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ロザリオとバンパイア〜Another story〜

作者:じーくw
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第64話 誕生日を思い出して!




 そろそろこの学園に入学して2ヶ月になります。

 大分この学園にも慣れてきたな、とカイトは考えながら部活へ向かう。部室ではもうつくねは来ている様だった。声を掛けたと言うのにつくねは全く気付いていなかった。……何やらそわそわしている。

 妖怪の学校だし、何か怖い事でもあったのか? と思ったんだけど……、それは全く違うと言う事が直ぐに判った。

 何故ならつくねは、今度は鼻血を出しながら・・・ チューッと口を尖がらせていたんだ。

 流石にそんな顔見せられたらやっぱりこう思う事だろう。


「キモイわ!!!!」
「お前1人で何しとんねん!?」


 スパーーーン!! と乾いた音が響く。示し合わせた様に、カイトとギン先輩でのダブルツッコミがつくねの頭で炸裂したからだ。

「いったーーっっ!? な、何するんだよ! カイト!! それにギン先輩まで!」

 それなりの威力だったからか、つくねは頭を抑えながら2人を見ていた。

「部活の時間やで!」
「たくましい想像力してんなー。つくね。寝てるみたいだったから、起こしてやったんだって」

 ギン先輩はそのまま部室の前まで行き、カイトは呆けているつくねに、もう一度ツッコミを入れた。

「いっ…… いや…… その………」

 つくねが更に赤くなるのには理由がある。
 部活の時間だから、続々と皆入ってきたからだ。……勿論、その中にはモカの姿があった。つくねがここまで顔を赤くさせて悶えるのはモカの話題しかない。だから、モカの顔を見て更に赤くさせた様だ。つまり、物凄く純情だと言う事。

 そして ギン先輩はギン先輩で、全く変わらないし ブレない。

「フッ モカさんは今日もべっぴんやなーー 愛しとるでほんまーー! つき合うてくれへんか モカさん! 」

 サラッと告白していた。

「(う、うわーーーー 告白してる!!)」
「(あんな事があったっていうのに、ほんと 大したもんだな、ギン先輩って。いろんな意味で神経図太い……)」

 尊敬さえ覚える姿勢。それに ギン先輩 擬態を完全に解いて…… いや夢中のあまり解けてしまった、というのが正しいだろう。狼と言うよりは犬の様に尻尾を振りながらモカを追いかけてるしていた。勿論モカは逃げてる。

 ヘルプの声が上がったら 助けようか、とかいろいろとぼーっと考えていた時。

「やっほーーー! 2人とも!! 今日も部活だねー!! だーい好きだよーー!!」

 はぐーーーっと、つくねとカイト、2人に抱きついてきた者がいた。
 当然ながら 誰とは言わない。……こんな事をするのはくるむくらいだから。
 いや、他にも似た様な者はいるけれど、ここまでの強烈なスキンシップをするのは今の所くるむしかいないから。

「わぁ!! くるむちゃんっ」
「うわっ! びっくりした!! くるむ、少しは手加減してくれ…… ほんと心臓に悪い」

 幾ら判っているとは言え、くるむの豊満な胸に埋められるのは 男としての理性との戦いにも発展するから大変なんだ。

 そして、それだけですまないのがこの妖怪の学園の部活動。さらなる追撃、波状攻撃とも言えるのが来た。一斉に掃除用具やら机が飛んできたのだ。

 掃除道具ははくるむを、殆ど凶器…… いや鈍器と言っていい机は、ギン先輩を攻撃していた。


“ぺしっ!”
「きゃっ!」

“ドコンッ!!”
「ぎゃっ!!?」


 その音で判ると思うが、くるむは 塵取りで頭を叩かれた音。
 ギン先輩に至っては、掃除用具入れで思いっきりどつかれた音。……ギン先輩は頭から盛大に血を拭いている。死にそう?

「つくねさん カイトさん そしてモカさんに手を出す人は許しません! 私が魔法で撃退するです~~~! だって私! 3人が大好きですから~!」

 今攻撃を放ったのはゆかりちゃん。持ち前の魔法を使って妨害をしたのだ。

「いや ほんとすっごいな。多感な時期っても、なーんで皆あんなにはっきり好き! っとか言えるもんなのかね?」
「だよね………」
「まあでも、つくねは見習ったほうがいいんじゃないか?」
「うっ………」


 ずっと気にしていた事を言われた様で つくねは 目に見えて落ち込んでいた。

「あらら……、地雷だったのか?」

「そんな事より……、誰? 魔女?」

 つくねが落ち込んでる丁度その時頭に血を流しながらギンはモカに聞いていた。

「新入部員のゆかりちゃん。噂の天才少女だよ……」

 ちょっと引きながらモカは教えていた。

 つまり 今日も部活は絶好調と言う事だ。





「そういえばさ、つくねもう少しで誕生日だったんじゃなかったっけ?」

 そして 帰り際。モカがまだいない時にカイトはつくねに聞いてみた。

「う、 うん! ありがと。覚えててくれて。それでオレ……、その時モカさんに………」

 顔を赤くさせながら何やら決意を固めていた。

「ほほーう……うんうん。成長したじゃんつくね! まあガンバレ応援はしてるぞ! ……でも簡単にはいかないと思うけどな。 なんたって、ここは陽海学園 新聞部だし。一筋縄じゃいかないだろ」
「だよね……」

 つくねもよく判ってる様で、肩を落とした。でも失敗した訳じゃないし 落ち込むのはまだ早いだろう。

「あ…… そうだ!」

 つくねはカイトに聞きたい事があった為、改めてカイトの方を見た。

「ん? どうした?」

 カイトはつくねが何やら思いつめてそうだったのでキョトンとしながら聞く。

「あっ、あのさ! カイトはモカさんの事どうおm「おーーい! 2人ともーっ!」ッ!」

 丁度乱入してきたのはモカだった。絶妙なタイミングで。

「ねー つくね! カイト! ちょっと話があるんだけど!」

 何やら美術の本を見せながらモカが来た。

「うん? どうしたモカ? あ、悪い。今つくねが何か用があるみたいでな。それで つくね。聞きたい事って?」
「いッ いやっ何でもないよ! カイト! それよりモカさんどうしたの?」

 つくねは話題をそらしモカの方を向いた。

「んん??? まあいっか」

 カイトも深く考えず、カイトもつくね同様にモカの方を見た。

「あのね2人とも、私美術の先生から絵のモデルを頼まれちゃって、これから1週間くらい一緒に帰れないんだ」
「モデルかぁ。 まあ モカはメチャ美人だし選ばれてもあんまり驚かないけど。頑張れよ? モカ」
「ええっ! び、美人だなんて…… そっ そんな事ないよぅ……」

 モカはカイトに美人だって言われて 凄く顔を赤くさせていた。それを見て微笑ましそうに笑うカイト。そしてつくねは、と言うと。

「ええええ!!」

 ただただ驚いていた。大声をあげて。

「うおっ!? いきなり大声なんか出すなよ! びっくりするだろ! ってか つくね そんなに驚くか?」
「い、いや だって・・・(じゃあオレの6日後の誕生日はどうなっちゃうんだーーーー!)」
「「??」」

 つくねの葛藤はこの場の誰にも伝わる事はなかった。

「あっ 心配しないでよ! 部活は頑張るから!」

 モカは つくねにそう言った。恐らくは部活との両立は大変じゃないか? と思ったんだと推察したのだろう。

「いやっ!! そーじゃなくって…… ほら、モ、モカさん? もうすぐさ、何の日か知ってる?」

 つくねは焦りながらモカに聞いた。

「(なーるほど。そゆことね。……そりゃ慌てたくもなるか)」

 カイトは何故つくねが動揺していたのかすぐに分かった。
 つい先ほどまで話していた事だったから。

 モカはと言うと。

「え? 何の日? …………?」

 ただただつくねに微笑を向けているだけだった。

「(うーん……、あのモカの表情、何かありそうだな。 どうなんだろ……? まあいっか。 モカはモカで何か サプライズ的な事でも考えてるのかもしれないし。 茶化さない茶化さない! 口出しは野暮だ)」

 カイトはそう結論付けていたんだが、つくねはそうはいかない。忘れられた! と思った様で涙を流していた。 

「(まあ ガンバレよ!つくね。ちゃんと オレも祝ってやるからさ。もちろんモカの後にでも)」

 肩をたたきながら モカに聞えないように話す。

「(あ・・・ うん・・・ 何とかガンバる)」

 つくねは なんとも歯切れが悪い様子だった。
 それには理由がある。つくねの心配事? は自分自身の誕生日の事以外にもあったのだから。

「(でも…… さっきは聞きそびれたけど、 カイトってモカさんの事、何とも思ってないのかな……? オレのこと応援してくれてるのは嬉しいけど、 何か…… 複雑……)」

 もしも カイトがモカの事を好きと思っていたら、容姿やら学力やら能力やら・………etc

 つまり、つくねは カイトには絶対に勝てないと思ってる。三角関係になるのは正直嫌だけれど、つくねは負けたくなかった。それ程までにモカの事が好きだから。

 でも、120パー負けてしまう事は容易に想像出来てしまう。だからこその つくねの落ち込み具合だった。

 そして、つくねは これまでの事を色々と考えてみた。

 カイトのこれまでのモカとのやり取りを見てても、友達として好きだと言う事は判る。そうじゃなければ、あんな危険を犯してまで 助けたりしないって思う。でも異性として、特別に好き、ッと言う感じには見えないかった。

「(モカさんの事が好き。女の子としてっていう感じはしないけど……。なんだろう友達ってだけじゃなくて、何かこう……暖かい感じ? がするんだ。 それは恋愛感情じゃなくて……、ああもう! わかんないけど 何かそんな感じがするんだよなー カイトって・・・)」

 気付けばつくねはカイトの事を見つめていた。ガン見している。結構接近して。

「あのな? つくね。……オレ、男にしがみつかれて喜ぶ趣味は無いって前にも言ったと思うが、見つめられて喜ぶ趣味も無いからな……」
「わああ!ゴメンゴメン・・・ ちょっと考え事をしてて・・・」

 カイトを見ていた自分に気がついたのか 慌てて謝る。

「あははは! 2人とも仲がいいね♪ やっぱりさっ!」

 そんな2人を見てモカが笑うのだった。

「確かに仲がいいのは オレも賛成。でも 過剰すぎるのは如何かと……。 オレはそっちの気は無いんだぞ? つくね」
「そっ! そんなのオレだってないから! 誤解だってモカさん!! 安心してよ!!」

 慌ててつくねは拒否している。でもカイトとモカは笑っている。
 つまり、完全につくねはからかわれていると言う事だ。

「ははは♪ あ、そーだ! ねーつくね。血…… 吸わせて??」

 いきなり話が変わった。

「えええ!そんな会話の流れだったっけ??」

 つくねが驚きながら言っていた。

「はい! どーぞモカ。つくねので良かったら ほれ どーぞ!」

 カイトは 羽交い絞めにしながら笑顔でモカに差し出す。

「えええ! カイトちょっとーーー!!」
「(最近オレのも吸われそうで困ってるんだ! それにつくねは確か前に、オレは手助けするって言ったけど、拒否したよな~? 男は一度言ったら取り消さないよなー??)」

 妙な黒い笑顔でカイトは つくねに呟いた。羽交い絞めにされてるからつくねにはカイトの表情は見えない。でも それは感じていた様だ。

「う…… そっそれは……(確かに・・・言ったけど・・・ あれは 負けたくないから……)」
「すきあり♪ いただきます!」

 かぷっ ちゅうううううぅぅ~♪

「ぎゃああああ~」




 今日も平和な一日。



 そんな3人を遠くで見ている者がいた。

 何か言葉を発するわけでも無く、唯、薄く笑みを零し、学園の中へと消えていった。


 
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