悪魔の国
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第六章
「しかし税金を払えば信仰を許してもいますし」
「こうして我々が街にいても何もしない」
「そうなのですね」
「商売も出来ます」
共にというのだ。
「これから我々がする様に」
「そうですか」
「そうしたことも出来ますか」
「むしろ欧州の田舎よりも遥かにいい商売が出来ます」
「異教徒達相手の方が」
「むしろですか」
「はい、あちらの商人はですね」
商人達は誰もが嫌そうな顔になった、欧州の田舎の話については。
「もう品がなくて」
「商売も未開な感じで」
「簿記の仕方もいい加減で」
「しかも野盗もあちこちにいて」
「領主も無闇に野蛮で強欲だったりするので」
「なっていません」
「もう酷いものですよ」
欧州の田舎はというのだ。
「ジェノヴァやフィレンツェなんかと全然違いますよ」
「もう狼が普通に出て行商人が行き来する位で」
「まともなお店もないですし」
「まだ物々交換だったりしますからね」
「そんな状況ですから」
「司教に馬鹿みたいに高いお金を払ったりしたこともありますよ」
神の僕達も酷いというのだ。
「ここはそういうのないですから」
「確かに手強い商売相手ですけれどね」
「すぐにふっかけてきたりぼったくろうとしますが」
「それでもです」
「こっちの方が遥かにいい商売が出来ます」
「欧州の田舎より」
「何しろ何でもありますからね」
このことが一番大きいという言葉だった、その何でもある市場を見回してジュゼッペ達船乗りに話している。
「異教徒達との商売の方がいいんです」
「このことは事実ですよ」
「装飾品も宝石も香辛料も手に入りますし」
「いいですよ」
「確かに」
ここでだ、ジュゼッペは。
香辛料を売っている店を見た、見れば胡椒が堆く積まれている。他の見たこともない香辛料も同じ様に店頭に置かれている。
それを見てだ、彼は商人達に言った。
「胡椒を凄い売り方してますね」
「胡椒だけじゃないですからね」
ロレンツォが彼に答えた、これまで通りの笑顔で。
「そうなんですね」
「いや、相変わらず安いですね」
「そうなんですか」
実はジュゼッペは字が読めない、半島の言葉もアラビア語もだ。だから彼は店で書かれている値段はさっぱりわからないのでこのことはロレンツォの言うことに頷くだけだった。
「あの店のは」
「はい、これは買い時ですね」
ロレンツォは笑って言った。
「ジェノヴァに持って帰ると高く売れます」
「そうですか」
「はい、楽しみです」
ロレンツォの笑みがにこにことしたものになっていた。
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