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真田十勇士

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巻ノ百一 錫杖の冴えその二

「御主もな」
「だといいのですが」
「そのままいけ、御主は花和尚じゃ」
「そのうえで、ですか」
「真田殿と共にありな」
「常に共に戦い」
「共に生きて共に死ぬのじゃ」
「ではそれこそが」
「わしがそなたに授ける真の免許皆伝じゃ」
 それになるというのだ。
「そしてもっと言えばな」
「我等全員へのですな」
 幸村が言ってきた、共に駆けつつ。
「願いですか」
「免許皆伝を授けるのは清海殿であるが」
 それでもというのだ。
「貴殿等十一人に望む」
「共にですか」
「最後までそうしてもらいたい」
「左様ですか」
「御主達なら出来るからな」
 だからこそというのだ。
「そうしてもらいたい」
「では」
「そうしてくれるか」
「これまで常に思ってきたことでござる」
 それ故にとだ、幸村は清海に答えた。
「ですから」
「ではな」
「はい、そして後藤殿も」
「もっと早く会いたかったわ」
 後藤は笑いこうも言った。
「貴殿達とな」
「そう言われますか」
「そして義兄弟の契りを結び友にもなりたかった」
「では今から」
「ははは、そうもいかぬであろう」
 後藤は笑って幸村の今の申し出を断った。
「それはな」
「それは何故でしょうか」
「わしはそこに入るに遅かった」
 だからだというのだ。
「だからじゃ」
「それで、ですか」
「御主達の間には決して入れぬ」
 絶対に、という言葉だった。
「だからじゃ」
「それで、ですか」
「わしは入らぬ」
 こう言うのだった。
「もっと言えば入れぬ」
「そう言われますか」
「御主達は十一人じゃ」 
 このことは変わらないというのだ。
「だからじゃ」
「後藤殿は入られぬと」
「その中には誰も入られぬ」
 十一人のその絆の中にはというのだ。
「だからじゃ」
「そう言われますか」
「これだけ強い絆はない」
 幸村達の様なものはというのだ。
「決してな」
「ううむ、ですが我等は」
「そう言わぬか」
「決して」
「そうか、しかしじゃ」
「我等の中にはですか」
「入らぬ」
 もっと言えば入られないというのだ。
「絶対にな」
「では後藤殿は」
「御主達と轡を並べたいがな」
 そう思う、だがそれでもというのだ。
「そうした思いはない」
「左様ですか」
「決してな」 
 こう言うのだった。
「このことは変わらぬであろう」
「しかし轡はですか」
「並べたい、それも最後の最後までじゃ」
 こうも思うというのだ。 
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