は『この世で最も硬い鉱石』ですから、その鉱石が材料としている使われているこれらの武器による攻撃でしたら”機甲兵”の”リアクティブアーマー”を易々と貫通する事もできると思いますし、オルディーネ―――”騎神”にも有効なダメージを与えられると思います。」
「我等の攻撃が全く通らなかったあの障壁を貫くどころか、”騎神”にまで有効なダメージを与えられるのか……」
「という事はこれらの武器なら、”騎神”を持っているクロウにも対抗できるって事だね~。」
「そうね……まあ、”使い手”となるあたし達が使いこなせないと”猫に小判”でしょうけどね。」
エマの推測を聞いたラウラが考え込んでいる中、ミリアムの言葉にサラは真剣な表情で頷いて目の前の自身に支給された強化ブレードと銃を見つめた。
「ハハ、しかも創ったのはあのウィル君だからね………私の得物であるこの銃も”影の国事件”に巻き込まれた時、ウィル君達が創ってくれた武器だから、多分戦車どころか機甲兵にも余裕でダメージを与えられるだろうね。」
「”影の国事件”に巻き込まれたお兄様もかの”匠王”が直々に創った武器をお持ちという事はもしかしてお兄様と一緒に”影の国事件”を解決したシェラザードさんやアネラスさんも……」
「ええ、”影の国事件”の最終決戦前に創ってもらって、そのまま使い続けているわ。」
「アハハ……セリカさんやリウイ陛下達みたいな人達はともかく、正直、今でも私達には分不相応な武具だと思っているから、少しでも武具に相応しい使い手になるように、精進し続けているんだよ?」
オリヴァルト皇子の話を聞いてある事に気づいたアルフィン皇女に視線を向けられたシェラザードとアネラスはそれぞれ苦笑しながら答えた。
「うふふ、ちなみにそれらの武具は”然るべき所”に売ったら、数億ミラは下らないと思うわよ?」
「す、数億ミラ!?家も余裕で買える金額じゃないですか!」
「フン、家どころか平民――いや、下級貴族でも、一生遊んで暮らせる額だな。」
レンの説明を聞いて驚いているマキアスを見たユーシスは鼻を鳴らして指摘し
「ちなみにその”然るべき所”って、”ラインフォルトグループ”みたいな技術関係の大企業の事~?」
「ミ、ミリアムちゃん。」
ミリアムの質問を聞いたクレア大尉は冷や汗をかいた。
「ええ。技術関係の企業からしたら、みんなに支給した武具はとんでもない”価値”があるもの。ゼムリア大陸には存在していない材料が使われている事もそうだけど、見た事もない技術で創られているのだから、技術に携わっている人達にとっては自分達の技術力を上げる為のお宝だと思うわよ。」
「ふふっ、内戦が終結した後もし先程支給して頂いた武具の売却を考えているのでしたら、是非私にご相談下さい。可能な限り、皆様がご希望する売却額で引き取らせて頂きますわ♪」
「シャロン、貴女ねぇ……」
レンの説明に続くように答えたシャロンの話を聞いたその場にいる多くの者達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中アリサはジト目でシャロンを見つめた。
「で、こっちが武具よりも早く慣れて欲しい”支給品”よ。」
更にレンが再び指を鳴らすと異空間から9つの戦術オーブメントが現れた後、それぞれアリサ達―――Ⅶ組所属の人物達の前に着地した。
「これは………戦術オーブメントか。」
「その……戦術オーブメントでしたら、私達は”ARCUS”を持っていますから、わざわざ支給して頂く必要はないのですが……」
自分達の前に着地した戦術オーブメントをガイウスが静かな表情で見つめている中エマは戸惑いの表情で意見をした。
「うふふ、その戦術オーブメントの正式名称は”ENIGMA(エニグマ)R(リメイク)”だから、みんなが普段使っている”ARCUS(アークス)”じゃないわよ?」
「な――――”ENIGMA(エニグマ)”……それも”ENIGMA(エニグマ)R(リメイク)”だと!?」
「確かエプスタイン財団が開発した最新の戦術オーブメントは”ENIGMA(エニグマ)Ⅱ”だったはずですが……」
「まさかメンフィル帝国が独自に開発した戦術オーブメントなのでしょうか?」
レンの答えを聞いたトヴァルは驚きの声を上げ、ジョルジュは困惑の表情をし、ある事に気づいたシャロンは真剣な表情でレンに訊ねた。
「”半分”正解ね。”ENIGMA・R”はレンとティータ達との共同開発だから、正確に言えばメンフィルとリベールが共同で開発した戦術オーブメントね。」
「ちなみにティータちゃんはレンちゃんとお友達の関係で、レンちゃんより一つ年上のとっても可愛い女の子なんだよ♪」
レンの説明に続くように笑顔で答えたアネラスの答えにその場にいる全員は脱力し
「ハア……それじゃあ、あの娘の事を知っている人達以外わからない説明でしょうが……」
「ハハ……レン君とアネラス君の話に出て来たティータ君と言う人物はZCF(ツァイス中央工房)の技術者の見習いなのだが……彼女の家族は一家全員が導力技術者で、ティータ君も家族の才能をしっかりと受け継いだ健気な性格をしている女の子でね……彼女のファミリーネームは”ラッセル”と言えば、彼女が誰の才能を受け継いでいるのかジョルジュ君やアリサ君ならわかるだろうね。」
「ええっ!?ラ、”ラッセル”って……!」
「まさか……シュミット博士と同じ”三高弟”の一人であり、『導力革命の父』と称されているアルバート・ラッセル博士のご家族なのですか?」
シェラザードは呆れた表情で溜息を吐き、苦笑しながら答えたオリヴァルト皇子の説明を聞いてある事に気づいたアリサは驚き、ジョルジュは信じられない表情で訊ねた。
「ああ。ティータ君はそのラッセル博士の孫娘さ。」
「先程レン皇女殿下は共同開発したのは”ティータ達”と仰いましたが……まさかアルバート・ラッセル博士を含めた”ラッセル家”の方々と新たな戦術オーブメントを共同開発されたのですか?」
「あ~、そう言えばラッセル博士の娘のエリカ・ラッセルは”カペル”や”アルセイユ”の基盤を作り上げた技術者だから、ラッセル博士同様その筋の世界では有名な存在だったね~。」
クレア大尉のレンへの質問を聞いたミリアムはある事を思い出して呟き
「ええ、そうよ。ティータ達と一緒に開発したその戦術オーブメント―――”ENIGMA(エニグマ)R(リメイク)”は今までの新型の戦術オーブメントと違って、”ENIGMA(エニグマ)Ⅱ”のクオーツやマスタークオーツと互換性があるわ。」
「ええっ!?旧型のクオーツと互換性がある新型の戦術オーブメントなんて、世界初ですよ!?」
「……そんなに驚く事なのだろうか?」
レンの説明を聞いて驚いている様子のアリサが気になったガイウスは導力技術について詳しいジョルジュに視線を向けて訊ねた。
「ああ………今まで開発されてきた戦術オーブメントはどれも、旧型の戦術オーブメントのクオーツとの互換性は無かったんだ。」
「うふふ、ちなみに”ENIGMA・R”は”ENIGMAⅡ”の機能に加えて”ARCUS”独自の機能である”戦術リンク”も搭載しているわよ♪」
「せ、”戦術リンク”まで搭載しているんですか!?」
「そういや、バリアハートでリィン達と戦った時も、リィン達は”ENIGMA”を使っている様子だったのに”戦術リンク”も使ってきたな……」
「うむ……その事を考えると恐らくリィン特務准将殿達―――いや、メンフィル軍には既に”ENIGMA・R”が支給されているのであろうな……」
ジョルジュの話に続くように答えたレンの説明を聞いたトワは驚き、トヴァルとラウラはかつての出来事を思い出していた。
「それにしても、一体どうやって”戦術リンク”の機能まで搭載したのよ?元々”戦術リンク”が搭載されている”ARCUS”は”ラインフォルトグループ”が独自で開発した戦術オーブメントのはずよ?」
「うふふ、そこは仔猫であるレンの出番よ♪」
疲れた表情で疑問を口にしたサラの質問に対して笑顔で答えたレンの答えにその場にいる多くの者達は冷や汗をかいて脱力し
「キ、仔猫、ですか……?」
「意味不明なんだけど。」
我に返ったアルフィン皇女は困惑の表情で呟き、フィーはジト目で指摘した。
「!……なるほど。”そういう事”ですか。」
「へ……シャロンさんは今の話を聞いてわかった事があるんですか?」
一方ある事を察して真剣な表情をしたシャロンの様子が気になったマキアスは不思議そうな表情で訊ねた。
「はい。恐らくレン皇女殿下は”ラインフォルトグループ”にハッキングをしたかと。」
「ハ、”ハッキング”!?で、でも”ラインフォルトグループ”のデータベースは導力端末に明るい母様直轄の”第四開発部”の人達がハッカー対策をしているはずよ!?」
シャロンの推測を聞いたアリサは血相を変えて反論したが
「いえ……以前の話にも出ましたが、レン皇女殿下はかつてクロスベルに滞在していた際、エプスタイン財団から出向しているスタッフによるハッカー対策も易々と突破し、IBCを始めとしたクロスベルのありとあらゆる施設が備え付けた導力端末システムにハッキングをし、様々な情報を手に入れていたとの事ですから、レン皇女殿下にとっては”ラインフォルトグループ”にハッキングする事も容易い事かと。」
「ちなみに”殲滅天使”のハッカーとしてのハンドルネームは”仔猫”なんだよ~。」
クレア大尉が困った表情でアリサの反論を否定する説明をし、ミリアムは呑気な様子で呟き、二人の答えを聞いたその場にいる多くの者達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「そう言えばそんな話もあったわね……」
「でも、どうして”ラインフォルトグループ”にハッキングを……」
セリーヌは疲れた表情で呟き、エマは不安そうな表情でレンを見つめた。
「クスクス、戦争に勝つ為に”敵国”の”技術”を盗んで自国の技術力をあげる事は当たり前でしょう?」
小悪魔な笑みを浮かべて答えたレンの答えを聞いてある事を察したその場にいる多くの者達は再び冷や汗をかいて表情を引き攣らせ
「……その口ぶりからすると、メンフィル・エレボニア戦争の間にレン皇女殿下は”ラインフォルトグループ”にハッキングをしたのですか?」
アルゼイド子爵は静かな表情でレンに問いかけた。
「大正解♪ちなみに”ラインフォルトグループ”から得た情報は”ARCUS”だけじゃないわよ?―――勿論”機甲兵”や”列車砲”の情報も得たわよ♪」
「き、”機甲兵”や”列車砲”の情報まで……!」
「ハハ……という事はメンフィルは”機甲兵”や”列車砲”も手に入れたも同然って事じゃないか……」
「ううっ、”ラインフォルトグループ”の情報は一体どれだけ流出したのかしら……?」
「ふふっ、今回の件を今後の課題にして、情報管理の方法を見直す必要が出てきましたわね。」
レンの答えを聞いたエリオットは驚き、オリヴァルト皇子は疲れた表情で呟き、アリサは頭を抱え込み、シャロンは苦笑していた。
「……あの。先程レン皇女殿下は”ENIGMA・R”は”ENIGMAⅡ”の機能に加えて”ARCUS”独自の機能である”戦術リンク”も搭載している上、”ENIGMAⅡ”のクオーツやマスタークオーツと互換性があると仰いましたけど、もしかして”ENIGMA・R”は、”ENIGMAⅡ”に”戦術リンク”の機能を追加しただけなんではないでしょうか……?」
「あら、さすがジョルジュお兄さんね。またまた大正解♪実は新型の戦術オーブメントと言っても、既存の戦術オーブメントに新機能を追加するだけだったから、そんなに時間はかからなかったのよ♪」
ジョルジュの推測を肯定したレンの答えを聞いたアリサ達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「どこが新型の戦術オーブメントだよ………要するに”ENIGMAⅡ”に戦術リンクの機能を搭載しただけじゃねぇか。」
「だけど、”ENIGMAⅡ”に戦術リンクの機能を搭載されれば、少なくても”ARCUS”よりは使い勝手が良くなるでしょうね。」
「へ……それって、どういう事なんですか?」
トヴァルは呆れた表情で指摘し、複雑そうな表情で呟いたサラの言葉が気になったマキアスは呆けた表情で訊ねた。
「使えるアーツの数の違いよ。」
「使えるアーツの数の違い……という事は、”ENIGMAⅡ”―――いえ、”ENIGMA・R”は”ARCUS”と比べると使えるアーツの数が変わるという事でしょうか?」
レンの答えを聞いてある事に気づいたラウラは自身の推測を口にしてレンに確認した。
「そ。”ARCUS”を今まで使い続けてきた”Ⅶ組”のみんなも知っての通り、アーツを使う場合、”使用可能アーツが登録されているクオーツ”をセットする事でアーツを使えたけど、”ENIGMA・R”を含めた従来の戦術オーブメントは”属性値”でアーツが使えるのよ。」
「”属性値”………?」
「”属性値”って言うのは、その名の通りそれぞれの”属性”の”数”の事を言うんだよ。例えば攻撃アーツの”ファイアボルト”を使う為には火属性の”属性値”が1つ必要で、同じく攻撃アーツである”ヒートウェイブ”を使う為には火属性が3つと風属性が1つ必要なんだ。勿論戦術オーブメントにセットしているクオーツによる属性値の分だけ、アーツを使えるから”ヒートウェイブ”が使える場合、”ファイアボルト”に加えて火属性2つで使えるようになる補助アーツ”フォルテ”と風属性1つで使えるようになる攻撃アーツ”スパークル”が使用可能になるんだ。」
「えっと……ちなみに”ARCUS”で”ファイアボルト”を使用する際には”ファイアボルト”が登録されているクオーツが必要だったけど、従来の戦術オーブメントはアーツが登録されているクオーツが無い代わりにみんな、”属性値”があるクオーツだから、火属性の属性値が1つである”攻撃1”のクオーツでも”ファイアボルト”が使えるようになるから、”ENIGMA”を含めた従来の戦術オーブメントは”ARCUS”と違ってどんなクオーツをセットしても必ずアーツが使えるようになるんだ。」
レンの説明を聞いて不思議そうな表情で首を傾げているフィーにジョルジュが説明し、トワはジョルジュの説明を補足した。
「それって、どう考えても”ARCUS”より”ENIGMAⅡ”の方が上じゃん!」
「ミ、ミリアムちゃん。”ARCUS”には”戦術リンク”という独自の機能があるのですから、一概に”ARCUS”が劣っているとは断言できませんよ?」
「フン、要するに俺達は”ラインフォルトグループ”に”ENIGMAⅡ”の劣化品を掴まされていたのか。」
「ちょ、ちょっと!?何でそこで私を見るのよ!私は”ARCUS”の開発に一切関わっていないどころか、”ラインフォルトグループ”の経営や開発にも一切関わっていないのよ!?」
「フフッ、使用可能なアーツの数の違いが唯一の欠点であったのですから、我々”ラインフォルトグループ”としては耳の痛い話ですわ。」
二人の説明を聞いて声を上げたミリアムにクレア大尉は冷や汗をかいて苦笑しながら指摘し、ジト目になったユーシスに視線を向けられたアリサは反論し、シャロンは苦笑しながら答えた。
「うふふ、今までの説明を聞いてわかったと思うけど、”ENIGMA・R”は”ENIGMAⅡ”のアーツの豊富さと”ARCUS”独自の機能である”戦術リンク”と、それぞれの戦術オーブメントの良い所を合わせた戦術オーブメントだから、今後の戦いに必ず役に立つわよ?」
「まあ少なくても、エマみたいにアーツを主体にしているメンバーにとっては戦力向上になるわね。単純に考えれば使えるアーツの数が増えるのだから、その増えた分だけ色々な戦い方ができるのでしょうしね。」
「セリーヌ………」
レンの説明に続くように答えたセリーヌの推測を聞いたエマは複雑そうな表情をし
「えっと………絶対に”ENIGMA・R”に変更しないとダメなんですか?」
ある事が気になっていたエリオットはレンに訊ねた。
「それについては各自の判断に任せるわ。その戦術オーブメントもあくまで”支給品”なんだから、支給された戦術オーブメントをどうしようがエリオットお兄さん達の自由よ。―――だけど、”ENIGMA・R”は”ARCUS”とは比べものにならないアーツの豊富さに加えて、”戦術リンク”の機能の一つである”リンクアビリティ”の最高レベルが10に上がっているから、アーツの数の件を置いておくにしても”ENIGMA・R”の方が上よ?」
「ええっ!?”リンクアビリティ”の最高レベルが”10”!?」
「確か”ARCUS”の”リンクアビリティ”の最高レベルは”5”と聞いた事がありますから、その2倍になりますわね。」
「ハハ、さすがレン君とラッセル一家が共同開発した戦術オーブメントだけあって、とんでもない代物だね。」
「さすがレンちゃんとティータちゃん!可愛いことは、無敵である証拠だね!」
「それと今の事がどう関係するのよ……ちなみにその”ENIGMA・R”、だったかしら?メンフィルとリベールによる共同開発って事は、いずれ遊撃士協会にもその戦術オーブメントが出回るのかしら?」
レンの説明を聞いたアリサは驚き、アルフィン皇女は目を丸くし、オリヴァルト皇子は苦笑し、アネラスの発言にその場にいる多くの者達が脱力している中シェラザードは呆れた表情で指摘した後気を取り直してレンに訊ねた。
「少なくてもメンフィル帝国領やリベールに支部を置いている遊撃士協会の人達には出回ると思うわよ。遊撃士協会は基本戦術オーブメントの支給についてはエプスタイン財団と契約を結んでいるようだけど、エレボニアのレグラム支部に所属しているトヴァルお兄さんが”ARCUS”を持っている事を考えると、その国に支部を置いている遊撃士協会にその国独自が開発した戦術オーブメントが出回る事に関してはエプスタイン財団も文句を言わないと思うし。よければ、シェラお姉さんとアネラスお姉さんの分も用意しましょうか?」
「へ……い、いいの?」
レンの申し出を聞いたアネラスは呆けた声を出した後訊ねた。
「ええ。メンフィル(こちら)としても、”中立勢力”として同行している二人の身に”何かあった場合”、リベールを含めた中立勢力にその責任を問われて、最悪和解条約の条件を緩和する羽目になるかもしれないから、二人の戦力を向上させる事はメンフィルとしても賛成よ。」
レンの答えを聞いたその場にいる多くの者達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせ
「結局は和解条約を変更させない事に行き着くのね……」
「まあ、当然と言えば当然か……」
サラは呆れた表情で呟き、トヴァルは疲れた表情で呟いた。
「あ、あはは………でも、どうしましょう、先輩?」
「そうね………”戦術リンク”とやらの機能は試してみないとわからないけど………単純に考えれば”ENIGMAⅡ”に新機能が追加される上せっかく向こうがわざわざ用意すると言っているんだから、遠慮せず受け取っておきましょう。現状の特務部隊と貴族連合軍の戦力差を考えるとユミルの件みたいに、皇女殿下に貴族連合軍の魔の手が迫る程追い詰められた状況には陥らないと思うけど、念には念を入れていく必要があるわ。」
「了解しました!という事だから、お願いしてもいいかな、レンちゃん?」
シェラザードの意見に同意したアネラスはレンに視線を向け
「了解♪明日の朝には渡せるように手配しておくから、”戦術リンク”についてはトヴァルお兄さんや”Ⅶ組”のみんなから教わってね♪」
「あの………”ENIGMA・R”の件で、一つ気になる事が出て来たのですが……」
アネラスの頼みごとにレンが返事をするとジョルジュがレンを見つめて申し出た。
「何かしら?」
「先程レン皇女殿下は”ENIGMA・R”は”ENIGMAⅡ”のクオーツやマスタークオーツと互換性があると仰いましたが………その説明ですと、”ARCUS”のクオーツやマスタークオーツと互換性がない事になる為、”Ⅶ組”のみんなが”ENIGMA・R”に変更した場合、アーツが使えなくなる事態に陥ってしまうのですが……」
「うふふ、その点に関しての問題も当然理解していて、既に対策してあるわよ。」
ジョルジュの指摘に小悪魔な笑みを浮かべて答えたレンが指を鳴らすと異空間から大量のクオーツやマスタークオーツが入った袋が現れてデスクに着地した。
「これは………クオーツか。」
「それにマスタークオーツも複数あるな……」
「もしかしてⅦ組のみんなに支給して頂いた戦術オーブメントに対応しているクオーツやマスタークオーツでしょうか?」
デスクに着地したクオーツやマスタークオーツが入った袋を見たガイウスとラウラは静かな表情で呟き、トワはレンに確認した。
「ええ。マスタークオーツは担当教官であるサラお姉さんを含めた”Ⅶ組”の人数分、クオーツは各属性のレベル3のクオーツを3種類ずつ、後は”治癒”のような特殊クオーツを各属性1種類ずつ用意したわ。それだけあれば支給した全員分の”ENIGMA・R”のスロットに空きを作る事はないわ。まあ、それでも足りないんだったら………これらを使って。」
トワの質問に答えたレンが再び指を鳴らすと大量のセピスが入った袋が7つ異空間から現れて、デスクに着地した。
「これは………セピスが入った袋か。」
「袋が7種類あるという事は、各属性のセピスを用意されたのですか?」
袋に入っているセピスを見たオリヴァルト皇子は静かな表情で呟き、アルゼイド子爵はレンに訊ねた。
「ええ。各属性のレベル3クオーツを2個ずつ用意できる分のセピスが入っているわ。クオーツの合成はジョルジュお兄さんに任せて構わないよね?」
「はい。………僕は”ARCUS”だけでなく、”ENIGMAⅡ”についても学んでいるから、もし”ARCUS”だけでなく”ENIGMA・R”の新たなクオーツが必要になったり、スロットの強化が必要になったらいつでも言ってくれ。」
「ありがとうございます、ジョルジュ先輩。」
レンの確認の言葉に頷いたジョルジュはアリサ達を見回して答え、エマがⅦ組を代表して感謝の言葉を述べた。
「後”ARCUS”から”ENIGMA・R”に切り替える場合、レンが”ARCUS”の”リンクアビリティ”を”ENIGMA・R”にコンバートするから、戦術オーブメントを切り替える人達はいつでもレンに申し出てね。」
「コ、”コンバート”………?初めて聞く言葉ですけど、もしかして導力技術関係の専門用語か何かですか?」
レンの話を聞いてある言葉が気になったマキアスは不思議そうな表情で訊ね
「はい。”コンバート”とは導力端末技術の専門用語で、端末のデータやプログラムを他の端末に”変換”――――つまり、”引き継ぐ”事ですわ。」
「という事はまさかレン皇女殿下は”ARCUS”の”リンクアビリティ”を”ENIGMA・R”へと引き継がせる事が可能なのでしょうか?」
マキアスの疑問にシャロンが答え、クレア大尉はレンに確認した。
「ええ。―――ああ、それと最後にもう一つ。今夜は”パンダグリュエル”の貴賓区画の客室に宿泊できるように客室の準備もさせたから、カレイジャスで宿泊するか、パンダグリュエルで宿泊するかはⅦ組のみんなやオリビエお兄さん達の自由よ。」
「ええっ!?オ、オリヴァルト殿下達だけじゃなく、僕達まで貴賓区画の客室で宿泊していいんですか!?」
レンの説明を聞いたエリオットは驚きの声を上げて訊ねた。
「うふふ、エリオットお兄さん達は今日からレン達の”仲間”なんだから、”その程度の待遇”は当然でしょう?ちなみに貴賓区画の各客室にはバス・トイレも配備されている上お酒やジュース、お茶菓子におつまみもあるし、貴賓区画には大浴場もあるから、明日からの活動に備えてそれらの設備も活用して、たっぷり英気を養ってね♪」
レンの説明によってパンダグリュエルの施設の一部を知ったその場にいる多くの者達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「船の中なのに、大浴場まであるのか……」
「高級ホテル並みの施設ですね………」
「えへへ、大浴場なんてユミルの小旅行以来だね~♪しかも貴族連合軍が作ったお風呂だから、絶対豪華で広いから泳げるだろうね~♪」
「お願いしますから、そんなはしたない事をしないで下さい、ミリアムちゃん……」
「貴族連合軍はこの戦艦を作る為に平民達から絞り取った税金を一体どれだけつぎ込んだんだろうな?」
「おい………何故そこで俺を見る。」
「ううっ、”パンダグリュエル”に宿泊するなんて色々な意味で複雑だけど、お風呂に入れることは正直ありがたいわよね……」
「ふふっ、大旦那様達と共にノルド高原に潜んでおられたお嬢様達は内戦が勃発してから、シャワーを浴びる事すらできませんでしたものね。」
「ハア……こうなったら、今夜はヤケ酒よ!客室にある貴族連合軍が大金をはたいて揃えた高級酒を一本でも多く飲みまく―――いえ、いっそ客室全部の酒をカレイジャスに運び込もうかしら?」
「お前もシェラザードの事を言えないぞ……」
ガイウスは興味ありげな表情で呟き、エマは苦笑しながら呟き、無邪気な笑顔を浮かべたミリアムの言葉を聞いたクレア大尉は呆れた表情で指摘し、ジト目で見つめてきたマキアスに対してユーシスは睨み返し、疲れた表情で呟いたアリサの言葉を聞いたシャロンは苦笑し、疲れた表情で溜息を吐いた後気を取り直して呟いたサラの言葉を聞いたトヴァルは呆れた表情で指摘した。
「むう……大浴場まであるなんて、パンダグリュエルにずっと軟禁されていたわたくしも今、初めて知りましたわ。ですが、アリサさん達―――大勢の女性達とお風呂で楽しくおしゃべりできますから、そんな細かい事を気にしている場合ではありませんわね♪」
「あ、あはは……この状況でそんな事を思いつくなんて、中々の大物ですよね、シェラ先輩……」
「ホントよね……その事も含めてあんたの妹だけあって、”色々な所”が似ているわね。」
「ハッハッハッ、そんなに褒めないでくれたまえ。照れるじゃないか♪」
頬を膨らませて不満げな表情で呟いた後すぐに切り替えたアルフィン皇女の様子に苦笑しているアネラスの言葉に頷いたシェラザードは呆れた表情でオリヴァルト皇子を見つめ、見つめられたオリヴァルト皇子は笑顔を浮かべて答えてその場にいる多くの者達を脱力させた。
その後アリサ達は色々考えた結果全員戦術オーブメントを”ENIGMA・R”へと切り替える事にした後、パンダグリュエルの施設を利用し、支給された新たな武具や戦術オーブメントによる模擬戦等を行った後明日からの活動に備えてパンダグリュエルで英気を養った。
そして翌朝、朝食を取ったアリサ達は再びリィン達”特務部隊”と対面した―――――
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