獣篇Ⅰ
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9 面接試験では、気を抜かない。
ゴリラ局長と、マヨラ副長が、座敷にひいてあった座布団の上に座ると、
マヨラ副長が、話を切り出した。
_「で?今日はいったい、何のご用件で?
もしや、この女の付き添いか?」
バレバレじゃァァァァん!
銀時が、珍しく神妙に答える。
_「ああ。実は、そうなんだよ、マヨラ副長ォ。」
_「誰が、マヨラ副長だァァッ!」
副長自身、そのあだ名は、相当なコンプレックスみたいだ。
1つ1つ、慎重に分析していく。
_「話をもとに戻すぞ。
で、だ。自己紹介と履歴書は後で出すとして、オレは今日、この女の「依頼」で、
お前たちのところに来た。
この女、どうしても真選組で働きたいそうだ。
どうだァ?いい話じゃねェか?」
企業の「推薦試験」みたいだ。
前にも1度、潜入したことがあるとはいえ、実際にこんな風に話をすることもなかったから、
なかなか、新鮮だ。
マヨラ副長が、口を開く。
_「では、そこの女、名前は何という?」
まぁ、確かに。まずそこは確実に聞かれるわな。
_「はい。アンナ・イェラノヴァ、と申します。日本名は、久坂零杏、です。
この間まで、ロシアに留学していました。
そして日本に帰ってきて、あなた方 真選組の活躍に感動し、私もそのように、
人のために尽くせるような人間になりたい、と思うようになり、今回、このような形で、
参りました。
どうぞ、よろしくお願いします。」
そこまで一気に言って、畳に手をつけ、一礼する。
大体の人間は、ここで気を許し、一気に採用までもっていくことができる。
「話術」も、暗殺者を務めるには、本当に大切な才能の一つだ。
マヨラー(かれ)も、同類の人間なのだろうか?
要分析人物だ。
しばらく時間をおいて、今度はゴリラ局長が、口を開く。
_「お嬢さんが、仮に我々 真選組に入隊したとすると、
お嬢さんには、男並みの労働をさせられることになりますが、
そこのところは、どうお考えですか?」
! この男、なかなか鋭い質問をしてきた。
暗殺者冥利に尽きる。
慎重に言葉を選びながら、私は答える。
_「…ええ。確かにあなたが指摘なさる通り、私は女性であって、男ではありません。
よって、皆さんにとっては簡単にできることでも、女の私にとっては難しいことも
たくさんあるかと、思われます。
ですが、仮に入隊できたとしたら、当たり前ですが、もちろん私なりに
ベストを尽くすつもりです。
どうぞ、よろしくお願いします。」
ここまで言い切ったので、だいぶ緊張もほぐれてきた。
よし、この調子だ。
隣の銀時は、さも「意外!」というような顔をしているし、真選組の面々も、とても
ビックリしているように見える。
このまま、無事に採用されればいいが…。
へまをすれば、高杉に叱られる。
しばらく時間があいて、局長が、口を開く。
_「よし。ここまでしっかりとした意志を持っているのなら、とりあえず採用することにしよう。
な、トシ。どうだ?お前は、どう思う?」
副長も、しぶしぶ口を開く。
_「…ああ。オレも、とりあえず採用することにして、いいと思う。
ここまで言って、副長は私の方に向き直る。
だが、もし下手なマネや、裏切り行為を働いた場合には、即クビ かつ、切腹だ。
わかったか?」
確かに、彼が一応、「鬼の副長」という異名を持っている理由が、分かったような気がした。
_「はい、わかりました、副長。
では、本日より、局長 及び副長にお世話になります。
どうぞ宜しくお願いします。」
とりあえず、面接が終わったことにホッとした。
局長に、しばらく座敷に留まるように、と言われたので、ここで銀時とは、お別れだ。
かれらが退場したのを確認してから、銀時に もう一度、別れを告げた。
_「ありがとうな、銀時。すべてお前のおかげだ。
あと、新八君や、神楽ちゃんにも、よろしく伝えておいてくれ。
あとは、頼んだ。」
_「ああ。」
そして、私たちは、それぞれ別の道を歩みだした。
銀時が去って、しばらくして、山崎先輩が、私の迎えに来た。
部屋まで、案内してくれるそうだ。
お互いに自己紹介を済ませ、私の部屋に向かう。
5分ほどすると、どうやら、私の部屋についたようだ。
_「はい、アンナさん。着きましたよ。
ここが、今日からのあなたの部屋になります。
とりあえず荷物を置いたら、次は食堂へ案内しますね。」
なかなか丁寧だなぁ。甘く見てたわ。
食堂に続く廊下を歩いていると、急に心臓が痛み出した。
_! なぜ? なぜ今?
考えている暇はない。とりあえず、バレぬようにせねば。
遠くなる意識をひっぱり戻しながら、なんとか必死でジミーについていくと、
…誰かとぶつかった。
誰?
後ろを振り返るとそこには…
!
あの、Mr.バズーカ砲がこちらを向いて、立っていた。
ヤバい、どうしよう…!?
するとそいつは、私に話しかけてきた。
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