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和-Ai-の碁 チート人工知能がネット碁で無双する

作者:笠福京世
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第二部 番外編 エンドロール
  津田久美子の日記帳 プロ低段編

H17年01月◇日

 奈瀬さんの彼氏さん(?)が昨年末に東南アジアを旅行中スマトラ島沖地震に遭遇し被災したらしい。

 香川いろはちゃんは『五月のライオン』の連載が心配だと言ってた。
 「なんで?」と思って聞いてみると原作の「そら」が奈瀬さんの彼氏さんで岸本空だと言う。知らなかった!

 かなり凄い人で驚いた。岸本さんは大学在学中に桐嶋堂を設立した社長さんで、
 大学卒業後は日本を離れて海外を拠点に投資事業を行い
 新しいテクノロジーと囲碁の世界を繋ぐ仕事に奔走しているそうだ。

 奈瀬さんは彼が海外に行くとき誘われたらしいけど断ったらしい。
 いろはちゃんは私だったら一緒に行くのにと言った。曰く「だって社長夫人だよ?遊んで暮らせるよ」

H17年〇月△日

 気になって調べてみたら桐嶋堂は今やKGSグループという企業の100%子会社になっている。
 KGSは「桐嶋囲碁サービス」の略で、ITと囲碁の世界を繋ぐを使命とした企業だけど想像以上に大きい。

 KGSグループ 投資持株会社:具体的な事業活動は行わない 代表取締役:岸本空
 
 関連企業
 →Amigoグループ(共同出資)→参加にメディア事業、広告事業、ホスティング事業などの子会社
 →4696プロダクション(共同出資)
 →桐嶋堂(100%子会社 規模小さい)→KGS囲碁サーバ
 →香港証券取引所に上場したIT企業に事業投資
 →中国での消費者向け電子商取引サイト、検索エンジンなどにも事業投資
 →シリコンバレーの投資ファンドにも参加しVC(ベンチャーキャピタル)を支援

 ・桐嶋堂が英文囲碁書籍の出版、中文囲碁書籍の翻訳や出版、新規囲碁書籍の出版を中心に行う
 ・ネット碁のKGSはスポンサー契約(寄付として資金を支援)および子会社を通じてシステムの開発や管理・運用を支援
 ・囲碁関連ソフト開発→中国のプロ棋士や日本の大学の研究室(東応大学ゲームプログラミングセミナーのGPS囲碁)に資金を提供
 ・芸能事務所4696(しろくろ)プロダクションには北斗通信システムも出資しオフィシャルサイトの制作などを行っている。
 ・インターネットメディア事業(Amigo)でblogサービス,SNSサービス,レンタルサーバなどホスティング事業も
 ・また国内・海外のインターネット調査会社Amigoリサーチ、ネット広告事業を行うAmigoマーケティング
 ・タレントブロガーが多いことが売りのレンタルブログサービスを提供 AmigoBlog
 ・ぶっちゃけ利益は事業投資が殆どで節税対策で色々とお金を使っている
 ・Amigoグループはヒルズ族のCEOが経営しており、ドンドンと大きくなる

 例えば桐嶋堂から出版された『東堂シオンの詰碁』シリーズは詰碁の本としては異例のヒットとなった。
 囲碁ビギナーズで「どうやって詰碁をつくるのですか」と質問された東堂シオンちゃんが、
 「碁盤に碁石を転がせば、2つ、3つの詰碁はわけなくできる」と言って即興で詰碁を作っていた。

 他にも芸能事務所4696プロダクションには倉田さんと香川いろはちゃんが所属してる。
 聞くと奈瀬さんと塔矢アキラ君も岸本さん本人から誘いを受けたけど事務所に入るのを断ったらしい。
 噂では緒方先生も事務所に所属しないかと説得されて保留中とのことだ。
 そういえばAmigoBlogを使っている囲碁棋士も多い気がする。

H17年02月〇日

 奈瀬さんは彼氏さんと連絡取れたらしい。彼氏さんは現地に残って災害復興に当たるらしい。
 随分と大きな地震だと聞いていたが、それほど日本ではニュースになってない気がする。
 香川いろはちゃんに聞いたら災害規模の大きさに比べて経済的な災害被害が少ないからと言っていた。
 同じ規模の地震が日本で起こったら神戸を超える大震災になると説明された。なるほど。
 あくまでテレビの向こうの遠い国のニュースと現地で被災した意識の差も大きいのだろうと思った。

H17年△月×日

 倉田先生と香川いろはちゃんが東堂シオンの「囲碁ビギナーズ」」に出演。
 ♪とんでとんでとんで~の名曲のリズムに合わせて、サビの部分では「一間トビ」で打つという縛りで対局を披露した。
 ♪まわってまわって~の部分では東堂シオンが見事な舞を披露して動画がネットに出回って大評判となった。

H17年〇月〇日

 倉田先生がNHNの囲碁対局で石を打ったとき、弾みで石が盤上から飛んで落ちてしまい、
 落ちた石を探していたら「時間切れ」になってしまったという事件をやらかしてしまった。

H17年×月×日

 香川いろはちゃんが囲碁フリーペーパーを1万部だけ頒布したけど……すぐに手に入らなくなった。
 内容はオシャレな碁会所特集やイケメン気になる“めがね”棋士たちなど。
 また「囲碁クラブ」で行った「浴衣で囲碁」のイベントなどに多くの若者が集まった。
 
 私はフリーペーパーの制作にあたり商学部の大学生になった元囲碁部の筒井さんを通じて
 美大に通いながらデザイナーを目指している加賀さんをいろはちゃんに紹介した。
 フリーペーパーのタイトルはデザイナーの鶴の一声で「いござんまい」になる。
 いろはちゃん「えーっ!ダサいしローマ字が良いのに」って愚痴ってたけど、
 自分の制作したフリーペーパーが大人気で入手困難となって満足してる。同人活動が楽しいらしい。

H17年12月×日 

 今年の七大タイトルを中心に囲碁界のニュースをまとめる。

 畑中先生が棋聖を防衛、緒方先生が十段を防衛。
 倉田本因坊に進藤君がタイトル初挑戦するが敗退←あかりと応援に行った。
 倉田先生が畑中先生から碁聖を奪取し初の三冠
 緒方名人に塔矢君が再び挑戦し初タイトルを奪取
 倉田先生は緒方先生に敗れて王座失陥
 緒方天元に奈瀬さんが再び挑戦し念願の天元位を奪取(*史上初の女流棋士の七大タイトル獲得)

 畑中棋聖、倉田本因坊・碁聖、塔矢アキラ名人、緒方十段・王座、奈瀬天元となった。
 四天王の活躍に続いて塔矢君、進藤君、奈瀬さんを中心とした若手の台頭が始まる。
 特に親子で塔矢名人となったアキラ君は10代名人が誕生したということで大きなニュースになった。
 もちろん女流棋士初の七大タイトルを獲得した奈瀬さんも同様だ。
 奈瀬さんは三期連続で女流三冠を独占し更に文部大臣から表彰を受けることになった。

 国際棋戦では韓国の高夏永が三年連続優勝を果たしている。

H18年01月△日

 囲碁ミュージック『コスミツケーション』がミリオンヒットし東堂シオンちゃんが昨年末に紅白初出場を果たす。
 10代名人となった塔矢アキラ君も紅白の審査員に選ばれて、
 紅白の生放送中に「(名人になったから)一緒になって欲しい!」とシオンちゃんに告白して場が騒然となる。
 どうやら「なって」じゃなくて「打って」と言ったらしい。どちらにしろ大胆過ぎるよ塔矢君。

H18年02月〇日

 女流棋士たちが集まっての女子会。奈瀬さんから絡み酒にあう。いろはちゃんは酔わないタイプだった。
 岸本さんは北斗通信システムで働いてた戸刈さんって人を引き抜いてKGSグループの運営を任せて、
 本人は東南アジアで震災復興の事業に注力し昨年は一度も日本に帰って来なかったらしい。
 震災復興はKGSからの義援金もあるけど、KGSの企業活動とは別に私財でNPO(非営利組織)として活動しているとのこと。今は日本人建築家の紙のログハウスによる仮設住宅の建設を支援しているそうだ。
 また東南アジアのNGO(非政府組織)の役員を務めることになり、今年も復興事業を継続するから会えないらしい。
 せっかくタイトル獲ったのにお祝いにも来てくれないのと愚痴っていた。

H18年03月×日

 第1回KGS証券杯コンピュータ囲碁大会が開催され楊海が開発した囲碁ソフト狂石が優勝する。
 エキシビジョンマッチで香川いろは女流との7子局に勝利。私も会場に行った。

H18年△月△日

 ついに漫画『五月のライオン』(第一部)がアニメ化

H18年△月▽日

 北斗通信システムの創業会長が逮捕された影響でU18北斗杯が今年で終わりになるそうだ。
 経済紙では「北斗通信ショック」として騒がれ株式市場が全体的に急落し囲碁界だけの騒ぎではない状態だ。
 北斗杯終了は残念だけど私は来年からU20桐嶋杯に発展解消すると聞いている。

H18年06月〇日

 芸能事務所4696プロに所属した緒方先生が女性誌で裸身グラビアを披露し吃驚!?
 勉強会で畑中先生が自分の方が(脱いだら)凄いとか悔しがっていた。
 いろはちゃんは緒方先生が眼鏡を外して撮影されていることに分かってないと激怒していた。

H18年×月〇日

 創作活動にハマった香川いろはちゃんと一緒にハートの碁石を制作し即売会で販売する。
 囲碁クラブの女性陣にも評判が良かった。初めてビックサイトに行ったけど凄かった。
 フリーペーパーも協賛企業が増えて倍の2万部刷ったけど→すぐになくなった。
 「いござんまい」では畑中先生がモデルデビューした人気囲碁棋士たちの勝負服特集が話題を集めた。

H18年10月▽日

 倉田先生が本因坊に会えるというコンセプトで「囲碁BAR」を六本木に開店したのでお祝いに行く。
 マスターは倉田先生のお友達で、倉田先生が不定期で現れるらしい。

H18年12月×日

 囲碁界のまとめ

 畑中先生から緒方先生が棋聖を奪取、緒方先生は十段を防衛
 倉田本因坊に塔矢名人が挑戦するが倉田先生が防衛
 畑中先生が倉田先生から碁聖を奪取、塔矢君は畑中先生から名人を防衛
 緒方先生は王座防衛、奈瀬さんは倉田先生に敗れて天元を失陥

 緒方棋聖・十段・王座、倉田本因坊・天元、塔矢アキラ名人、畑中碁聖
 奈瀬女流が棋聖リーグ入り(*史上初の女性棋士の三大リーグ入り) 女性三冠の独占は継続

 私、津田久美子も女流棋聖戦で念願の女流タイトル初挑戦を果たし奈瀬さんと対局した。

 囲碁界は奈瀬さん、東堂シオンちゃん、香川いろはちゃんの影響で囲碁を始めた女性陣がかなり増えて来た。
 高校生になった立花みほしちゃんが女流枠でプロ試験に合格する。
 新たに「女流最強戦」の女流タイトルが加わり、奈瀬さんが初代女流最強となり女流四冠を達成。

 この年から第1回KGS証券杯ネット囲碁オープンが開催された。
 KGS証券のCEOに就任した戸刈さんが北斗通信ショックで北斗杯は無くなるが、
 今後はKGSグループが棋戦を支援していくと表明した。

 KGS証券はKGSグループが北斗証券を100%子会社化して名称を変更した会社だ。
 KGSグループは北斗ホールディングスのファイナンス事業を買収した以外にも
 共同出資していた芸能事務所4696プロとシステム会社HEROINESを100%子会社化した。

 また今年からは30歳以下・六段以下の棋士を対象とした若鯉戦という棋戦も始まった。
 何と香川いろは女流がジャイアントキリングを繰り返して棋戦初優勝した!!

H19年03月×日

 第2回KGS杯コンピュータ囲碁大会で楊海が開発した狂石が再び優勝。
 一柳名誉棋聖と対局し19路盤の7子局で中押し勝ち。
 一柳先生は「19路盤の棋力を判定するならアマ四段ぐらいだが、まだ底知れない力を秘めている」と評価。
 今やプロ入段レベルまでなら十年以内で来るのではないかと噂されるが、
 開発者の楊海さんは10年以内にプロ入段どころかトッププロを倒すと豪語していた。

H19年△月◇日

 塔矢アキラ名人がNHNのテレビで「こども将棋囲碁戦」の解説を行う。
 冷静な口調で黒石が死んでしまっていることを指摘して多感な子供を泣かしてしまった。
 子供の涙に慌てる塔矢君の動画がネットに流れる。
 私も聞き手だったので動画を見た友人に揶揄われることになった。

H19年×月×日

 香川いろはちゃんが「10代から20代の若者への囲碁普及」をミッションに掲げて
 フリーペーパーの活動を事業化してAmiGo Projectを発足する。AmigoBlogがメインスポンサーだ。
 奈瀬明日美女流も発起人として名を連ねた。私ももちろん参加した。
 また私が参加している和谷君の主催する研究会の面々もスタッフとして協力してくれた。
 元桜が丘高校の女子囲碁部の他に、あかりはもちろん元葉瀬中囲碁部や元時定高校のメンバーも誘った。
 奈瀬さんや小宮先輩の院生仲間だったという飯島さんが大学卒業後に大手企業で記者として働いており幹事となった。
 
 フリーペーパー「いござんまい」も5万部を発行。
 現在は女優としても活躍する東堂シオンが表紙を飾りプレミアになる。

 またワークショップなどを開催して盛況だった。

H19年▽月△日

 五月のライオンのアニメ(第一部)が終了→6クール全72話

H19年□月×日

 東南アジアでの震災復興事業が落ち着き岸本さんが日本に一時帰国。
 桐嶋堂から奈瀬さんを中心とした桐嶋研メンバーによる打碁集『和-Ai-』が出版。
 塔矢アキラ名人による『五月のライオン囲碁入門』が英訳され海外出版。

H19年12月×日

 囲碁界のまとめ

 緒方先生は棋聖防衛、畑中先生が十段を奪取、倉田先生が本因坊を五連覇し永世称号を獲得
 畑中先生に伊角さんがタイトル初挑戦し碁聖位を奪取。伊角碁聖が誕生。
 塔矢名人に進藤君がタイトル挑戦。二人のタイトル戦初対決は塔矢君が名人防衛に成功。
 緒方先生は王座防衛、倉田先生は天元を防衛

 緒方棋聖・王座、倉田本因坊・天元、塔矢アキラ名人、畑中十段、伊角碁聖

 今年は伊角さんが碁聖になるなど5年目となる和谷研メンバーの活躍が目立った年だった。
 第2回若鯉戦では和谷研のフクこと福井君が棋戦優勝し、それぞれが本戦進出、リーグ入りを果たした。
 香川いろはちゃんが和谷研のリーグ戦の優勝は今や三大リーグ入りより難しいって言ってた。

 以前から相談されていたけど奈瀬さんが五年連続女性三冠の独占を機会に、
 女流最強を含めた女流タイトルを全て放棄し七大タイトルに注力すると発表した。

 私も女流本因坊に挑戦するなどしたが奈瀬さんからタイトルを奪うことはできなかった。

 また世界では高夏永が五年連続で国際棋戦優勝を果たし“魔王”の愛称で呼ばれるようになる
 趙石や楽平といった若い中国勢が国際棋戦で活躍を始める中で韓国勢では洪秀英も奮闘している。

 そんな中で緒方先生が塔矢行洋以来5年ぶりとなる日本人棋士の国際棋戦での優勝を果たした。 
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