とある3年4組の卑怯者
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16 負傷
前書き
授業中に笹山にちょっかいを出す堀内を止めて因縁をつけられた藤木。堀内に蹴られそうになった藤木を笹山が盾になり、代わりに蹴られてしまった!!
それにしても堀内は「うるせえ!!」って言い過ぎですね・・・。
堀内の蹴りが笹山の顔面に直撃した。笹山がその場で倒れた。
「さ、笹山さん!!」
「おい、テメエ、笹山を盾にするなんて卑怯もいいとこだな、おい!!」
「や、やめて・・・」
笹山は力なく言った。が、その言葉は堀内には聞こえない。
「笹山さん!!」
リリィと城ヶ崎が駆け付けた。笹山は蹴られたダメージで鼻血を出し、口内からも血が出ていた。歯が折れたのか、口から白い欠片を出していた。
「オラァ、笹山を盾にした罰だ、ぶっ飛ばしてやる!!」
「堀内っ!!アンタが悪いんでしょっ!!」
「うるせえ!!」
多くの生徒が野次馬として集まっていた。大野と杉山も駆け付けた。
「笹山、血が出てるぜ!!」
大野が驚いた。
「おい、保健係、笹山を保健室に連れてってくれ!!」
杉山が保健係を呼び、笹山を保健室に連れて行かせた。堀内が藤木を殴りつけようとする。が、その手を大野が止めた。
「やめろ、堀内!!」
「うるせえ、このザコが笹山を盾にしたのがワリィんだ!!」
「藤木、そうなのか!?」
「あの、その・・・」
藤木は自分が悪者になってしまう恐ろしさを感じた。
「藤木君が悪いんじゃないわ!」
リリィが言った。
「笹山さんは堀内君を止めようと、自分から藤木君を庇ったの。城ヶ崎さんも見てたわよね!?」
「え、ええ、そうよっ!」
「うるせえ!!」
「堀内、意地汚えぞ!!」
大野が非難した。その時、3年の先生たちが現れた。戸川先生が聞く。
「皆さん、どうしたんですが?」
「笹山さんが堀内君に蹴られたんです」
リリィが説明した。
「それで笹山さんはどうしたんですか?」
「保健係に保健室に連れていかせました」
杉山が返答した。
「わかりました。堀内君、今すぐこっちに来なさい。話があります」
「俺は悪くねえ!藤木がワリいんだ!!」
「あんたが授業の邪魔したのが悪いんでしょっ!」
「うるせえ!!」
「各クラス、次は自習に変更します。先生方は少し話をします」
各クラスの先生と堀内は廊下に残り、他の生徒たちは各々のクラスの教室へと戻った。
藤木は罪悪感を感じていた。
(笹山さん・・・ごめん、代わりにケガさせて・・・)
「藤木君、元気出して。藤木君は悪くないわよ」
「うん、でも本当は僕がやられるべきだったんだ・・・」
「そんな、やられていい人なんていないわよ」
リリィは罪を感じる藤木をどう慰めるべきか分からなかった。三人の前に永沢が立っていた。
「ふん、笹山に代わりにやられてもらうなんて、卑怯にも程があるよ、藤木君」
「永沢っ!!なによその言い方はっ!!藤木が悪いように見えるじゃないっ!!」
城ヶ崎は永沢の遠慮極まりない態度に怒った。
「じゃあ、なぜ笹山は藤木君を庇ったんだい?」
「それは、藤木が気の毒で守りたかったからでしょっ!?」
「へえ。じゃあ藤木君、君は笹山をどうして守ったんだい?君にはリリィという好きな人がいるじゃないか?」
「それは、授業のとき、笹山さんが堀内君に邪魔されて困っていたからさ・・・」
「永沢、あんた何が言いたいのっ!?誰かが困っていたら助けようとするのは当たり前じゃないっ!!」
城ヶ崎が喰ってかかった。
「いいや、僕は藤木君にけじめをつけてもらいたかったのさ・・・」
「はあっ!?」
「まあ、藤木君が一番知っていることだよ・・・」
永沢はそう言って席に着いた。
「藤木君、気にすることないわよ。そうだ、笹山さんの様子見に保健室に行こうよ」
その時、丸尾が現れた。
「いけません。きちっと自習しなさい!」
「わ、わかったよ・・・」
藤木は笹山が心配でならなかった。先程の永沢の言葉が頭によぎる。
《ふん、笹山に代わりにやられてもらうなんて、卑怯にも程があるよ、藤木君》
(確かに、永沢君の言う事は最もだ・・・。笹山さんは僕の犠牲になったんだ・・・。謝んないとさらに卑怯者になるだけだよな・・・。そんなの僕は嫌だ・・・!!)
そして、給食の時間の直前に笹山は戻ってきた。笹山は鼻血が出た鼻孔をティッシュで詰め、蹴られた口の部分が赤くなっていた。藤木は真っ先に笹山の所へ向かった。
「さ、笹山さん!」
「ふ、じ、き、君・・・」
笹山は痛みでうまく言葉が出せないでいた。
「本当にごめん。僕の代わりにこんなケガさせるなんて本当に僕は卑怯で最低な奴だ・・・、でもこれじゃあ、謝っても許せるはずないよね・・・」
「そん、な・・・藤木、君は、悪く、ない、よ・・・」
笹山は泣きながら謝る藤木を宥めた。リリィと城ヶ崎も笹山の所へ歩み寄った。
「笹山さん、大丈夫?」
城ヶ崎が聞いた。
「まだ、口の、中が少し、痛いけど、だい、じょうぶよ・・・」
「そう、ならよかったわ。でも痛みがひくまで無理して喋らないほうがいいわね」
リリィも心配して言った。
「うん・・・」
給食の時間、笹山は口内の痛みで食事の進みが遅く、食べるのに苦労しているようだった。リリィと藤木は笹山の様子がどうしても気になった。
「笹山さん辛そうね」
「うん・・・」
「放課後笹山さんの家に行きましょうよ」
「うん、でも僕でいいのかな?」
「もちろんよ。藤木君も笹山さんが心配でしょ?だからあの時笹山さんを助けたんじゃないの?」
「う、うん・・・」
藤木はリリィと共に笹山の家に行くことにした。
(そうだよな。僕は確かにリリィも好きだけど、笹山さんも好きなんだよな。だからこそ笹山さんから堀内を庇ったんだ・・・)
藤木はそう思い出した。藤木は見舞いに行く事を決意した。
後書き
次回:「恋人」
藤木はリリィ、城ヶ崎と共に笹山の家へ見舞いに行く。永沢の言葉を気にし続けていた藤木は笹山にある事を伝えようと決意を固める・・・。
一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!!
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