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真田十勇士

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巻ノ百 後藤又兵衛その九

「確かにな」
「しかしですな」
「うむ、無闇に使えるものか」
「そういうことですな」
「気を使うと疲れが違う」
「はい、確かに」
「だからじゃ」
 それ故にというのだ。
「無闇に使うな」
「いざという時にですな」96
「使うのじゃ」
 気、それはというのだ。
「そうしたものじゃ、そして気はな」
「修行で幾らでも増え大きくなる」
「そうじゃ、だから肝心な時に使うものじゃが」
「大きく強ければそれだけよい」
「どんどん増やすのじゃ」
 気もというのだ。
「よいな」
「わかり申した」
「さすればさらによく戦える」
 気が大きく強ければというのだ。
「術と共にな」
「では」
「うむ、これは御主だけでなくな」
「我等全員に言える」
「そうじゃ」
「そうですか、では」
「気も含めて強くなるのじゃ」
 こう言って自らもだった、後藤は気の鍛錬もした。とかく彼もまた修行に余念がないのがよくわかることだった。
 その中で堺の町を歩く時もあったが。
 ふとだ、後藤は後ろを振り向いてこんなことを言った。
「ふむ、またか」
「先程の気配はまさか」
「そうじゃ、清海殿もわかったか」
「はい、それがしもそうですし」 
 清海は後藤に答えてこう言った。
「殿もです」
「確かに」
 幸村も答えた。
「感じました」
「そうじゃな、真田殿もと思っておった」
「この気配は刺客ですか」
「そうじゃ、どうも殿が送られたらしいのう」
「殿といいますと」
 清海はそれを聞いてすぐにこう言った。
「黒田殿ですか」
「うむ、藩を出たがな」
「まだですか」
「わしも殿とお呼びしている」
 それだけの絆は残っているというのだ。
「他の呼び名が出来ぬこともあってな」
「そうしてですか」
「こうお呼びしているのじゃ」
「左様ですか」
「うむ、それでな」
「刺客をですか」
「送られて来ておる、しかしこれまでは只の雇い者でな」
 藩士ではなくそうした者達だというのだ。
「刺客と言っても実は見張り位の者達じゃ」
「この程度の気の者達なら」
 どうかとだ、清海が述べた。 
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