新訳紅桜篇
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4 人のくせは、よく見極めろ。
前書き
他の鬼兵隊員らに怪しまれずに、武器庫へ武器を頂戴しに行くため、アンナは様々な細工をした。
彼女は無事に、武器を頂戴できるのか…?
用意がすべて整った私は、武器庫へ向かう。
やはり、緊張する。
だが、「計画」を阻止するためなら、どんなことでもやらねば…!
武器庫の前に来た。
無事に侵入する。
武器をいくつか失敬した。
…とりあえず、「侵入作戦」の第一段階、完了だ。
それからトイレに戻り、「仮面」を外した後、頂戴してきた武器と、着ていた服を脱ぎ、
もとの姿に戻った。次に、声を変えた薬の解毒剤を飲み、声も戻した。
だが、この解毒剤には1つ、欠点がある。
その後 24時間、声がかすれる。まあ、普通の人間には、分からないくらいだが。
気づく人は、すぐ気づくので、その後の設定にも、注意が必要だ。
とりあえず、どうにかせねば。
設定は後でなんとかするとして、はやく武器庫へ行かねば。
そして荷物を整え、帯の中に「魔法のバッグ」をしまい、武器庫の鍵を持って、
慌てて女子トイレを出た、ふりをする。
武器庫の鍵を右手に、ドアの前に来る。
そして、確認をして、鍵を閉めるところまで完璧に演技をしきった。
_さて、ここからが本番だ。
深呼吸をして、食堂に向かおうとすると、ふいに後ろから声がかかった。
_「お前、今から食堂へ行くんだなァ?」
嫌な予感。もしや…
振り向くとそこには高杉がたっていた。
_え?やばっ!
パニックになりそうになる自分を必死でこらえ、あくまで冷静に対応する。
だが、対応しようとした時、肝心なことを忘れていることに気付いた。
_声があまりでなくなっている…
とりあえず、そこらへんはなんとかしてごまかす。
_「ああ、貴様か、高杉。ああ。今から行くつもりだ。
しかしお前はいつも、『突然』現れるなァ。
ビックリするじゃないか。」
_「やけに、お前らしくないじゃねェか… どうかしたのか?
額に汗がにじんでるぞ。嘘でもついてるんじゃないのか?
やっぱりお前、あの時何か隠しただろう?言ってみろ。
今正直に言ったら、許してやるがァ…?」
相変わらず、怪しんでいるらしい。
_「だからさっきから言っているだろう、高杉。私は何も盗んだりしていない。
私が盗むような面か?かりに盗むなら、正々堂々と取りに行ってやらァ。」
_「ほぅ…、そうか。」
チャンスだ!このまま話題を変えて、引きはがそう。
_「…というわけだ。私は今から食堂に行く。貴様もよかったらどうだ?
一緒にdinnerでも?」
あいつは、食堂でご飯を食べるようなやつではない。
だからここで、解放されるはず…!
一か八か…勝負。
すると彼は、まさかの返事をしてきた。
_「…ああ。たまには一緒に飯を食うのも、悪かァねえな。
その誘い、乗ろう。連れて行ってくれ。」
…えぇェェェェェェェェッ!!!!
まさかのォォォォォォォ!!!!
…ヤダ。絶対、ヤダ。
_「…また子先輩のことは、いいのか?彼女の方がお前を愛しているし、
dinnerに誘ってやるくらい、してやったらどうだ?」
ここはなんとか、頑張ろう。
_「また子は、今日は忙しいんだとよ。ま、いいだろ?」
むむ…これ以上いい訳は効かない。ますます怪しまれるかもしれない。
_「…分かった。では行こう。」
結局、食堂まで、一緒に来てしまった。
あぁあ。今日は厄日with高杉だ。
今日は高杉が一緒だと、ろくなことがない。
そして何より一番厄介なのが、周りの視線だ。
まるでカップルでも見るかのように、こちらを(いや、どちらかと言えば、わたしを)見ている。
しまいには、「いいなぁ」とつぶやく声まで聞こえてきた。
私だって、望んでやっているわけではない。
ま、ここにいる鬼兵隊の人たちは皆、高杉に惹かれ、ここに入ったのだから、
その人を取られたようで、嫉妬しているのだ、きっと。
大目にみてやらねば。
総督の名を立てて。
私が気まずい思いをしているのに、高杉は、すたすたと食事をとりに行った。
_「待て、コラ。もうちょっとゆっくり歩け、コノヤロー。」
つい口から、言葉が出る。
高杉は、振り向いて言った。
_「…お前、ますます銀時に似てきたな。本当にお前は、銀時の妹のようだ。
白状したらどうだ?」
そうそう。私は幼いころ、銀時、ヅラ、高杉と一緒に、同じ塾へ通っていた。
その名も、「松下村塾」。
その時、銀時は、私と同じような銀髪だったので、「私の兄ではないか騒動」がよく
勃発していた。
しかも、言い方までそっくり、となれば、そう思われても仕方ない。
だが真実、私は銀時の妹ではない。むしろ、他人だ。
_「残念だがな、私には兄弟がいるが、それは銀時ではない。
どうしても信じないのならば、DNA検査でもしてみるがいい。」
_「ほぅ…、言ってくれるなァ。」
_「いつまででも言ってやるわ。ほら、さっさと進め、高杉。」
_「おらよ。」
2人とも食事をお盆にのせ、空いている席へ行く。
ちょうど窓際の2人掛けの丸テーブルが開いていたので、そこになった。
何を話していいのか分からず、私は、「ただ黙り込む作戦」を実行していると、
高杉がまず最初に、口を開いた。
_「…お前、鬼兵隊での生活は、どうだ?
オレが無理やり連れてきて…結局お前もまだ、逃げ出していない。
暮らしていて、不便なこととか、ないか?」
なんか、やけにしおれた感じだなぁ…
本当に高杉か、こいつ?
_「ああ…。まあまあだ。幸い、人間関係でも問題はまだないし、上司のまた子先輩とも、
仲良くしてるし。今は特に、逃げ出そうとも 思っていない。今のところは、だがな。」
一応、くぎを刺す。
_「ほぅ…まぁ、いい。ところで、武器庫の方はどうだ?作業は順調か?」
あ、この質問の裏には、なにかがあるな。
当たり障りなく、答えておこう。
_「…ああ。とりあえず、順調だ。だが、まだ上の方が残っていてな。
それさえ終われば、完了だ。
今日の夜中には完成するだろう。また子先輩にも指示されたが、
終わり次第、お前と岡田先輩と、また子先輩、そして、河上先輩に、
データを送る。」
_「…なんでそこ、オレだけ雑なんだ?」
_「ま、気にしない、気にしない。幼馴染だし、いいだろう?
それとも、『総督』とでも呼んだ方がいいか?」
_「…まぁ、いい。気にするな。ところで…」
高杉が何か言おうとしたところで、ある隊員が食堂内に入ってきた。
_「総督、緊急に話が。」
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