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拒食症

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第四章

 水分は摂取していたのでそちらは抵抗なく飲めたので幸いだった、そういったもので栄養を摂取していってだった。
 粥も口にする様になっていき徐々に固形物も食べられる様に訓練していった。そうして何とか拒食症を治したが。
 彼の体重は戻ったといっても七十キロで止まった、それ以上は増えなくなっていた。それで翔平にこう言ったのだった。
「これ以上太らない様にってストッパーがかかるんだ」
「心でか」
「毎日体重をチェックしていてね」
「それ以上は太りたくないか」
「そう思う様になって」
 そしてというのだ、見れば晃司の顔は夏休み明けの時よりは幾分肉が付いてきていた。一年の三学期の終わり頃である今は。
「それでね」
「七十キロを超えそうになると」
「もう食べる量を減らす様になったよ」
「食わない訳じゃないよな」
「食べてはいるよ」 
 それはしっかりとしているというのだ。
「だから安心してね」
「みたいだな、確かに」
 翔平が見てもだった。
「だといいがな」
「うん、とにかくね」
「七十キロ以上は体重が増えない様になったか」
「無意識のうちにね」
「もう太りたくない気持ちは変わらないか」
「それはね」
「拒食症はやっと治ったのにな」
 翔平は自分の横にいる晃司を見て言った、共に登校している彼をだ。
「そこは変わらないか」
「もう二度とあんな思いはしたくないから」
 失恋、そして周囲から言われて辛く苦しい気持ちに陥りたくないというのだ。
「だからね」
「拒食症は治ってもなんだな」
「もうそうした思いはしたくないっていうのはね」
「変わらないんだな」
「そちらはね」
 どうしてもとだ、晃司は翔平にやや俯いて話した。もうその顔は太ってはいないがそれでもだった。表情には過去があった。
 それでその過去を見てだ、翔平に話した。
「トレーニングは続けるからね」
「食ってだな」
「それはいいよね」
「続けろ、あと今度はな」
「今度は?」
「御前の外見なんて気にしないいい娘を見付けろよ」
「そっちも難しいね」
 もう二度とあんな思いをしたくないからだ、彼は失恋恐怖症にもなっていた。だから翔平にも正直に言ったのだ。
「当分誰にも告白しないよ」
「告白されたらどうするんだ?」
「僕にそんなことする娘なんて絶対にいないよ」
 寂しく笑っての言葉だった、晃司の心の傷は完全には癒えていなかった。だがそれでも今は翔平と共に前に歩いていた。翔平はその彼を気遣って隣にいた、苦い顔で苦しんだ親友を。自分に出来ることは僅かだとは思いながらも。


拒食症   完


                          2017・3・17 
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