真田十勇士
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巻ノ九十三 極意その十
「武芸でもな」
「十勇士達もですな」
「うむ、出来る」
十勇士達もというのだ。
「それもな」
「では」
「御主達はあさましくないしじゃ」
「泰平でもですか」
「名を挙げられる、儚むな」
「そうしてですな」
「今は生きよ、必ず時が来るわ」
我が子に言うのだった。
「よいな」
「はい、それでは」
「そしてこれからも修行は続けるな」
「学問も」
「そうするな」
「あの者達と共に」
それは続けていくというのだ。
「そうしていきます」
「それは何よりじゃ、そうして己を高めていくのじゃ」
「わかり申した」
「そうせよ、それでわしが聞いた話じゃが」
「何でしょうか」
「やはり大坂は茶々様を止められぬ様じゃな」
こちらの話もするのだった。
「どうにも」
「確かに。それは」
「その通りじゃな」
「はい、それがしもよく聞きますが」
「大野修理殿も片桐殿もな」
「どなたもですな」
「止められぬ」
茶々をというのだ。
「あのあまりにも激しいご気質をな」
「止められず」
「振り回されてばかりじゃ」
「特に大野殿がですな」
「あの御仁は特に茶々様の乳兄妹じゃからな」
「余計にですな」
「絆が深いだけにな」
それだけにというのだ。
「どうにもならぬ」
「そうですな、大坂ではです」
「その話はか」
「誰でも知っております」
「民達も言っておりますか」
「はい」
「そこまで知られておるか」
「そうです」
こう父に話した。
「そうなっております」
「では天下にもな」
「広く知られています」
「では大坂につく者もな」
「然程はですな」
「おらぬ、ましてや大名ならばじゃ」
「多くの家臣や民のこともあり」
「無体なことは出来ぬ」
「そうなりますか」
「茶々様をどうにも出来る様では」
「天下なぞですな」
「どうにも出来ぬわ、あのまま一大名としてあるべきじゃ」
今の豊臣家はというのだ。
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