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真田十勇士

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巻ノ九十五 天下の傾きその十二

「これからも」
「子をもうけていこうぞ」
「そうしますか」
「そして拙者に何かあればな」
「その時は」
「兄上を頼るかよき方を頼ってな」 
 そうしてというのだ。
「子供達を頼む」
「それでは」
「無論拙者も死ぬつもりはないが」
 それでもとだ、幸村は妻にさらに話した。
「それでもな」
「世は何があるかわからないので」
「それでじゃ」
「何かあれば」
「頼れる者に子を任せよ」
「そうした方はおられるでしょうか」
「直江殿とは知己であるがな」
 兼続、幸村は彼の名を出した。
「しかしな」
「それでもですか」
「兄上の他にもな」
「頼りになる方はですね」
「どなたかいれば有り難い」
「そう言われますか」
「そうもな、そうした方がおられれば」 
 幸村は袖の中で腕を組み妻に話した。
「よいのだが」
「どなたかおられれば」
「そう思う」
「何とかなって欲しいですね」
「そのこともな」
 夫婦で話した、幼い大助を共に見ながら。幸村は九度山に入ってから子宝に恵まれる様になっていた。しかしそれはそれで一つの悩みにぶつかっていた。


巻ノ九十五   完


                        2017・2・15 
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