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真田十勇士

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巻ノ百 後藤又兵衛その六

「前田殿は虎、しかし」
「わしの槍はじゃな」
「熊ですな」
「その槍の形じゃな」
「はい」
 そうした槍術だというのだ。
「そこに洗練さが合わさった」
「前田慶次殿のことは知らぬが」
「それでもですな」
「わしの槍は確かに熊じゃ」
「熊の様に強く逞しく」
「そしてそこにか」
「洗練されておりまする」
 そうした槍術だというのだ。
「見事です」
「そして貴殿の槍は」
 後藤は後藤で幸村の双槍のことを言った。
「炎じゃな」
「拙者の槍術は」
「ただの二本槍でなくな」
 慶次も後藤も使う槍は一本だ、一本の剛槍を使ってそうして縦横に暴れる。それが彼等の槍なのである。
 しかし幸村の二本槍はというのだ。
「炎じゃ」
「燃え上がる様に」
「うむ、そう見たが」
 幸村自身を見ての言葉だ、まだ槍術は見ていないがだ。
「わしはな」
「そうでござるか」
「そして清海殿に授けるのはな」
「熊の槍ですな」
「清海殿自身にも似合うであろう」
 こうも言ったのだった。
「やはりな」
「だからですな」
「うむ、清海殿にはわしの槍術を授ける」
「そして拙僧はですな」
 清海も槍を合わせつつ言った。
「それを錫杖としてですな」
「使ってな」
「戦えと」
「そうさせよ」
 こう言うのだった、清海には。
「是非な」
「わかっておりまする」
「しかしな」
「それでもですな」
「錫杖と槍は違うが同じものじゃ」
「先に刃があるかどうか」
「それだけの違うじゃ」
 このことも言うのだった。
「だからな」
「はい、是非」
「わしの術を身に着けるのじゃ」
「槍術を」
「そして錫杖の術とされよ」
「わかり申した」
「それが必ず力になる」
 清海のそれにというのだ。
「だからな」
「はい、それでは」
「わしの全てを教えるぞ」
「そしてその全てを備える」
「御主にはそれを頼む」
「そうさせて頂きます」
 大柄な二人の男が言い合った、そしてだった。  
 彼等ははぶつかり合ってそうしてだった、清海は後藤が自らに授ける術を身に付けていった。それは道場にいる時だけでなく。 
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