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悪魔の劇薬

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第五章

「どうもな」
「そうでしょうか」
「あれか?胡椒とか絨毯とかばかり見てたのかい?」
「高く売れそうなものを」
「豆とか見なかったのか」
「豆は安いので売っている店の横を通っても」
 それでもというのだ。
「全く」
「見向きもしなかったのか」
「安く仕入れられて高く売れるものを」
「そうしたものは見てもか」
「はい、豆は」
「そうか、わかったよ」
 ここまで聞いてだ、イブンはハンスに強い声で答えた。
「あんたが言う毒がな」
「そうなんですか」
「ああ、間違いないな」
 確信している言葉だった。
「あんたが探していた毒はな」
「そうですか」
「ああ、それはな」
 その毒はというのだ。
「一つしかないさ」
「では」
「その毒を見せてやるよ」
 こうハンスに言った。
「今からな」
「そうですか、では」
「言っておくけれどな」
 笑ってだ、イブンはハンスにあらためて話した。
「毒じゃないからな」
「実は、ですか」
「ああ、むしろ美味い」
「美味しいのですか」
「それも相当にな」
「そうなのですか、では」
「ああ、来な」 
 イブンは店は女房に任せてだった、そのうえで。
 ハンスを市場のある店に案内した、そこは豆を売っている店だったがその豆は実に独特の形をしていた。しかもその豆ばかり売っている。
 その豆を見てだ、ハンスは目を瞬かせてイブンに言った。
「変わった豆ですね」
「ああ、そうだろ」
「やけに硬そうで」
「実際に硬いさ、けれどな」
「食べればですか」
「いや、飲むんだよ」
 イブンは笑ってハンスに話した。
「この豆はな」
「この豆をですか?」
「ああ、そうだよ」
「この豆を飲むんですか」
「工夫をしてお湯の中に入れてな」
 そうしてというのだ。
「飲むんだよ」
「そうなのですか」
「こっちじゃ結構飲んでるぜ」
「この豆をお湯に入れて」
「そうさ、俺も飲んでるぜ」
「この豆を」
「そうさ」
「あの、どうやって飲むのですか?」
 心からいぶかしみ不思議がってだ、ハンスはイブンに問うた。 
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