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レインボークラウン

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第四百四十八話

                 第四百四十八話  イカ墨
 その日の夕食前にだ、華奈子と美奈子に二人の母親が実に楽し気に笑ってこんなことを言ってきた。
「今日は面白いスパゲティ作るわ」
「面白い?」
「面白いっていうと」
「イカの墨を使ったスパゲティよ」
「あっ、スーパーとかで売ってる」
「あの黒いソースね」 
 二人も聞いてすぐに察した。
「私達食べたことないけれど」
「あれをかけたスパゲティね」
「今晩はあのスパゲティなの」
「何かしらって思ったら」
「あんた達は食べてなかったと思うから」
 だからだというのだ。
「作るのよ」
「美味しいの?」
 華奈子は首を傾げさせて母親に尋ねた。
「あのスパゲティ」
「ええ、美味しいのよこれが」
「そうなの」
「だから楽しみにしていてね」
「ええと、真っ黒だから」
 美奈子はこの色のことから考えて言った。
「服とかに付かない様にしないと」
「墨やインクと同じと考えてね」
「やっぱりそうなのね」
「そうよ、食べる時はちゃんと服の前に布をかけてね」
 そうして墨が服に付かない様にしろというのだ。
「いいわね」
「わかったわ」
「じゃあそうするわね」
「そこもちゃんとして」
「食べるわ」
「大蒜と烏賊とトマトも入れるから」
 この三つももというのだ。
「面白い味になるわよ」
「けれど墨だから真っ黒で」
「どれも真っ黒になるわよね」
「勿論スパゲティも」
「写真とかで見たけれど」
「そうよ、全部真っ黒になるわ」
 このことは作る方も否定しなかった。
「そのことも覚えておいてね」
「そうしてなのね」
「これから作ってくれるのね」
「晩御飯になったら来なさい、他にも美味しいものを沢山作っておくからね」
「その美味しいもの何?」
「沢山って」
「サラダとカルイパッチョよ」
 この二つだというのだ、勿論御飯もある。二人は生まれてはじめてイカ墨のスパゲティも食べることになった。


第四百四十八話   完


                       2017・5・19 
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