和-Ai-の碁 チート人工知能がネット碁で無双する
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第一部 桐嶋和ENDルート
第19話 弟子
うら若き乙女が独り暮らしの男の家にホイホイついてきて心配になる。
夢中で和-Ai-との対局を続ける女の子の背中を眺めながら、そんな埒もないことを考える。
アキラくんにも見えなかった和-Ai-に気づいた女の子。
圧倒的な強者に対して嬉々として挑む姿を見て強くなるために囲碁AIとの対局を続けた彼女の姿を思い出す。
プロ棋士の彼女と、プロ棋士を目指す院生の女の子と、囲碁のプロになるなんて考えたこともない凡人の圧倒的なまでの差。
囲碁に向き合う姿勢、囲碁を愛する気持ち。
改めて自分がヒカルの碁の世界にいる場違いな存在であることに気づかされる。
「ホントに楽しそうに打ってるなぁ……」
和-Ai-と碁を通じた対話を続ける姿を羨ましく思いながら今後のことを考える。
――そういえば彼女が言ってたっけ。
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「そういえば和は弟子とか取ったりしないの?」
「まあ『弟子入りさせてください!』って飛び込みで頼まれことは一度あるけど……」
「それは断ったの?」
「そうね。その時は才能のある子に指導できるほど自分の碁に自信が無かったし」
「才能ある子だったんだ。その弟子入りをお願いした子はどうなったのは?」
「もうプロになってるわよ。ほら最年少女流名人と最年少女流棋聖になった」
「え!? 彼女って最年少プロ棋士だよね?お祖父ちゃんが名誉名人の」
「そうそう。あの子が10歳の時に押しかけてきたの」
「それを断ったんだ。……今後も取らないの?」
「う~ん。とりあえず七大タイトルが一つでも取れたら考えるかな?」
「その台詞、あらゆる引き伸ばしの常套句にしてない?」
「あはは。ごめん。ごめん。でも後少しで手が届きそうだから」
「まだ弟子は分からないけど、今後は定期的な研究会は主催しようかなって思ってるの」
「へー。どういう風の吹き回し?」
「ほら、和-Ai-がティザーサイトで発表されたでしょ?
それで私と一緒に和-Ai-先生を使った研究がしたいって同期の女流棋士とかに頼まれてて……」
「今や和ってコンピュータ囲碁の申し子みたいな位置づけになってるもんね」
「そうそう。まあ私は和-Ai-先生の弟子が増えるのは嬉しいけどね」
「そうなんだ。ちょっと意外かも」
「そう?だって私は和-Ai-先生のお陰で強くなれたし、先生の碁が広がっていくのは嬉しいよ。女流棋界の底上げもしたいしね」
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気が付けば日が暮れていた。頃合いを見て対局を終えた女の子に声をかける。
「もう遅いから。終わりにしようか」
「あ、ごめんなさい。こんなに遅くまで……ホントに楽しくて」
「いいよ。いいよ。僕も声かけるが遅かったし。これから帰宅するって親御さんに連絡したら?
もう遅いし女の子一人じゃ心配だから駅まで送るよ」
「……えっと。母には友達と一緒に外食して帰るって連絡します」
「えっ?」
「この強すぎる囲碁のゲームのこと教えて貰えませんか?」
「……そうだね。とても信じてもらえるような話かは分からないけど……まずは互いに自己紹介からしようか」
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