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英雄伝説~灰の軌跡~

作者:sorano
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第25話

~パンダグリュエル・パーティーホール~



「総大将と副将の自己紹介は終わったから、次は総大将と副将の補佐をするサフィナお姉様がみんなに自己紹介をしてくれないかしら?」

「―――わかりました。我が名はサフィナ。メンフィル帝国軍竜騎士軍団団長サフィナ・L・マーシルン元帥。”特務部隊”では若輩でありながら”総大将”や”副将”を務める事になったリィン達の補佐を務める事になっています。」

「ええっ!?げ、”元帥”!?」

「軍の中でもトップクラスの地位じゃないか!?」

「ええ………しかも現役の元帥だから、”名誉元帥”の学院長よりも上の地位ね。」

レンに促されたサフィナが自己紹介をするとエリオットとマキアスは驚き、マキアスの言葉にサラは真剣な表情で頷いて答えた。

「”竜騎士軍団”……?名前からして、”竜騎士”の軍団だと思うのだが”竜騎士”とは一体どういう存在なのだ……?」

「―――”竜騎士(ドラゴンナイト)”。その名の通り、竜の一種である”飛竜”という存在に騎乗し、空を駆る騎士だとの事です。」

「りゅ、竜を駆る騎士ですか………」

「―――聞いた事がある。空での戦いになると例え軍用飛行艇でもメンフィルの竜騎士相手に敵わない事から、メンフィルの竜騎士達は”空の王者”の異名で呼ばれている。」

「ええっ!?軍用飛行艇でも敵わないの!?」

「幾ら竜を駆っているとはいえ、生身の”人”が近代兵器相手に勝つなんて、まさかとは思うけどメンフィルの竜騎士達って”光の剣匠”みたいな達人(マスター)クラスの騎士だらけなのかしら?」

ガイウスの疑問に答えたシャロンの説明を聞いたエマは驚き、フィーの話を聞いたアリサは信じられない表情をし、セリーヌは疲れた表情で溜息を吐いた。



「ふふっ、わざわざ生身で正面から挑まずに軍用飛行艇を撃破する方法はいくらでもありますから、フィーさんが言っていた話は誇張された話ですよ。」

「まあ、少なくてもサフィナお姉様は当然として、最低でも”竜騎士軍団”の部隊長達は軍用飛行艇相手に生身で正面から挑んでも余裕で撃破できるけどね♪」

苦笑しながら答えたサフィナに続くように小悪魔な笑みを浮かべて答えたレンの答えを聞いたアリサ達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせ

「ぶ、部隊長でも生身で軍用飛行艇相手に正面から挑んで撃破できるなんて……!」

「相当な猛者が揃っているんだろうね……」

トワは信じられない表情で呟き、ジョルジュは不安そうな表情で呟いた。

「サフィナ元帥閣下のファミリーネームにメンフィル皇家の家名である”マーシルン”の名がありましたが、まさか元帥閣下はメンフィル皇家の一員なのでしょうか?」

「ええ。”分家”にはなりますが、私もマーシルン皇家の一員です。」

「ちなみにサフィナお姉様はパパの側室の一人が産んだ子供の一人よ♪」

「なっ!?と言う事はサフィナ元帥閣下は……!」

「その人も”殲滅天使”や”姫君の中の姫君(プリンセスオブプリンセス)”と同じ”英雄王”の娘なの~!?」

ラウラの疑問に答えたサフィナとレンの説明を聞いてある事を察したクレア大尉とミリアムは驚きの声を上げた。

「ええ。私の母はプリネ達の母ではありませんが、私も父上の娘の一人です。―――それと私は戦後クロイツェン州の臨時統括領主の任に就く事になっていますので、以後お見知りおきを。」

ミリアムの推測にサフィナは静かな表情で頷いた。



「なっ!?クロイツェン州の”臨時統括領主”だと!?」

「確か先程のレン皇女殿下のお話ではクロイツェン州の統括領主は”シュバルツァー公爵家”との事ですが………」

サフィナの話を聞いたトヴァルは驚き、アルゼイド子爵はリィンに視線を向けた後レンに訊ねた。

「ええ、サフィナお姉様達はあくまで”臨時”の統括領主。幾ら統括領主になる事が内定している事とはいえ、”シュバルツァー家”は元々ユミルしか治めていなかったのだから、その跡継ぎであるリィンお兄さんに”統括領主”としての教育をしてからでないと、統括領主に任命できないわよ。」

「”達”と言う事はクロイツェン州の臨時統括領主はサフィナ元帥の他にもいるのかい?」

レンの話を聞いてある事に気づいたオリヴァルト皇子はレンに訊ねた。

「勿論いるわよ。竜騎士軍団の団長としての務めもあるからサフィナお姉様だけで臨時統括領主を務めるのは無理があるもの。ちなみに他の臨時統括領主はレンとプリネお姉様よ♪」

「ふええっ!?レ、レン皇女殿下とプリネ皇女殿下もクロイツェン州の臨時統括領主なんですか!?」

「クロイツェン州の先行きが本気で心配になってきたわね………」

「同感。他の二人はともかく、”殲滅天使”が臨時統括領主だなんて、”殲滅天使”の事を知っていたら普通に考えて不安にしか思えないね。」

「お願いしますから、サラ教官もですがフィーちゃんも口を謹んで下さい……」

レンの説明を聞いたトワが驚いている中それぞれジト目でレンを見つめて呟いたサラとフィーの感想を聞いたエマは疲れた表情で指摘した。

「失礼ね~。レンは鬼や悪魔じゃなくて”天使”よ?」

呆れた表情で答えたレンの答えを聞いたその場にいる多くの者達は冷や汗をかいて引き攣らせ

「フッ、”天使”の前に”殲滅”の名が付くがな。」

「ハア……貴女の普段の言動や行動を考えたら、そう思われて当然でしょうが………」

「というかむしろ鬼や悪魔よりも、レンさんの方が恐ろしい存在だと思うのですが……」

「くふっ♪レンからすれば鬼や悪魔なんて、雑魚だもんね♪」

レーヴェは口元に笑みを浮かべ、プリネは呆れた表情で指摘し、苦笑しているツーヤの言葉に続くように無邪気な笑みを浮かべたエヴリーヌの言葉を聞いたその場にいる多くの者達は再び冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。



「んもう、みんなして酷いわね。―――それじゃあ次はセシリアお姉さんにお願いしてもいいかしら?」

「別に構いませんが……私よりもレン皇女殿下が先に自己紹介をすべきなのでは?レン皇女殿下は”参謀”なのですから。」

「ええっ!?さ、”参謀”!?」

「と言う事はまさかレン皇女殿下まで”特務部隊”の一員なのですか!?」

レンとセシリアの会話を聞いたエリオットは驚き、マキアスは信じられない表情でレンに訊ねた。

「やん♪セシリアお姉さんの自己紹介の時に驚かせようと思ってわざと黙っていたのに、アテが外れちゃったわね♪」

そして小悪魔な笑みを浮かべて答たレンの答えを聞いたその場にいる多くの者達は冷や汗をかいて脱力し

「わ、私達を驚かせる為だけにわざと黙っていたって……」

「悪趣味過ぎ。」

「ふふっ、レン皇女殿下はレグラムの時に続き、更なる”サプライズ”を私達に届けるつもりだったようですわね。」

「や~い、そっちの思い通りにはならなくて、残念だったね~。」

「口を謹んで下さい、ミリアムちゃん!」

「ハア………”殲滅天使”まで特務部隊の一員だなんて、あらゆる意味で不安になってきたわね……」

「”参謀”と言ったら、自軍を勝利させる為に色んな知恵を絞って、腹黒い事もする役割だろ?よりにもよって”殲滅天使”が”参謀”だなんて、”貴族派”もそうだが”革新派”も”あらゆる意味”で潰される事が確定したようなもんじゃねぇか……」

「ハハ……まさに”天職”と言ってもおかしくない役割だね。」

それぞれが脱力している中アリサとフィーはジト目でレンを見つめ、シャロンは苦笑し、勝ち誇った笑みを浮かべてレンを見つめて指摘したミリアムにクレア大尉は注意し、サラとトヴァル、オリヴァルト皇子はそれぞれ疲れた表情で呟いた。



「フフ………――――先程レン皇女殿下に軽くご紹介して頂いたセシリア・シルン将軍と申します。所属はメンフィル帝国軍シルヴァン皇帝親衛隊で、親衛隊を率いる将軍の一人を務めさせて頂いております。」

「ええっ!?しょ、”将軍”でしかも、現メンフィル皇帝の親衛隊を率いているなんて……!」

「”参謀”のレン皇女殿下を補佐すると言う事はセシリア将軍自身も相当な戦略家なのでしょうね。」

「レン皇女殿下。セシリア将軍は親衛隊を率いる将軍の一人と仰いましたが、他にもシルヴァン陛下の親衛隊を率いる将軍の方がいらっしゃるのでしょうか?」

セシリアの自己紹介を聞いたアリサは驚き、シャロンは静かな表情でセシリアを見つめ、ある事が気になったアルゼイド子爵はレンに訊ねた。

「ええ、勿論いるわよ。――――シルヴァンお兄様の親衛隊を率いる将軍は特別に三人いてね……その事からセシリアお姉さんを含めたシルヴァンお兄様の親衛隊を率いる将軍達は”皇帝三軍将”と呼ばれているわ。」

「”皇帝三軍将”……と言う事は現メンフィル皇帝の親衛隊を率いる将軍はセシリア将軍を含めて3人いるのだろうか?」

レンの説明を聞いたガイウスは考え込んだ後レンに訊ねた。

「ええ。数あるメンフィル皇族の親衛隊でもシルヴァンお兄様の親衛隊が一番大規模でね。その関係でシルヴァンお兄様の親衛隊を率いる将軍は3人いるのよ。で、セシリアお姉さんはその3人の将軍の中で”参謀”を担当しているのよ。」

「という事はセシリア将軍は現メンフィル皇帝の親衛隊の知恵袋か……」

「まさに”参謀”を務めるレン皇女殿下の補佐をするうってつけの人材ですね……」

「何でメンフィルって、そんなに人材豊富なんだよ~。」

「ハハ、しかも皇族自身もみんな、優秀と、冗談抜きの”最強”の国家なんだよね……」

レンの説明を聞いたトヴァルは真剣な表情で呟き、ラウラは静かな表情で呟き、ミリアムとオリヴァルト皇子はそれぞれ疲れた表情で呟いた。

「ちなみにセシリアお姉さんはリィンお兄さんとステラお姉さんを指導していた”担当教官”だったのよ♪」

「ええっ!?」

「という事はリィンさん達にとってセシリア将軍は私達”Ⅶ組”からすればサラ教官のような存在なのですか……」

セシリアとリィンとステラの関係を知ったエリオットは驚き、エマは複雑そうな表情でリィン達を見つめた。



「次はエリゼお姉さんの番よ♪」

「わかりました。――――改めて名乗らせて頂きます。リフィア皇女殿下御付きの専属侍女長にしてリィンの妹でもあるエリゼ・シュバルツァーと申します。私も”特務部隊”の一員で、兄様達と共に作戦行動を行いますが、特務部隊の任務が終わる期間――――エレボニアの内戦終結まではアルフィン皇女殿下の臨時専属侍女も務める事になっていますので、以後お見知りおきをお願いします。」

「へ…………」

「エリゼさんがアルフィン皇女殿下の臨時専属侍女って………一体どういう事なんですか?」

エリゼの自己紹介を聞いたマキアスは呆け、トワは戸惑いの表情でレンに訊ねた。

「アルフィン皇女は皇族なのだから、専属侍女の一人や二人、いて当然だし、アルフィン皇女も自分の世話をしてくれるメイドさんは初めて会う人より既に知っている人の方がいいでしょう?アルフィン皇女はエリゼお姉さんとも既に顔見知りだから、エリゼお姉さんを引き続きアルフィン皇女の臨時専属侍女に任命して、アルフィン皇女のお世話をしてもらう事にしたのよ。―――その方がアルフィン皇女も将来リィンお兄さんの正妻になるエリゼお姉さんと仲良くなれる機会もできるから、ありがたいでしょう?」

「そう言えばエリゼさんはリィンさんの”正妻”になる予定との事でしたね……」

「ハハ……確かにありがたい配慮なのだが、別の意味の心配が出て来たよ……」

「”正妻”に序列最下位の側室の世話をさせるなんて、アルフィン皇女に対する一種の嫌がらせにも見えるわね。」

「同感。将来の立場が圧倒的に上になる人にお世話してもらうなんて、アルフィン皇女が気後れするんじゃないの?」

レンの説明を聞いたエマは複雑そうな表情でエリゼを見つめ、オリヴァルト皇子は疲れた表情で呟き、呆れた表情で呟いたセリーヌの意見に続くようにフィーはジト目で答えた。

「うふふ、幾ら何でも勘ぐり過ぎよ。むしろエリゼお姉さんは将来自分達同様リィンお兄さんの妻になるアルフィン皇女とも仲良くしたいと思っているのよ。―――そうでしょう、エリゼお姉さん?」

「…………アルフィン皇女殿下が本当に兄様と結ばれる事を望まれるのならば、妻の序列等関係なく殿下とも親しくしたいとは思っています。」

「和解条約でリィンとアルフィン皇女の結婚が義務付けられているのに、よくそんな事が言えるよね~。」

「口を謹んで下さい、ミリアムちゃん!」

レンに促されて答えたエリゼの意志を知って疲れた表情で答えたミリアムにクレア大尉は声を上げて注意し

「それを聞けただけでも安心したよ………―――という訳でアルフィンの未来の為にも、是非アルフィンが本気で君に惚れるように頑張ってくれたまえ、リィン君♪」

「ええっ!?そ、そんな事を言われても、正直どうすればいいかわからないのですが………」

一方安堵の溜息を吐いたオリヴァルト皇子は笑顔を浮かべてリィンに頼み事をし、オリヴァルト皇子のリィンへの頼み事の内容を知ったその場にいる多くの者達が冷や汗をかいて脱力している中リィンは驚いた後疲れた表情で答えた。



「ア、アハハ………――――リィンお兄様の”パートナードラゴン”のセレーネ・L・アルフヘイムと申します。バリアハートの件はわたくしは気にしておりませんので、できればバリアハートの件は水に流して頂ければ幸いです。」

「”パートナードラゴン”………?一体何なんだ、その存在は……?」

「そ、それよりもド、”ドラゴン”って事はもしかしてその人は”竜”なんですか……!?」

セレーネの自己紹介を聞いたガイウスは不思議そうな表情で首を傾げ、ある事に気づいたエリオットは信じられない表情でセレーネを見つめ

「ええ。お察しの通りセレーネの正体は”竜”よ。」

「ええっ!?りゅ、”竜”!?どこからどう見ても、私達と同じ人間にしか見えないんですけど……」

「”竜”のような高次元の存在は”人”の姿を取る事ができると伝えられていますから、竜族であるセレーネさんが”人”の姿をしていてもおかしくはないのですが………」

「リィンの”パートナードラゴン”って言っていたけど、それって一体どういう意味なのかしら?口ぶりからするとリィンと何らかの契約を結んでいるように聞こえるのだけど……」

レンの答えを聞いて驚いているアリサに説明をしたエマは戸惑いの表情でセレーネを見つめ、セリーヌは目を細めてセレーネを見つめて問いかけた。



「はい。わたくしはリィンお兄様と”パートナー契約”を結んでいますから、わたくしは戦闘を含めた様々な面でリィンお兄様を支えるドラゴンです。」

「つまりエマとセリーヌみたいな関係?」

「正確に言えば違うでしょうけど、似たようなものでしょうね。それにしても”竜”と契約しているなんて、何でアタシ達が導く”起動者(ライザー)”に限って、次から次へと”規格外”な事実が判明するのよ………」

「セレーネさんの事を考えたらバリアハートでリィンさんが召喚した人達も相当な高次元の存在なのでしょうね………」

「ハハ…………」

セレーネの説明を聞いてある事を察したフィーの推測に答えたセリーヌは疲れた表情で溜息を吐き、不安そうな表情で呟いたエマの言葉を聞いたリィンは苦笑していた。

「”パートナードラゴン”………そう言えばミントもエステルの”パートナードラゴン”という存在だったな?」

「ええ………もしかしたら彼女はミントと同じ種族の竜なのかもしれないわね。」

一方ある事を思い出したトヴァルの言葉にサラは真剣な表情で考え込みながら頷き

「正確に言えば彼女はミント君とは異なる竜だが、二人の推測は概ね当たっているよ。」

「殿下はセレーネ嬢と面識があるのですか?」

二人の推測に同意したオリヴァルト皇子の答えを聞いてある事を察したアルゼイド子爵はオリヴァルト皇子に訊ねた。



「ああ。―――久しぶりだね、セレーネ君。以前会った時に比べると随分と見違えたが……君もミント君やツーヤ君のように”成竜”と化したのかい?」

「はい。お兄様達と一緒にメンフィル帝国に帰国した際に”成長”しましたわ。」

「そうか………それにしても君と言い、ミント君やツーヤ君と言い、みんなとてつもないスタイル抜群の美女ばかりに育ったじゃないか♪フフ、私も本気で私の”パートナードラゴン”が欲しくなってきたよ。勿論女の子限定だけどね♪」

「あたしどころか、ミントちゃんやセレーネにまで邪な目で見るなんて……後でミュラーさんとシェラさん、エステルさんにヨシュアさん、それとついでにカシウスさんに言いつけましょうか……?」

(さり気なくカシウス准将にまで言うなんて、相当怒っているのね……)

セレーネの答えを聞いた後酔いしれた様子で答えたオリヴァルト皇子の様子にその場にいる多くの者達は冷や汗をかいて脱力している中ツーヤは顔に青筋を立てて威圧を纏った笑顔を浮かべてオリヴァルト皇子を見つめ、ツーヤの様子にプリネは苦笑し

「ガクガクブルブル……ゴメンなさい、それだけはマジで勘弁してください。」

ツーヤに微笑まれたオリヴァルト皇子はある人物達の反応を思い浮かべると恐怖によって身体を震わせて謝罪し、オリヴァルト皇子の様子にその場にいる多くの者達は再び冷や汗をかいて脱力した。

「いや~、それにしてもリィン君は間違いなくゼムリア大陸の男達の中で一番の幸せ者だね♪何せエリゼ君や我が妹、セレーネ君という麗しい女性達に加えて他にも4人の麗しい女性達と結ばれる事になるのだからね♪」

「そ、それは………というか何故殿下が俺とセレーネが婚約関係である事をご存知なのですか……?」

そしてすぐに立ち直って笑顔を浮かべたオリヴァルト皇子の言葉に表情を引き攣らせたリィンだったがある事に気づき、疲れた表情でオリヴァルト皇子に訊ねた。

「フッ、それは”愛の伝道師”たる私の”勘”さ♪」

そして髪をかき上げて酔いしれた様子で答えたオリヴァルト皇子の答えにその場にいる多くの者達は冷や汗をかいて脱力した。

「意味不明だし。」

「フィ、フィーちゃん。」

我に返ってジト目で呟いたフィーの言葉を聞いたエマは冷や汗をかき

「クスクス…………オリビエお兄さんの言う通り、セレーネもリィンお兄さんの婚約者の一人で、序列は側室の1位よ♪」

「ええっ!?」

「という事はセレーネ殿がリィン特務准将殿の妻としての序列はエリゼ殿に次ぐ方なのですか………」

「………レン皇女殿下。”特務部隊”にリィン特務准将殿に加えて彼と婚約関係の女性達―――それも上位の序列の方達を配属した理由は将来結ばれる事が決まっているアルフィン皇女殿下とリィン特務准将殿達との親交を深める為でしょうか?」

レンの説明を聞いたアリサが驚いている中ある事に気づいたラウラは真剣な表情でセレーネを見つめ、アルゼイド子爵はレンに訊ねた。

「ま、それも理由の一つね。―――それじゃ、この調子でプリネお姉様達も軽くでいいから、自己紹介をお願いね。」

アルゼイド子爵の問いかけに頷いたレンはプリネ達に視線を向けた。


「わかったわ。――――初めまして。私の名はプリネ。メンフィル皇女プリネ・カリン・マーシルン。前メンフィル皇帝リウイ・マーシルンとペテレーネ・セラ神官長の娘にして、レンの姉です。以後お見知りおきを。」

「―――プリネ皇女殿下の親衛隊長兼専属侍女長を務めるツーヤ・A・ルクセンベール准将と申します。妹のセレーネ共々、よろしくお願いします。」

「ふええっ!?そ、その名前って確か……!」

「プ、”姫君の中の姫君(プリンセスオブプリンセス)”に”蒼黒の薔薇”じゃないか!?」

「あのプリネ皇女殿下まで”特務部隊”の一員だなんて……」

「貴女達があの………」

「………二人は有名なのか?」

プリネとツーヤの自己紹介を聞いたトワとマキアス、ジョルジュは驚き、ラウラは興味ありげな様子でプリネ達を見つめ、驚いているアリサ達の様子が気になったガイウスは不思議そうな表情で首を傾げてアリサ達に訊ねた。

「あ、当たり前だよ!プリネ皇女殿下はその異名通り容姿や性格、仕草を含めた”全て”がまさに”姫君”を示すようなお姫様として有名で、”蒼黒の薔薇”はプリネ皇女殿下の親衛隊長である事からリベールで有名なユリア・シュバルツ准佐と並ぶ女性騎士として有名で、ユリア准佐と合わせて”プリンセスナイツ”の異名で有名なんだよ!?」

「フッ、巷ではユリア准佐は”リベールの白き薔薇”、ツーヤ君は”メンフィルの黒き薔薇”とも呼ばれていて、二人ともとても凛々しい女性だから多くの女性達を虜にしているのさ♪」

「う”っ………オリヴァルト皇子、お願いしますから、その話を持ち出さないで下さいよ………」

「ア、アハハ……私達の噂は私達自身、正直誇張されたものだと思っていますから、できればあまり気にしないで頂けるとありがたいです。」

エリオットの説明に続くように静かな笑みを浮かべて答えたオリヴァルト皇子の答えを聞いたツーヤは唸り声を上げた後疲れた表情で指摘し、プリネは苦笑しながら答えた。

「そう言えばツーヤ准将はセレーネさんの姉君と仰いましたが………」

「まさかとは思うけどアンタも”竜”で、契約相手は”姫君の中の姫君(プリンセスオブプリンセス)”なのかしら?」

「ええ。あたしとセレーネは双子の姉妹ですよ。」

ある事に気づいたエマはツーヤとセレーネを見比べ、セリーヌの推測にツーヤは頷いて答えた。



「フッ、既に俺の事は知っているだろうが改めて名乗らせてもらう。――――プリネ皇女親衛隊副長、レオンハルト・ベルガー大佐だ。かつてはそこの”死線のクルーガー”と同じ結社”身喰らう蛇”に所属していたが、色々な理由があり、”身喰らう蛇”からは脱退した。よって、既に俺は”身喰らう蛇”とは何の関係もない。――――最もそれを信じるかどうかはお前達次第だがな。」

「ちなみに私達が呼んでいる”レーヴェ”様の名前は本名である『獅子(レオン)果敢(ハルト)』を愛称にした名前ですわ。」

「シャロン……」

レーヴェの自己紹介に続くようにシャロンがレーヴェの代わりに説明をし、シャロンの様子にアリサは複雑そうな表情をし

「……いささか不本意だが、”死線”を含めて俺の事をそう呼ぶ者達は多いな。まあ、お前たちも好きなように呼ぶがいい。」

「フン……少なくてもあたしはあの悪名高き”剣帝”が結社から抜けたなんて信じられないわね。結社とメンフィル。本当は”どちらの意図”で動いているのでしょうね。」

「お、おい、サラ。」

厳しい表情でレーヴェを睨みつけているサラの様子にトヴァルは冷や汗をかいた。

「やれやれ………どうやらその様子では2年前の件を随分と恨んでいるようだが………俺自身はあの件には直接関わっていないのだがな?」

「ああん!?ギルドを襲撃した連中を育てた張本人がぬけぬけとよくそんな事が言えるわね!?」

「お気持ちはわかりますが、今は落ち着いてください、サラさん!」

レーヴェの答えを聞いて怒りの表情でレーヴェを睨んで今にも攻撃しそうな雰囲気を悟ったクレア大尉はサラを諫めようとしていた。



「くふっ、結社から抜けた事を全然信じられていないね♪まあ、今までの事を考えたら当然だろうね。――――わたしの名前はエヴリーヌ。リウイお兄ちゃんたちの国―――メンフィルの客将。終わり。」

その様子に口元に笑みを浮かべて答えたエヴリーヌは簡単な自己紹介を行い、エヴリーヌの自己紹介の仕方にその場にいる多くの者達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

「もう少しまともな自己紹介はできないのですか、エヴリーヌお姉様……」

「まあ、エヴリーヌさんですし、仕方ないかと……」

疲れた表情で呟いたプリネにツーヤは苦笑しながら答え

「”殲滅天使”どころか”魔弓将”まで”特務部隊”の一員にするなんて、メンフィルはエレボニアとの戦争を和解した事で貴族連合軍を殲滅できなくなったから、和解条約を利用して貴族連合軍を殲滅しようとしているんじゃないの~?」

「同感。”殲滅の姉妹(ルイン・シスターズ)”を二人も投入するなんて、どう考えてもエレボニアに血の雨を降らせるためとしか思えない。」

「血の雨を降らせるって……」

「”殲滅の姉妹(ルイン・シスターズ)”……?」

「何なんだ、その物騒な姉妹の名前は……?」

ミリアムとフィーの話を聞いたジョルジュは不安そうな表情をし、ガイウスは不思議そうな表情で首を傾げ、マキアスは疲れた表情で自身の疑問を口にした。



「―――”殲滅の姉妹(ルイン・シスターズ)”。メンフィル軍の将の中でも最も好戦的かつ残虐な性格をしているメンフィルの”最凶の姉妹”ですわ。レン皇女殿下達が戦場に姿を現せば、レン皇女殿下達に討ち取られた者達の死体の血によって大地は真っ赤に染まるという噂ですわ。」

「うふふ、ちなみに姉妹(シスターズ)って言われている理由はレンがエヴリーヌお姉様とセオビットお姉様の事を”姉”呼ばわりしている事で他の人達が勝手にレン達が本当の姉妹だと思っているからだそうよ?」

シャロンがレン達の事を説明すると、レンがシャロンの説明を補足し

「死体の血で、大地が真っ赤に染まるって………」

「それと連中は人を殺す事を楽しんでいるって噂もあるぜ。」

シャロンの説明を聞いたアリサは不安そうな表情をし、トヴァルは厳しい表情である事をアリサ達に伝えた。

「うふふ、少なくてもレン達が人を殺す事を楽しんでいる事は本当の事よ?」

「ええっ!?」

「……失礼を承知で訊ねさせて頂きますが、何故レン皇女殿下達は人を殺す―――いえ、”命を奪う”という行為を楽しんでいるのですか?」

トヴァルの情報を肯定したレンの答えを聞いたトワは驚き、ラウラは真剣な表情でレンに問いかけた。



「くふっ♪それは”人を殺す事”がエヴリーヌ達にとっての”遊び”だからだよ♪」

「ひ、”人を殺す事が遊び”って……!」

不敵な笑みを浮かべたエヴリーヌの答えを聞いたアリサは信じられない表情をし

「クスクス……人を殺した時に感じる感触、殺された人達が浮かべる後悔や絶望の表情、そして殺された時にあげる悲鳴や断末魔を自分の手で生み出す事はレン達にとってはとっても面白い”遊び”なのよ♪―――特に今回の戦争はとっても楽しませてもらえたわ♪”狩る側”であった貴族連合軍が突然”狩られる側”になった事による絶望や後悔でとってもいい悲鳴をあげてくれたからね♪」

「レン!マーシルン(わたしたち)やメンフィルが誤解されるような発言は慎みなさい!」

「ヒッ!?」

「ッ……!?」

「ハハ………メンフィルとの戦争による犠牲者達の中でも君達を相手にしてしまった貴族連合軍の兵士達が一番憐れな最後だったろうね……」

「なるほどね………可憐な容姿でありながら、その残虐さ……まさに異名通り”殲滅天使”ね。」

「こうして実際に本人達と会って話してわかったけど、まさに正反対の性格をしている姉妹だね。」

凶悪な笑みを浮かべたレンの話を聞いたサフィナは声を上げてレンに注意し、エリオットは悲鳴を上げ、エマは息を呑み、オリヴァルト皇子は疲れた表情で呟き、セリーヌは厳しい表情でレンを見つめ、フィーはジト目で呟いた。

「………レン皇女殿下達が歩もうとされている道は”人の心”を捨てる”修羅”の道である事をご存知なのですか?」

するとその時アルゼイド子爵は真剣な表情でレンに問いかけた。



「”修羅”だなんて、大げさねぇ。レン達の殲滅対象はメンフィルに仇名す愚か者達や民達を害する”賊”なのだから、レン達は”殺されて当然の人達”を殲滅しているだけよ?幾ら何でも敵国の一般市民達まで無差別に殺すような”人でなし”な事はしていないわよ。」

「第一エヴリーヌは”魔神”だから、人の心とか関係ないし。」

「そういう意味ではありませんよ、エヴリーヌさん………」

アルゼイド子爵の問いかけにレンは呆れた表情で答え、エヴリーヌの答えにツーヤは疲れた表情で指摘した。

「”魔神”………?それは異世界のオレ達人間とは違う種族―――”闇夜の眷属”の種族の一種なのだろうか?」

「ちょっとだけ違うわね。正確に言えば”闇夜の眷属”は秩序を重んじる魔族や”表”の社会を追われてきた人達が自ら社会を形成した集団の事を言うから、メンフィルの民達の中にはガイウスお兄さん達と同じ”人間”もいるわよ?」

「ちなみに”魔族”は私達”闇夜の眷属”にとって最も侮辱的な言葉に当たるので、私達に対してその呼称で呼ばないように注意してください。」

「”闇夜の眷属”とは異種族の事ではなかったのですか………」

「………なるほどね。つまりアンタ達メンフィルは秩序を重んじる裏―――いえ、”闇の一族”なのね。」

「そんな”訳あり”ばかりの連中の集まった国が”表”の世界で堂々としているのだから、ある意味裏でコソコソと動いている結社よりも性質が悪い国家ね……」

「お、おい、サラ。幾ら何でも、それはさすがに言い過ぎだぞ……」

ガイウスの疑問に答えたレンの説明を聞いたクレア大尉は驚き、セリーヌは静かな表情で呟き、厳しい表情でレン達を見つめて呟いたサラの言葉を聞いたトヴァルは焦った様子で指摘した。



「で、さっきのガイウスお兄さんの質問である”魔神”だけど……”魔神”とは数多くいる魔族の中でも”最強”の種族で、”魔神”の中には”神”に匹敵する力を持つ人達もいるとの事よ?」

「ええっ!?か、”神”!?」

「まぞ―――いえ、”闇夜の眷属”の中でも”最強”の種族……それがエヴリーヌ殿と言う訳ですか……」

レンの説明を聞いたエリオットは驚き、ラウラは真剣な表情でエヴリーヌを見つめ

「クスクス……それと”魔神”一柱で一国を滅ぼす事もできると言われているわ。その事から、地方によっては”魔神”の事を”魔王”の呼称で恐れられている事もあるそうよ。」

「”魔王”ですか……」

「た、たった一人で一国を滅ぼすって……!」

「ひ、非常識な………」

「そしてそんなとんでもない存在が今回の内戦に介入してしまえば、貴族連合軍は……」

「間違いなく悲惨な事になるだろうね~。」

”魔神”の更なる情報を知ったエマは不安そうな表情をし、信じられない表情をしているトワに続くようにマキアスは疲れた表情で答え、不安そうな表情をしているジョルジュに続くようにミリアムは静かな表情で呟いた。



「うふふ、そんなに心配する必要はないわよ♪レン達”特務部隊”の目的はあくまで、アルフィン皇女―――”アルノール皇家”に両派閥を従わせて内戦を終結させる事だから、当然貴族連合軍―――領邦軍も従わせて正規軍と一緒に帝都(ヘイムダル)の奪還をさせる事も考えているから、貴族連合軍を”皆殺し”にするような事は考えていないわよ♪」

「ええっ!?き、貴族連合軍――――領邦軍を!?」

「しかも正規軍と一緒に帝都(ヘイムダル)の奪還をさせるのですか………確かに正規軍と領邦軍が協力して、帝都(ヘイムダル)の奪還をすれば、両派閥は派閥争いを止めた”証拠”として民達に示しやすいですが……」

「それ以前にどうやって領邦軍を従わせるつもりなのよ?」

レンの説明を聞いたアリサは驚き、シャロンは考え込みながら呟き、サラは真剣な表情でレンに訊ねた。

「それは”特務部隊”の今後の予定だから”今は”言えないわね♪今の”Ⅶ組”―――いえ、”トールズ士官学院”のみんなは”特務部隊”の指揮下じゃないのだから、指揮下にも入っていない人達に教える訳がないでしょう?」

「それは………」

「肝心な事は教えないなんて、もしかしてそれもわたし達が”特務部隊”の指揮下に入るように誘導する為?」

レンの正論に反論できないラウラが複雑そうな表情をしているとフィーはジト目でレンに訊ねた。

「クスクス、ご想像にお任せするわ。―――さてと。後は貴女だけよ、アルティナ。」

フィーの問いかけに対して小悪魔な笑みを浮かべて答えを誤魔化したレンはアルティナに視線を向けた。






 
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