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英雄伝説~灰の軌跡~

作者:sorano
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第27話

~パンダグリュエル・パーティーホール~



「”特務部隊”の指揮下に入った際のメリットとデメリットは単純に考えれば、さっき答えた指揮下に入らなかった場合のメリットとデメリットが”逆”になるようなものよ。」

「メリットとデメリットが”逆”って………」

レンの説明の意味がわからないアリサは困惑の表情で呟き

「―――まず”特務部隊”の拠点は言うまでもなく、”カレイジャス”になるから特務部隊の直接指揮下に入るⅦ組を含めたトールズ士官学院生達もカレイジャスを”拠点”として使えるわ。」

「えっと……という事は今後エレボニアの各地に散っている士官学院の関係者の人達にも協力してもらう事になれば、その人達もカレイジャスに乗船してもいいんですか?」

レンの話を聞いてある事に気づいたトワはレンに確認した。

「ええ。それと次に補給に関しての心配は一切無用になるわ。」

「補給に関しての心配は一切無用になるって………」

「もしかしてメンフィル(そっち)がわたし達の補給物資を用意してくれるの?」

補給の心配が一切無用になる事を知ったエリオットが戸惑っている中、その理由を察したフィーはレンに訊ねた。

「ええ。Ⅶ組―――いえ、トールズ士官学院の関係者達がメンフィル帝国が結成した”特務部隊”の直接指揮下に入る事=一時的にメンフィル帝国軍に所属する事になるから、当然メンフィル帝国は一時的とはいえ、自国の軍に所属している人達の為の補給物資を支給してあげる義務があるわ。―――勿論正規軍と違って、無料(タダ)で支給してあげるわ♪」

「なっ!?む、無料で補給物資をくれるんですか!?」

レンの答えを聞いたマキアスは驚きの声を上げてレンに訊ねた。



「ええ。それとⅦ組のみんなに関しては”特別な武具”も支給してあげるわ♪」

「”特別な武具”…………」

「その武具は今我等が使っている武具とどう違うのでしょうか?」

レンの説明を聞いたガイウスは考え込み、ラウラはレンに訊ねた。

「全然違うわよ。―――少なくても今みんなが使っている貧弱な武具とは比べ物にならない武具よ♪」

「ひ、”貧弱”って……!お言葉ですがⅦ組のみんなが使っている武具はジョルジュ君がⅦ組のみんなの為に特別に用意した武具で、市販品よりも遥かに優れているんですよ……!?」

「トワ……僕は気にしていないから、わざわざトワが怒る必要はないよ。」

レンの指摘を聞いて必死に反論したトワの様子を辛そうな表情で見つめたジョルジュはトワを諫め

「まあ、ジョルジュお兄さんの技術者としての能力は年齢の割に”それなりに”優れている事は理解しているわ。―――だけど、その”特別な武具”を作った人はジョルジュお兄さんどころか、シュミット博士やラッセル博士よりも遥かに優れた技術者が作った武具よ?」

「ええっ!?あの”三高弟”で名高いシュミット博士やラッセル博士より優れた技術者なんて、普通に考えていないと思うんですけど………」

(まさか……)

レンの答えを聞いたアリサは信じられない表情で指摘し、心当たりがあるオリヴァルト皇子は驚きの表情をした。



「――――”匠王”ウィルフレド・ディオン。その人にわざわざ頼んで、Ⅶ組のみんなの武具を用意してもらったわ♪」

「”匠王”ですって!?」

「”匠王”ウィルフレド・ディオン。2年前の”リベールの異変”解決にも貢献した異世界の”ユイドラ”という地方の領主にして技術者で、彼の技術は少なくてもゼムリア大陸では彼の技術の敵う方がいらっしゃらない事と彼自身が”工匠”という職人を名乗っている事から、(たくみ)の王を意味する”匠王”の異名を持つ最高峰の技術者ですわね。」

「ハハ……やっぱりウィル君だったか………ウィル君が用意した武具だなんて、どう考えても反則クラスの武具に決まっているじゃないか。」

武具を用意した人物を知ったサラは信じられない表情で声を上げ、シャロンは静かな表情で呟き、オリヴァルト皇子は苦笑しながら呟いた。

「うふふ、さすがに”影の国”でウィルお兄さん達がレン達の為に作った武具程じゃないわよ。―――だけど最低でもその武具さえあれば、生身で戦車どころか”機甲兵”を撃破する事も容易よ?」

「その武具があれば、私達でも生身であの”機甲兵”を容易に撃破する事が可能……ですか。」

「ひ、非常識な……」

「そんなとんでもない代物(しろもの)、間違いなく古代遺物(アーティファクト)クラスの武具でしょうね。」

レンの説明を聞いたエマは呆けた表情で呟き、マキアスは疲れた表情で呟き、セリーヌは目を細めて推測を口にした。

「うふふ、ウィルお兄さんが作った武具はどれも様々な魔法効果も秘められているけど、当然武具としての能力も市販の武具と比べれば圧倒的に上よ。―――それこそ”光の剣匠”の得物である”ガランシャール”と同レベルかそれ以上の武具もあるわよ。」

「なっ!?あの”宝剣ガランシャール”と同じか、それ以上なのですか……!?」

「………ウィルフレド卿の噂は私も耳にした事があるが、噂―――いや、噂以上の優れた技術の持ち主のようだな……」

代々伝わって来た宝剣と同じか、それ以上のレベルの武具である事にラウラが驚いている中アルゼイド子爵は静かな表情で呟いた。

「ねえねえ~、ちなみにボクのガーちゃんの分もあるの~?」

「そう言えばミリアムちゃんはアガートラムさんを操っての戦闘という特殊な戦闘方法ですから、武器もアガートラムさんの部品という特殊な武器になりますが……」

ミリアムの疑問を聞いてある事に気づいたエマは戸惑いの表情でレンを見つめ

「勿論用意してあるわよ。ちょうど、アガートラムと同タイプの人形をウィルお兄さんが直す機会があったからね♪」

「”アガートラムと同タイプの人形”という事は…………」

「そういや、”英雄王”達がアルティナを捕縛した時にアルティナが操っていた人形は破壊されていたが………何で直っているんだ?」

「まさか……破壊された彼女の人形をウィルフレド卿が修理したのですか!?」

レンの説明を聞いてある事に気づいたガイウスは無意識にアルティナとクラウ=ソラスへと視線を向け、トヴァルはかつての出来事を思い出して首を傾げてクラウ=ソラスを見つめ、クレア大尉は信じられない表情でレンに訊ねた。



「正解♪」

「……レン様。ウィルフレド様にクラウ=ソラスを修理して頂いた事は否定しませんが、クラウ=ソラスがそちらの”オライオン”の”アガートラム”と同タイプである事は否定しますので、クラウ=ソラスがアガートラムと同タイプという事を訂正してください。」

「―――――」

ジト目でレンに指摘するアルティナとアルティナの指摘に同意するかのように機械音を出したクラウ=ソラスの様子にその場にいる多くの者達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせ

「え~、君と繋がっているそのコはガーちゃんの色を黒くしただけみたいだから、ガーちゃんと同じタイプなんじゃないの~?」

「全然違います。」

「――――」

そしてミリアムは不満そうな表情でアルティナに訊ね、訊ねられたアルティナは呆れた表情で答え、アルティナに続くように機械音を出したクラウ=ソラスの様子を見たその場にいる多くの者達は再び冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

「それにしてもミリアム君のアガートラムのような人形を修理するなんて………異世界の人でありながら”匠王”は導力技術も修めているのかな……?導力でできた人形を修理するにはどう考えても導力技術を修めている必要があると思うし。」

「ハハ……確かにウィル君も導力技術を修めているが、彼の話によると”工匠”は”何でも創れる”から、別におかしくはないよ。」

「な、”何でも創れる”って………もしかして”工匠”は武具だけじゃなく、薬や服とかも作れるんですか?」

ジョルジュの疑問に苦笑しながら答えたオリヴァルト皇子の答えを聞いてある事が気になったトワはオリヴァルト皇子に訊ね

「ああ。”工匠”は”創る事に関してのあらゆる分野を修めている必要がある”との事だから、武器だろうが兵器だろうが、薬だろうが言葉通り”何でも創れるんだ。”」

「ええっ!?ウィルフレド卿―――いえ、”工匠”って、そんなに幅広い分野を扱っているんですか!?」

「ふふ、数々の分野に手を出している私達”ラインフォルトグループ”も真っ青になるような幅広さですわね。加えて”工匠”の方々の技術力はとても秀でており、我々では真似をする事すらできませんから、”工匠”の方達が本格的にゼムリア大陸で経営を始めたら”ラインフォルトグループ”も危ないかもしれませんわね。」

オリヴァルト皇子の説明を聞いたアリサは驚き、シャロンは苦笑しながら呟いた。



「ラインフォルトグループ会長の秘書の癖によくそんな事が言えるわね……それにしても、あの”匠王”製の武具を用意するなんてね………ちなみに支給されるのは武器だけなのかしら?」

「勿論、防具も用意してあるわよ♪」

「防具もって……サイズは私達に合っているんですか?」

呆れた表情でシャロンに指摘した後問いかけたサラの問いかけに対するレンの答えを聞いて疑問を抱いたアリサはレンに訊ねたが

「予めアリサお姉さん達の身長、体重、スリーサイズの情報も全て手に入れているから当然サイズも合っているわよ?例えばアリサお姉さんのスリーサイズは上からはちじゅうろ――――」

「!!!!?????キャアアアアアアアアアアア―――――ッ!!お願いしますから、それ以上言わないで下さい~!」

小悪魔な笑みを浮かべたレンがある事を口にしようとするとアリサは血相を変えた後悲鳴を上げると共に立ち上がってレンが口にしようとした言葉を聞こえないようにした後レンに嘆願し、その様子にその場にいる多くの者達は冷や汗をかき

「レン、貴女ね………」

「よりにもよって、女性のスリーサイズをこんな大勢の人達の前で口にしようとするなんて、一体何を考えているんですか……」

プリネとサフィナは疲れた表情でレンに指摘した。

「うふふ、さすがメンフィル帝国ですわね♪お嬢様達の身長や体重どころか、スリーサイズも把握されているなんて♪」

「メンフィル帝国は何故オレ達の身長等を知っているんだ……?」

「どうせ戦争の時にメンフィルの諜報部隊がわたし達の事も調べただろうから、その時に士官学院に忍び込んで学院にあるわたし達のデータを盗んだか、コピーしたんじゃないの?」

一方シャロンはからかいの表情でアリサを見つめ、ガイウスの疑問にフィーはジト目で自身の推測を口にした。



「………レン皇女殿下。先程正規軍と異なり、Ⅶ組やトールズ士官学院の皆さんには無料で補給物資を支給すると仰いましたが、我々正規軍は”代金”を支払えば補給物資を正規軍にも支給して頂けるのでしょうか?」

その時ある事が気になっていたクレア大尉はレンに訊ねた。

「ええ。勿論その場で払わず、”ツケ”にして補給物資を支給してもらう事も可能よ。ちなみに支払期限は無期限かつ利子は0.1%もつかないから安心していいわよ♪」

「なっ!?支払期限は無期限で、しかも無利子なんですか!?」

「それってつまり借金を踏み倒してもいいって事じゃん!」

「ハハ………あからさまに”何かある”と思わせるような魅力的な条件だね………」

「同感。まさに”タダより高いものはない”条件だろうね。」

「………レン皇女殿下、その条件の代わりにエレボニアは見返りにどのような事をする必要があるのでしょうか?」

レンが口にした驚愕の条件にマキアスとミリアムは驚き、疲れた表情で呟いたオリヴァルト皇子の言葉にフィーは同意し、アルゼイド子爵は静かな表情でレンに問いかけた。



「うふふ、察しがいいわね。とは言っても大した条件じゃないし、エレボニアにとってもありがたい条件よ?」

「”エレボニアにとってもありがたい”って、一体どんな条件なのよ。」

レンの答えが気になったセリーヌは目を細めて答えを促した。

「メンフィル帝国による正規軍への補給の件については『アルフィン皇女が和解交渉の際にシルヴァン皇帝と交渉して、支払期限を無期限かつ無利子にしてもらった事』にして、新聞等を利用してエレボニア―――いえ、世界各国に知らしめるだけでいいわ。」

「へ………補給の件をアルフィン皇女殿下がシルヴァン皇帝陛下と交渉した事にする……ですか?」

「どうしてそんな内容を世界各国に………」

レンの答えを聞いたマキアスは困惑の表情で呟き、トワは戸惑いの表情でレンを見つめた。

「うふふ、和解したとはいえ、戦争していた相手の皇帝と交渉して補給の条件をとってもいい条件へとした事で両帝国の戦争の件によって発生したアルフィン皇女の汚名を少しでも返上できるから、エレボニアとしてもありがたい条件でしょう?」

「……それは…………」

「確かにその内容がエレボニア全土―――いや、世界各国に知れ渡ったら皇女殿下の汚名も返上できると思うが………」

「何でメンフィルがわざわざ、メンフィルにとっての”戦犯”である皇女殿下の為にそこまでしてあげるのよ?」

レンの説明を聞いたオリヴァルト皇子とトヴァルはそれぞれ複雑そうな表情をし、サラは真剣な表情でレンに訊ねた。



「アルフィン皇女は和解条約で将来リィンお兄さん―――クロイツェン統括領主の妻の一人になる事が決まっているでしょう?エレボニアの民達もそうだけど、和解条約で得る事になる”新たなメンフィル帝国の民となる元エレボニア帝国の領土の民達”は両帝国の戦争の件でアルフィン皇女を恨んだりする可能性は十分にありえるでしょう?で、その結果リィンお兄さんに嫁いだアルフィン皇女に”報復”する為にメンフィル帝国の領土内でテロ活動や暴動とか起こされたら、メンフィル(こっち)が迷惑なのよ。」

「………………」

「なるほど………要するに今回の戦争で得る事になる元エレボニア帝国の領土の民達やエレボニアの民達のメンフィルに対するテロ活動や暴動が起きる可能性を少しでも減らす為に、補給の件を皇女殿下の手柄にして皇女殿下の汚名を少しでも返上させてエレボニアの民達の皇女殿下に対する悪感情を少しでも減らすおつもりなのですか………」

レンの話を聞いたリィンは目を伏せて黙り込み、シャロンは真剣な表情でメンフィルの狙いを口にした。

「大正解♪ね?条件もとっても簡単な上、アルフィン皇女の汚名を少しでも返上させる事はエレボニアにとってもありがたい条件でしょう?」

「それはそうなのですが…………」

「理由はどうあれ、アルフィンの汚名を少しでも返上する事ができるのならば、レン君の言う通り私達エレボニア帝国としてもありがたい条件だね………」

「………………」

小悪魔な笑みを浮かべたレンの問いかけに対してクレア大尉は複雑そうな表情で答えを濁し、オリヴァルト皇子は疲れた表情で呟き、アルゼイド子爵は重々しい様子を纏って黙り込んでいた。



「話を戻すわよ?Ⅶ組のみんながレン達特務部隊の指揮下に入った場合のメリットは他にもあって、その中にはさっきレンが言った特務部隊の指揮下に入らなかった場合のⅦ組にとって受け入れ難いデメリットの一つであるトールズ士官学院の奪還作戦にも当然関われるわよ。」

「それは…………」

「あの………もしⅦ組のみんなやわたし達トールズ士官学院の学院生達が特務部隊の指揮下に入った場合、トリスタを奪還する際私達トールズの学院生達はどのような形で関わらせてもらえるのでしょうか?」

レンの説明を聞いたガイウスは複雑そうな表情をし、ある事が気になっていたトワは不安そうな表情でレンに訊ねた。

「そうねぇ………少なくてもトリスタ奪還作戦の際、士官学院を占領している貴族連合軍の制圧は完全に士官学院生達に任せるつもりだし、トリスタ奪還作戦に限らず、今後の特務部隊による作戦活動に対して有用な意見を出してくれたらその意見を採用してあげるわよ?」

「ええっ!?という事は士官学院の奪還どころか、今後の作戦活動でも私達にも発言権があるのですか!?」

レンの答えを聞いて驚いたエマは信じられない表情でレンに訊ねた。

「採用するのはあくまで”有用な意見のみ”よ。和解条約の第五条の緩和条件にもその件が書いてあるでしょう?」

「第五条の緩和条件…………確かに緩和条件の中に『”Ⅶ組”が特務部隊の指揮下に入る事を了承した際は特務部隊は”Ⅶ組”の意見も聞き、その意見が有用な内容ならば取り入れる事。』もある為、レン皇女殿下が仰った通り、我等にも特務部隊が考えた作戦活動に対して限定にはなるが、発言権はあるようだが………」

「それ以前にちゃんと緩和条件を守って、あたし達の意見を聞くかどうか怪しいわね。」

レンの指摘を聞いたラウラは和解条約書を確認し、サラは厳しい表情でレンを見つめた。



「失礼ね。条約内容の変更をさせる方便を作らない為にも条約内容はレン達メンフィルもちゃんと守るし、サラお姉さんが危惧していた事はアリシア女王も危惧していたようだから、予めアリシア女王は先に手を打ったのよ?」

「へ………ア、アリシア女王陛下が……?」

「アリシア女王陛下は一体どのような手を打たれたのでしょうか?」

レンの説明を聞いたアリサは呆けた様子で首を傾げ、アルゼイド子爵は真剣な表情でレンに訊ねた。

「”アルフィン皇女の護衛”という名目の下、遊撃士協会に今回の内戦に介入させる事で、”特務部隊”――――メンフィル帝国が和解条約の第五条に付与されている緩和条件の実行を行っているかどうかの確認と中立勢力としてアルフィン皇女や特務部隊と同行して今回の内戦を見届ける事で、和解したとはいえ今までエレボニアと戦争していたメンフィル(レンたち)がアルフィン皇女に危害を加えない為の両帝国や他勢力に対する”見張り役”としての保証の為よ。」

「アリシア女王陛下はそのような理由で遊撃士協会に皇女殿下の護衛を依頼されたのですか………」

「なるほどね。中立勢力を同行させることでメンフィルが条約内容を守らずにエレボニアの内戦を好き勝手にさせない為の”見張り役”として遊撃士協会を介入させたのね。」

「ハハ……本当にアリシア女王陛下にはお世話になってばかりだね………」

アリシア女王の考えを知ったラウラは驚き、セリーヌは静かな表情で呟き、オリヴァルト皇子は苦笑した。



「あれ?でも、皇女殿下の護衛はトヴァルさんですけど………」

「皇女殿下の護衛を務めているトヴァルさんも”特務部隊”と共に同行しなければならないのだろうか?」

その時ある事に気づいたエリオットはトヴァルに視線を向け、ガイウスはレンに訊ねた。

「そんな訳ないでしょう?そもそもトヴァルお兄さんがオリビエお兄さんから受けた依頼―――”アルフィン皇女の護衛”はエルナンお兄さんが”失敗”という結果で処理しているから、既にトヴァルお兄さんはアルフィン皇女の護衛から外されているわ。」

「ええっ!?」

「当然の流れね。実際そこのバカは皇女殿下の護衛を失敗した挙句戦争勃発に間接的に関わっていたからね。護衛を失敗した件もそうだけど、これ以上皇女殿下に余計な事を口出しして状況を悪化させない為にもトヴァルを皇女殿下の護衛から外したんでしょうね。」

「ハハ………今までの事を考えたら、反論できねぇな………」

「トヴァル殿………」

トヴァルが既にアルフィン皇女の護衛から外されている事を知ったエリオットは驚きの声を上げ、サラは納得した様子で呟き、疲れた表情で肩を落としている様子のトヴァルをラウラは心配そうな表情で見つめていた。

「話を続けるわよ?アリシア女王と理由を知ったダヴィル大使も同じ依頼を出したアリシア女王とダヴィル大使―――エレボニア大使館の依頼である”アルフィン皇女の護衛”はトヴァルお兄さんがオリビエお兄さんから請けた依頼とは”別の依頼”扱いだから、エルナンお兄さんが手配した新たな遊撃士が2名、アルフィン皇女の護衛を担当する事になって、既に護衛を開始したわよ。」

「グランセル支部の受付を担当しているエルナンが手配したのだから護衛を担当している遊撃士達はリベールの遊撃士達でしょうね………まあ、少なくてもそこのバカと比べたら何倍も役に立つ遊撃士達でしょうね。」

「ぐっ………」

レンの説明を聞いたサラにジト目で視線を向けられたトヴァルは唸り声を上げ、その様子を見ていたアリサ達は冷や汗をかいた。

「ハハ、まさかこんな形で私がリベールで出会った懐かしい面々と再会する事になるとはね。―――レン君、ちなみにアルフィンの護衛を担当している遊撃士達は誰なんだい?」

「うふふ、その二人に関してはどうせ後でわかるから、オリビエお兄さんには悪いけど説明は省略させてもらうわ。――――話を戻すけど、レン達の指揮下に入れば”C”の処遇についても”殺害”ではなく、”捕縛”で済ませてあげるわよ?Ⅶ組を含めた士官学院の人達はエレボニアの為にエレボニアを衰退させたメンフィルの指揮下で戦うのだから、士官学院の奪還の件も含めてそのくらいの配慮はしてあげるわよ?」

オリヴァルト皇子の問いかけに対して小悪魔な笑みを浮かべて答えを誤魔化したレンは不敵な笑みを浮かべてアリサ達を見回した。

「そ、それは………」

「………………」

「………ッ!」

レンの言葉に対してトワは辛そうな表情で答えを濁し、ジョルジュは複雑そうな表情で黙り込み、サラは唇を噛みしめて怒りの表情でレンを睨みつけ、アリサ達はそれぞれジョルジュ同様複雑そうな表情で黙り込んでいた。

「―――ただし、”C”を捕縛した後は当然エレボニアが責任を持って、”C”が死ぬまでずっとエレボニアの監視下に置いてもらうわよ。”C”は今回の戦争の件でメンフィルに対しても憎悪を抱いているのだから、”鉄血宰相”の時みたいにメンフィルに対してテロ活動を行う事は十分に考えられるのだからね。」

「…………ああ、クロウ君にそのような愚かな事を2度とさせない為にも彼を捕縛してくれた際は我々エレボニアが責任を持って、彼を一生エレボニアの監視下に置く事を私が約束する。」

「殿下………」

レンの要求に静かな表情で同意したオリヴァルト皇子の様子をアルゼイド子爵は心配そうな表情で見つめていた。

「あ、あの……クロウさんを生かして頂けるという事は和解条約でメンフィル帝国に引き渡される事になっているヴィータ姉さんの命も助けて頂けるのでしょうか……?」

「”蒼の深淵”の処遇の件については既に答えたでしょう?――――レーヴェのようにメンフィルに寝返れば、命は助けるって。だからもし本当に”蒼の深淵”を助けたければ、エマお姉さんが頑張って”蒼の深淵”を説得する事ね。」

「それは………」

「プライドの高いあのヴィータをメンフィルに寝返らせるように説得するなんて、どう考えても不可能よ。」

自身の質問に対して答えたレンの答えを聞いたエマは辛そうな表情で答えを濁し、セリーヌは疲れた表情で呟いた。



「それとⅦ組のみんながレン達の指揮下に入るんだったら、みんなが望めばメンフィルの諜報部隊が手に入れた最新のエレボニアの情報を好きなだけ開示してあげるわ♪」

「メ、”メンフィルの諜報部隊が手に入れた最新のエレボニアの情報”を好きなだけ開示して頂けるという事は………」

「メンフィルは戦争の時にエレボニア帝国全土に投入した諜報部隊をまだ撤退させず、情報収集や破壊工作をさせているんだ~?」

意味ありげな笑みを浮かべたレンの答えを聞いてある事を察したトワは不安そうな表情をし、ミリアムは真剣な表情でレンに訊ねた。

「うふふ、戦争の時と違って破壊工作は一切していないわよ?」

「ハハ……”破壊工作はしていない”という事は情報収集は続けているという事だからエレボニアの防諜は丸裸で、メンフィルの諜報部隊によってエレボニアの様々な情報が漏洩し続けているようなものじゃないか………」

「クッ………!」

レンの説明を聞いたオリヴァルト皇子は疲れた表情で呟き、クレア大尉は唇を噛みしめた。

「クスクス、肝心な時は”役立たず”の上限られた情報しか開示しない”情報局”と比べたら、レン達が信頼するメンフィルの諜報部隊に情報収集を続行させた方が何倍も効率的でしょう?」

「”情報局”が”役立たず”って……幾ら何でも言い過ぎじゃありませんか?」

レンの話を聞いたジョルジュは不安そうな表情でミリアムに視線を向けた後レンに指摘した。

「事実じゃない。”貴族派”や”帝国解放戦線”の動きを察知できず、むざむざと”鉄血宰相”が狙撃された挙句ユーゲント皇帝達は”貴族派”の手によって落ちたし、内戦勃発までに起こった”帝国解放戦線”によるテロ活動もほとんど後手に回っていたじゃない。」

「それは…………」

「”貴族派”による妨害もあった上”情報局”は”鉄道憲兵隊”や正規軍と比べると人は圧倒的に少ないんだから、何でもかんでも情報局(ボクたち)のせいにしないでよ~!」

ジョルジュの指摘に対して答えたレンの指摘にラウラは複雑そうな表情でミリアムに視線を向け、ミリアムは不満げな表情で反論した。

「うふふ、悔しかったらメンフィルみたいに諜報を担当する人達ももっと集める事ね。ちなみにメンフィルは今回の戦争でエレボニアに”諜報部隊の一部”である約5000人の諜報員を投入したのよ?」

「ご、5000人!?」

「しかも”一部”という事はエレボニアに潜伏している諜報部隊がメンフィル帝国の諜報部隊の全員ではないのか………」

「な、何それ~!何でメンフィルって、諜報員だけでもそんなにいるの~!?”一部だけ”なのに全員で数十人しかいない”情報局(ボクたち)”の数百倍はいるじゃん~!」

「ミリアムちゃん……”情報局”に所属している人数も機密扱いなのですから、みだりに口にしないでください……」

「それだけいたら、広大なエレボニア帝国全土の綿密な情報も盗り放題だろうね。」

レンの答えを聞いたアリサは驚きの声を上げ、ガイウスは静かな表情で呟き、信じられない表情で声を上げたミリアムにクレア大尉は疲れた表情で指摘し、フィーはジト目で呟いた。



「うふふ、最後に内戦終結後はⅦ組―――いえ、”トールズ士官学院”に”報奨金”として指揮下に入らなかった場合Ⅶ組のみんなにあげるつもりだった7億ミラを支払うから、Ⅶ組のみんなを含めて特務部隊の指揮下に入った人達でみんなで仲良く山分けしてね♪」

「ええっ!?指揮下に入らなかった場合の際に支給してもらえる軍資金であった7億ミラを”報奨金”として結局僕達にくれるんですか!?」

「メンフィルって、太っ腹だね~。それならもし各地に散っている士官学院生達を集めなかったら、7億ミラが全部ボク達の分になるんだ~。」

「本気で言っているんですか、ミリアムちゃん…………」

「よく君はそんな厚かましい事を次から次へと思いつけるな………」

レンの説明を聞いたエリオットが驚いている中ミリアムがふと呟いた言葉を聞いたその場にいる多くの者達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中クレア大尉とマキアスはそれぞれ疲れた表情で指摘した。

「………レン君。Ⅶ組が”特務部隊”の指揮下に入った場合のデメリットは何なんだい?」

するとその時デメリットの内容が気になっていたオリヴァルト皇子が真剣な表情でレンに訊ねた。


「デメリットは大きく分けて二つで一つは、Ⅶ組は”自由”を失って、レン達―――メンフィル帝国の意向の下で動いてもらう事よ。」

「……………」

「まあ、指揮下に入るのだから当然ね………ちなみにもう一つのデメリットは何なのかしら?」

オリヴァルト皇子の質問に答えたレンの答えを聞いたアリサ達がそれぞれ複雑そうな表情で黙り込んでいる中疲れた表情で溜息を吐いたセリーヌは気を取り直してレンに訊ねた。

「クスクス……もう一つのデメリットはⅦ組の一部の人達が”人と人が殺し合う本物の戦場”に出陣して、レン達と一緒に貴族連合軍の兵士達を殺さなければならない事よ。」

「何ですって!?何でこの子達が”本物の戦場”に出陣した挙句あんた達と一緒に貴族連合軍―――いえ、”人”を殺さなければならないのよ!?」

不敵な笑みを浮かべたレンの答えを聞いて血相を変えたサラは怒りの表情でレンに問いかけた。

「あら、その件については第五条の説明の時にちゃんと答えてあげたじゃない。Ⅶ組は”貴族派と革新派が派閥争いを止めてアルノール皇家主導の下で今後のエレボニアを支えるという意思表示を示す為の旗印”なんだから、正規軍、領邦軍にそれを知らしめる為にもⅦ組の一部の人達も協力して”反逆者”である貴族連合軍の兵達や猟兵達を殺す必要があるでしょう?」

「そ、そんな………ッ!わ、私達が貴族連合軍―――人を殺さないといけないなんて……!」

「お嬢様………」

「”両派閥の争いを止める旗印”という事はひょっとしたら、アンが僕達と合流できたら”四大名門”の一角である”ログナー侯爵家”の当主の一人娘であるアンもⅦ組のみんなと一緒に貴族連合軍の兵達の命を奪わなければならないかもしれないね………」

「アンちゃん………」

レンの答えを聞いて表情を青褪めさせて身体を震わせているアリサをシャロンは心配そうな表情で見つめ、ジョルジュとトワはある人物の顔を思い浮かべて辛そうな表情をした。

「レン君……アルフィンは彼らが君達”特務部隊”の指揮下に入れば、彼ら自身の手で貴族連合軍の兵士や猟兵達の命を奪う事もある事も知っていて、この和解条約書に調印したのかい?」

「当たり前じゃない。だからこそアルフィン皇女はシルヴァンお兄様に必死に嘆願して、第五条に緩和条件を付与してもらったのよ?」

「そうか……………アルフィンはその件も知っていたからこそ、せめて彼ら自身の意志で選択してもらう為にもシルヴァン陛下に嘆願したのか………」

「………………レン皇女殿下。先程”Ⅶ組”の一部の人物達が”本物の戦場”に出陣する必要があるとの事ですが、その人物達が誰であるかを教えて頂いてもよろしいでしょうか?」

第五条に緩和条件が付与された真の理由を悟ったオリヴァルト皇子は辛そうな表情で呟き、アルゼイド子爵は目を伏せて重々しい様子を纏って黙り込んでいたが目を見開いてレンに問いかけた。



「ええ、いいわよ。――――と言う訳だからリィンお兄さん、”Ⅶ組”の中で出陣義務が発生する人達の名前を全員挙げて。」

「わかりました。――――ラウラ・S・アルゼイド、マキアス・レーグニッツ、ユーシス・アルバレア、フィー・クラウゼル、ミリアム・オライオン、サラ・バレスタイン。―――以上6名に出陣義務が発生する。」

「ぼ、僕達が……!?」

「そ、それにユーシスまで……!」

「マキアスさんとミリアムちゃん、それにユーシスさんは両派閥の関係者で、ラウラさんは”中立派”である子爵閣下のご息女ですから、何となく予想はしていましたがどうして、どの派閥の関係者でもないフィーちゃんと教官まで………」

レンに答えを促されたリィンが出陣義務が発生する人物達の名前を口にするとマキアスは表情を青褪めさせ、エリオットは信じられない表情をし、エマは不安そうな表情で自身の疑問を口にした。

「うふふ、サラお姉さんはⅦ組の”担当教官”なのだから、出陣義務が発生して当然でしょう?まさか教え子達だけに、”本物の戦場”に出陣させて自分は出陣しないなんて”教師失格”な事をする訳にはいかないでしょう?」

「そうなるように仕組んだのもあんた達メンフィルでしょうがっ!」

「すまねぇ、サラ………!」

小悪魔な笑みを浮かべたレンに視線を向けられて怒りの表情で反論したサラの様子を見たトヴァルは辛そうな表情で身体を震わせて謝罪の言葉を口にした。

「クスクス、サラお姉さんは生徒達に殺人を強要しているレン達に怒っているみたいだけど、そもそも”生徒達に殺人を強要する事に対して怒る事自体が間違い”である事がわからないのかしら?」

「それはどういう意味よ!?」

意味ありげな笑みを浮かべたレンの言葉を聞いたサラは反論したが

「だって、Ⅶ組を含めたトールズの学院生達は”士官学生”――――つまり”軍人の見習い”よ?非常事態になれば、軍人の見習いである士官学生達も当然軍の指揮に従って軍隊行動をしなければならない”義務”があるのだから、”軍の敵を殺す事も当たり前”でしょう?」

「………ッ!」

「そ、それは…………」

「………確かにレン皇女殿下の仰る通り、僕達はただの学生ではなく”士官学生”―――軍人の見習いだから、軍に『敵を殺せ』と命じられたら、その通りにしなければならないね………」

「………………」

「皆さん………」

不敵な笑みを浮かべたレンの正論を聞いたサラは反論できず、怒りの表情で唇を噛みしめ、トワとジョルジュは辛そうな表情で顔を俯かせ、それぞれ複雑や辛そうな表情で黙り込んでいるアリサ達をクレア大尉は心配そうな表情で見つめていた。



「………レン皇女殿下。フィーは何故教官のようにどの派閥の関係者でもないのに、出陣義務が発生しているのだろうか?」

その時ガイウスは複雑そうな表情でレンに質問を続けた。

「うふふ、彼女に関しては”Ⅶ組”の中で唯一戦力面でも期待している上、人を殺した経験がないⅦ組のみんなに”お手本”を見せてくれる人物として貴重な人材なのよ?彼女の”前の職業”を考えれば、”本物の戦場”も既に慣れているでしょうしね♪」

「フィーの”前の職業”って…………」

「………なるほどね。元”猟兵”のわたしは”人を殺し慣れている”から、”本物の戦場”でも最初から使い物になる上”Ⅶ組”のクラスメイトであるわたしが”人を殺すという見本”を見せる事で、ラウラ達が人を殺せるように発破をかける為なんだ。」

「フィー…………」

レンの説明を聞いたエリオットは不安そうな表情でフィーに視線を向け、全く動揺する事なく淡々とした様子で答えるフィーの様子をラウラは辛そうな表情で見つめていた。



「―――そういう訳だから今リィンお兄さんが挙げた人物以外の人達――――アリサお姉さん、エリオットお兄さん、エマお姉さん、ガイウスお兄さんの4人は他の人達みたいにわざわざ”本物の戦場”に出て人を殺す必要はないから、安心していいわよ♪」

「「「「………………」」」」

レンに名前を挙げられた4人はそれぞれ複雑そうな表情で黙り込んでいた。

「あの………どうして僕だけマキアス達みたいに出陣義務が発生していないんですか?僕の父さんは第四機甲師団――――正規軍を率いている人だから、僕もマキアス達同様いずれかの派閥の”関係者”なのに、どうして……」

「ああ、その件。エリオットお兄さんのパパ―――”紅毛のクレイグ”ってとんでもない子煩悩でしょう?そんな人が可愛がっている息子が嫌々”本物の戦場”に出陣させられた事を知ったら、それをさせたレン達どころか最悪アルフィン皇女に対してまで反感を抱いて、特務部隊―――いえ、アルフィン皇女に従わない可能性も考えられるでしょう?だから、エリオットお兄さんは出陣義務が発生するメンバーから外してあげたのよ♪」

ある事が気になり、不安そうな表情で質問したエリオットの質問に答えたレンの答えを聞き、エリオットの父であるクレイグ中将のエリオットに対しての接し方を思い出したアリサ達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

「そ、そう言えばクレイグ中将閣下はエリオットの事を物凄く可愛がっていたな………」

「ああ。エリオットと接する時だけまるで別人のようだったな。」

「ううっ………理由を知って余計に複雑な気持ちになったよ………」

マキアスの言葉にガイウスが頷いている中エリオットは疲れた表情で呟いた。

「子煩悩と言う訳ではないですけど、ラウラの場合は子爵閣下に気を遣わなくてよかったのですか?」

その時アリサは複雑そうな表情でラウラとアルゼイド子爵を気にしながらレンに訊ねた。

「ラウラお姉さんは”貴族”なんだから、内戦の元凶にしてユーゲント皇帝達を幽閉した”賊”である貴族連合軍を殺す事も”貴族の義務”なんだから、わざわざ子爵さんに気を遣う必要はないでしょう?」

「それは………」

小悪魔な笑みを浮かべたレンの答えを聞いたオリヴァルト皇子は複雑そうな表情をし

「子爵さんもその為に”アルゼイド流”をラウラお姉さんを含めた門下生達に教えているのだから、ラウラお姉さんを”本物の戦場”に出陣させることに対して文句はないでしょう?」

「”アルゼイド流”を伝授している理由は他にもありますが………(ラウラ)は帝国貴族である私の子供ですから、レン皇女殿下の仰った通り当然エレボニア貴族の一員として、アルノール皇家の窮地に力を貸し、己の欲の為に皇家の方々を幽閉し、愚かにも自分達の”大義名分”として利用し、エレボニアの民達を苦しめ続けている”賊”を斬る事も私やラウラが果たすべき”貴族の義務”である事は事実ですから、その件に関して私から言う事は特にございません。」

「父上………」

レンの問いかけに対して重々しい様子を纏って答えたアルゼイド子爵の答えを聞いたラウラは複雑そうな表情をした。



「――――さてと。これでそれぞれのメリットとデメリットを提示したわ。それで?結局Ⅶ組のみんなはこれからどうするつもりなのかしら?」

「………………」

そして小悪魔な笑みを浮かべたレンが問いかけるとアリサ達はそれぞれ複雑そうな表情で黙り込み

「……その件についてだが……レン君、彼らが今後の方針をどうするか必ず答える事を約束するから3つだけ、どうか私の頼みを聞いてくれないかい?―――この通りだ。」

その様子を見かねたオリヴァルト皇子がレンを見つめて頭を下げて嘆願した。

「フウ……わざわざメリットとデメリットまで提示してあげたのに、更に3つも頼み事を聞いてくれだなんて、図々しいわねぇ……とりあえずその頼み事の内容を言ってみて。」

オリヴァルト皇子の嘆願に対して呆れた表情で溜息を吐いたレンだったが、すぐに気を取り直して続きを促した。

「ありがとう。―――まず1つは今後の方針を決める為の相談の時間を貰えないかい?何も知らない状況で、突然メンフィル軍の指揮下に入るか、入らないかの判断を迫られても、常識で考えれば誰もまともな判断ができないよ。」

「………ま、言われてみればそうね。―――いいわ。時間を考えると今日はもう遅いし、本格的な活動は明日の朝からにするつもりだったから、相談時間は明日の朝8時までにしてあげるわ。”総大将”であるリィンお兄さんもそれでいいわよね?」

「はい。俺も彼らには相談する時間が必要だと思っていたので構いません。」

オリヴァルト皇子の嘆願の内容の一つに納得したレンに判断を促されたリィンは頷き

「あ、ありがとうございます……!」

「メンフィル帝国―――いえ、レン皇女殿下とリィン特務准将殿の寛大なお心遣いに心から感謝致します。」

レンとリィンの答えを聞いたトワは明るい表情で、アルゼイド子爵は静かな表情で感謝の言葉を述べた。



「それで?後二つは何なのかしら?」

「二つ目は軟禁していたユーシス君を解放して、彼らの今後についての相談に加わらせて欲しい。彼もⅦ組の一員だから、当然相談に加わる権利があるのだからね。」

「さっきも言ったようにユーシスお兄さんは元々解放するつもりだったから、その件も構わないわ。3つ目の頼み事は何かしら?」

「3つ目は………――――私達にアルフィンと会わせて欲しい。」

「アルフィン皇女を?アルフィン皇女をオリビエお兄さんに会わせる理由は何かしら?」

3つ目の頼み事がアルフィン皇女を会わせる事を頼んできたオリヴァルト皇子にレンは眉を顰めてオリヴァルト皇子に理由を訊ねた。

「理由は二つ。一つはアルフィンがメンフィル帝国に捕縛されて以降のメンフィル帝国のアルフィンに対しての扱いがリベールに保護してもらった件も含めて真実かどうかを、アルフィン自身に確認する為だ。」

「………なるほどね。もう一つの理由は何かしら。」

「もう一つの理由は……………逆に訊ねるが兄が今まで幽閉の身であった妹と会いたいと思う事のどこがおかしいんだい?」

レンに続きを促されたオリヴァルト皇子は静かな笑みを浮かべてレンに問いかけた。

「………………うふふ、レンとした事が当たり前の事を忘れていたわね。―――いいわ、すぐにユーシスお兄さんとアルフィン皇女をこの場に来させるように手配してあげる―――と言っても、二人とも既にこの”パンダグリュエル”にいるから内線で二人を呼べばいいだけの事だけどね♪」

オリヴァルト皇子の問いかけに対して目を丸くしたレンだったがすぐに小悪魔な笑みを浮かべて答えた。



「ええっ!?ユ、ユーシスと皇女殿下がこの”パンダグリュエル”にいるんですか!?」

「ええ。二人ともここに来るまでにあった貴賓区画の客室の一室で待機しているわよ。」

「なっ!?という事は我々の通り道にあった客室のどれかに皇女殿下とユーシスが待機していたのですか!?」

「フフッ、ここまで私たちを案内して頂いたレーヴェ様も当然ご存知だったのでしょうね。」

「大方二人が客室にいる事をあたし達が知ればあたし達が二人の奪還を企むかもしれないと思って、教えなかったのでしょうね……」

「フッ………お前達の好きに捉えるといい。」

驚いているエリオットの疑問に答えたレンの答えを聞いたラウラは信じられない表情で声を上げ、苦笑しているシャロンと共にサラは厳しい表情でレーヴェを睨み、二人の視線に対してレーヴェは静かな笑みを浮かべ答えを誤魔化した。

「アルフィン皇女が”パンダグリュエル”にいる理由はあんた達と一緒にカレイジャスに乗り込む為でしょうけど……ユーシスまで既に解放して”パンダグリュエル”に待機させていたのは、まさかとは思うけど”こうなる事も予め予測していた”からかしら?」

「クスクス、それについては女神―――いえ、”レンのみぞが知る”よ♪」

セリーヌの問いかけに対して小悪魔な笑みを浮かべて答えたレンの答えを聞いたその場にいる多くの者達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせ

「何なのよ、その意味不明な自作の諺は………」

「しかも実際その通りですから、洒落になっていない諺ですね……」

プリネは呆れた表情で、ツーヤは疲れた表情でそれぞれ指摘した。



その後レンは内戦で誰かと通信をした後リィン達と共に退出し、リィン達が退出して数分すると扉が開かれ、アルフィン皇女とユーシスがアリサ達の前に姿を現した―――――


 
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