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北欧の鍛治術師 〜竜人の血〜

作者:観葉植物
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第二章 戦王の使者
  戦王の使者Ⅰ

 
前書き
お断り
・作者は忘れっぽい&優柔不断なので設定が無茶苦茶になる事が多々あります

・設定や話に矛盾があれば感想で教えていただけるとありがたいです

そして唐突なキャラ設定

アイン
・主人公。強い。貧血に悩まされている。一番うまく扱えるのは両刃の片手剣だが基本的に針や槍などの近接武器や投擲武器も扱えるように訓練している。1年前にアリアの肉体を大幅に移植したため遺伝子が混じり合って少し女顔。人生の最終目標はアリア死亡の原因となった人物・組織の殺害・壊滅という物騒なものだが性格は冗談や人をからかう事が好きないたずらっ子のそれ。これはアリアを失った反動で無意識にその穴を埋める物を求めているのかもしれない。そしてその対象が最近は古城と雪菜。理由:からかうと面白いから。

暁 古城
眷獣や学生であるという設定は基本的には原作通り。ただ、ここでアインというイレギュラーが発生した事で原作とは違う成長を遂げるかもしれない。

姫柊 雪菜
こちらも基本的な設定は原作通り。しかし、古城に初めて血を吸われた時に何かの予兆を見せる。 

 
『昨日発見されたアルディギア王国の男性操縦者アインザック・スミス・フィリーリアス・カタヤさんは日本近海を浮かんでいるところを発見されたとの事です。発見当時昏睡状態に陥っており、海上保安庁のヘリコプターで救助された時は非常に危険な状態で・・・』
「あいつ見つかったんだな」
「昨日の夜も同じようなニュース流れてましたよ?見てなかったんですか?」
「昨日はシャワー浴びて寝ちまったんだよ」
「疲れが溜まってるんですか?確かに昨日は激戦でしたからね」
現在、雪菜宅。凪沙に叩き起こされた古城は手伝って欲しいことがあると言われ休日の朝から後輩の家に来ていた。その『手伝って欲しいこと』が何なのかというと、要はダンボールの片付けである。日用品を買い込んだ時、ホームセンターの従業員がその量を持って帰るのは大変だろうと気を利かせて店の裏手にあったダンボールをいくつかくれたのだ。それ以外にも洗剤などの箱や雪菜がここに引っ越して来るときに使ったダンボールが大量に余っており、それを廃棄するタイミングをこの忙しさで見失っていたのだ。そしてその量が尋常ではなく、重さはそんなに無いのだが体積が大きいせいで雪菜の体格では一度で運び出すのは無理があって古城に手伝ってもらっていたのだ。
「こっちは縛り終わったぞ」
「わかりました。じゃあ行きましょうか」
2人は部屋を出てエレベーターで一階に降り、エントランスを出て建物の側面を迂回して裏手のゴミ捨て場に向かう。家庭ゴミはともかく、資源ごみや粗大ゴミのような大きいゴミなどは裏に設置されているゴミ捨て場に捨てに行くのがこのマンションの規則だ。雑談しながら所定の場所にダンボールを捨て終えた2人がエントランスに戻ろうとしたそのとき、茂みから2つの影が躍り出た。2人の前に姿を現したのは金と銀の獅子。全体が鉄で出来ているようで、そのしなやかな体は陽光を受けて反射している。そのうちの片方が軽やかな動きで古城めがけて襲いかかってきた。
「うおっ⁉︎」
「下がって!」
第四真祖の動体視力と反射神経で後ろに転がって危なげに避けて尻餅をつく。雪菜が雪霞狼を展開して古城を守るように二匹の獣と古城の間に割って入り、威嚇する獅子に負けじと破魔の槍を突きつける。まさに金の獅子が飛びかかろうと構えたとき、急に金銀両方の獅子が苦しみ始めた。その体には左右どちらかの前脚から蛇が巻き付くように炎の紋様が頭にも胴体にも浮かび上がり、まるで蛇のように獅子の体を締め付けると、獅子は苦しむような声をあげてついに倒れ、実態を失って式符に戻った。雪菜が警戒しながら近づくとそこには獅子の姿を取っていた式神の式符が二枚と黒地に金の装飾が入ったいかにも高級そうな封筒が一通に全長十センチ前後の白いトカゲが二匹。そのうち一匹が口をあんぐりと広げてもう片方のトカゲを飲み込んだかと思うと、飲み込まれた方のトカゲは跡形もなく消えた。
「トカゲの式神?」
「それよりもあの鉄製ライオンは何なんだ?」
「あれは本来、伝令用の式神のはずです。離れた土地にいる人に何かを届ける時とかに使うもので、あんなに攻撃的なものではなかったはずです」
2人が困惑していると古城の足元にトカゲの式神が封筒をくわえてやって来た。古城は一瞬迷ってそれを式神ごと拾い上げると式神を手のひらに乗せ、空いている片手で器用に封筒の中身を取り出してその内容を読んだ。
「招待状かこれ?」
「見せてもらえますか?」
雪菜がそれを読むと確かに招待状のような文面が日本語で書いてあった。
「『オシアナス・グレイヴ』という場所に来いって話ですけど・・・」
「聞いたことすらねぇな」
洋上の墓場(オシアナス・グレイヴ)。戦王領域の貴族、アルデアル公ディミトリエ・ヴァトラーの船だ。で、今は絃神島の港に停泊してる』
突然、古城の手のトカゲが喋り出した。
「おぉ⁉︎」
『よぉ、お前ら久しぶりだな』
「久しぶりって・・・もしかしてアインさん?」
『おうよ。絃神島に残しといた式神が役にたったみたいだな』
「お前こそ大丈夫なのか?なんか昏睡状態になってたとかニュースで言ってたんだが」
『もう回復した。ただ、視力が落ちてなぁ。普段の生活も眼鏡かコンタクトが必要になりそうだ』
「アインさん、一つお聞きしたいことがあります。あの時出現した竜はアインさんですか?」
『多分そう』
「多分とは?」
『俺も正確には分からん。だがそれっぽい記憶はあるし、そうでもないとあんなとこに浮いてた状況も説明がつかん。そんでまあ・・・何よりの証拠ってつーのがあるんだが・・・』
「アイン?」
『お前らだから言うが決して口外してくれるなよ?俺はな、暁。竜人(ドラゴニュート)、単純に言うと人と竜の混血なんだよ』
「はぁ⁉︎」
「竜人・・・だったんですか。獣人か何かの類だとは思っていたんですが・・・まさか竜人だとは思いませんでした」
『これ一応アルディギアの最高機密扱いなんだけどな』
「・・・情報漏洩して大丈夫なのか」
『ほら、バレなきゃ犯罪じゃないって言うっしょ?お前らを信じてるぜ?』
「まあ・・・マスコミにでも言ったら俺の正体までバレそうだしな」
『すまん、人が来た。切るぞ』
アインの声を最後にトカゲの式神は古城の手から飛び降りて茂みに消えていった。
「そういえば姫柊はいつから竜人だって気づいてたんだ?」
「竜人だと知ったのは今ですけど、ただの人間じゃないってことは結構前から気づいてました」
そんなことを話しながら古城と雪菜は部屋への帰路に着いた。
「世の中不思議なこともあるもんだなぁ」
「世界最凶の怪異が言っても説得力皆無ですね」
途中、こんな会話が為されたという。





「しかし、ヴァトラーの奴も酔狂なことするねぇ・・・。古城をパーティーに招待か。ついこないだまで一般人だった奴を政界の重要人物のたむろする空間に放り込むかね、普通」
『絃神島で開くパーティーに絃神島の主人を招待しないなんてそれこそ僕のおじいさんに怒られちゃうヨ』
「いたのか、変態」
『開口一番人を傷つけるのが趣味なのかナ、君は』
「極一部の奴はな」
『で、僕はその極一部に該当する、と』
東京の大病院の一室に入院しているのはアイン。そこにふらりと飛び込んできたのは伝令用の鳩の式神だった。その中身はアルデアル公としてアルディギアを訪れた際にアインを一方的に気に入ったディミトリエ・ヴァトラーだった。
「少なくとも第四真祖の血が流れてるからって男に手を出すような輩は御免だね」
『あらら、酷評を頂いちゃったネ』
「暁はあれでも女を無自覚に惹きつける素質があるんだ。将来が面白そうだから自覚があるなら少しは控えてくれ」
『おやおや、君も僕とさして変わらないじゃないか。それとも、君の昔の女の事でも思い出したのかナ?』
ククク、と不気味な笑いとともに洋上の墓場の主人はアインを挑発する。
「ま、そんなとこだ。あいつらのイチャつく姿を間近で見せられると嫌でも思い出すね」
『それで、一人感傷に浸ってたのかい?』
「言い方をもう少し考えろ。・・・もう、俺みたいに大切な誰かを失って狂う奴は見たくねぇ」
『ふうん。優しいんだネ?もしかして君も僕と一緒で・・・』
「お前と一緒にするな、変態」
『ま、いいヨ。僕も故意に手出しはしないでおこう。もとより、そのつもりだしネ。』
「故意に、か」
『だから「偶然」起きた不幸な事故なんかは許容してくれないと困るヨ?』
「ハッ、白々しい。暁にはうちの姫様も興味を示してる。間違っても傷をつけるような真似はしてくれるなよ」
『それはもちろん。あ、そうそう。パーティーのウェイター名簿に君の名前載せてるから。明後日に遅れないようにね?』
「2、3回海の藻屑になりやがれこのクソ野郎‼︎」
既に元気な怪我人の怨嗟の叫びが病院中に響き渡った。


数日後


IS学園1-1教室は、ホームルーム前にして転校生の話題で持ちきりだった。
「席につけ。ホームルームを始める」
ガラッとドアを開けて入ってきたのは担任の織斑千冬。世界最強と謳われる女傑だった。
「さて、既に耳にしている者も多いと思うが、今日は予定より少しばかり遅れてはいるが転校生が来る。入れ」
入ってきたのはもちろんアイン。ヴァトラーからの連絡の後すぐに退院してフレームの細いメガネを作り、それを日常的にかけるようにしている。そして、こんな状況に陥った自分を改めて恨みながら外用の笑顔を振りまいていた。
「はじめまして、アルディギアから来ました、アインザック・スミス・フィリーリアス・カタヤです。長いので呼ぶときはアインだとかフィリーリアスで構いません」
超難関高校の受験勉強で青春の一部が潰された少女たちにアインというクラスと心に潤いを与える存在は大きかった。その笑顔に大半の者が心を奪われ、中には頰を赤く染めて鼻息を荒くするアブナイ人たちまで出始めた。一瞬でクラス中が黄色い声援で満たされ、人よりも耳がいいアインは内心早くこの空間から抜け出したいと思っていた。
「静かにしろ。まだホームルームは終わっていないぞ。フィリーリアス、お前の席はあの隅の席だ」
「分かりました」
「うむ。ではホームルームを終了する。1限目に遅れるなよ」
千冬はそれだけ言って教室を出た。途端に厳正な空気が崩れてアインの元にクラス中、果ては他のクラスからも人が集まった。生徒が一人一人自己紹介をして、アインと話した生徒たちはみんな揃って俯きがちになって顔を赤くするか酷い者では卒倒して近くにいる友人に支えられるなどしていた。アインはそれに律儀に一つずつ応えたり首肯するなどして反応を返していった。やがてチャイムが鳴り始め、生徒たちは急いで席に着いたり準備を始めたりする。教科担任が来るまでに少し時間があったので誰もお咎めを受けずに済んだ。こうして、アインの転校初日の学校生活は何事もなく平和に終わった。与えられた寮の部屋のベッドに肢体を投げ出しておもむろにため息を吐いた。
「疲れた・・・。二度と関わりたくねぇ・・・」
無論、そんな夢が叶うはずもなくこの生活が3年間続くことを考えて気が滅入るアインだった。それにしてもこのベッドは上質だが枕が変わると眠れない(たち)のアインは寝袋で眠ろうと考えた。
「シャワーでも浴びるか」
ベッドから起き上がり荷物を入れているバッグから着替えや歯ブラシなどの日用品をタンスや洗面台に置いてから脱衣所で服を脱いで鏡に映った自分の体を見た。鎖の形をした紋様が身体中に走っている。これは絃神島での竜化を受けて自身で掛けた封印の一種だった。竜と竜人の体中に疾る魔力回路に沿って敷いた封印で、四肢のブレスレットとアンクレットを触媒代わりにしている。アインは少しだけ封印に干渉してみようかと考え、すぐにその考えを棄てた。以前、効果が出ている事を確認するためにアルディギアで試しに力を入れてみたところ全身が熱した鎖で縛り付けられるような感覚に襲われたのを思い出したのだ。あんなのは二度と御免被ると思いつつ熱いシャワーを浴び、すぐに上がって上裸のまま部屋で瞑想をする。10分程経ったかという頃、ドアがノックされ、アインが背を向けた状態で断りもなく開かれた。
「何か、御用でしょうか織斑教論」
アインは背を向けたまま顔だけをドアの方に向けて言った。
「教師の義務として抜き打ちの生活態度のチェックと言ったところだ。それはそうとフィリーリアス。IS学園はタトゥーは禁止のはずだが?」
「俺の出身の民族、結構奥まった場所にあって結構独自の文化築いてるんで、そんな感じで処理してもらえませんかね。確か校則に、その類のものに限り許可するみたいなこと書かれてましたよね」
「まあ・・・よしとしよう。それと、何か生活上の要望や不自由は無いか?これを訊きに来たのだが」
「不自由ってんならこのベッドと机に椅子、これ全部撤去できますか?」
「可能だが・・・邪魔だったか?」
「平民出身なんで、こんな上質な家具に囲まれてたら落ち着けやしないんですよ。それに枕が変わると眠れない質なんで」
「いいだろう。おそらく時間が掛かるだろうから業者に作業させるのは休日になるぞ」
「構いません。少し、買い物に行く予定でしたから」
「では手配しておこう。夜更かしはするなよ」
そう言って千冬はドアを閉めた。





翌日の夜、絃神島の港に停泊しているオシアナス・グレイヴの船室にて。
「全くお前という奴は・・・!」ドスッ
「アハハ、もう決まっちゃった事はどうしようもないしここはボクらの友情に免じて、ネ?」ドスッ
「黙れ爬虫類と蚊が混じったような生物め」ドスッ
こんなやりとりの合間合間にアインが決まってお手製の切れ味バツグンのフルーツナイフをヴァトラーの頭に乗っているリンゴを狙って投擲するというループが完成していた。もっともアインからしてみれば最初からリンゴではなくヴァトラーの額を狙っているのだが。見方によってはさながら生々しい黒ひげ危機一髪に見えないこともない。
「ねえ、君、ちゃんとリンゴを狙ってるんだよネ?」ドスッ
「もちろんさ。俺がリンゴ以外の物を狙うはずないだろう?」ドスッ
「じゃあなんでボクの頭はこんなにナイフが刺さってるんだろうネ?」ドスッ
「そりゃあ上の小さいリンゴより下の大きい真っ赤なリンゴ(お前の頭)の方が狙いやすいからな」ドスッ
そしてヴァトラーの頭が真っ赤になってそろそろアインもナイフを投げる場所が無くなり始めた頃、2人のいる部屋のドアがノックされ、ヴァトラーが入室を許可すると入って来たのは1人の給仕だった。給仕は古城と雪菜がやって来たことを告げるとそそくさと退室した。
「もう古城が来たみたいだケド?」
「ちっ、早いな、あのコンビ。俺はもう少しダーツを愉しむつもりだったのに」
「流血沙汰な時点で既にダーツじゃないと思うけどナア」
「ほら、甲板まで行くぞ。お前の護衛兼監視が怒ってるかもしれないしな」
アインはヴァトラーに近づくとその頭に刺さっている十数本近くのナイフを引き抜いて拡張領域にしまう。みるみるうちにヴァトラーの頭からは血が消え、傷もすっかり無くなった。
「君の魔力阻害のルーンは精巧に出来ているからあまり好きじゃないんだよネェ」
「安心しろ、スプーンとかフォークやら武器にもだいたい標準で付いてるぞ」
「本当に君は嫌な奴だナァ」
皮肉に皮肉を返すような会話をしながら甲板に上がった2人が最初に見たものはナイフとフォークの刺さった甲板で雪菜に抱きつく長身のチャイナドレスの少女と当の雪菜。それに1人、状況が飲み込めず取り残された古城だった。 
 

 
後書き
聖者の右腕編を半分程に纏めました 
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