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やはり俺がネイバーと戦うのは間違っているのだろうか

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3.由比ヶ浜結衣は木炭を生成する

「し、失礼しまーす。って、何でヒッキーと沖田さんがここにいるし!」
 俺が入部して初めての依頼主の邂逅初っぱなからこれである。まったく泣きたくなるね。あと、総司。腹抱えて笑うんじゃありません。俺のやる気ゲージがガリガリ削れていくだろう。
「そりゃここの部員だからな。それと、誰がヒッキーだ。俺は引き籠もりじゃねーよ」
「まあ、座ったらどうかしら。由比ヶ浜結衣さんよね?」
「あ、あたしのこと知ってるんだ」
 相変わらずだがすげーな。にわかには信じがたいがこいつもしかしたら全生徒記憶しようとしてんじゃねーの?姉への対抗意識強すぎだろ。いや、そもそも、
「その調子で行くと、全生徒の名前を記憶していそうだな」
 やべぇ、口に出てしまった。いったいどんな口撃がくるのやら。
「そんなことはないわ。あなたと知り合ったのを軽く後悔してるもの」
「何故俺限定?てか、俺はだめで総司はいいのかよ」
「少しは自分の胸に聞いてみなさい。それと沖田さんは鬼畜じゃないからいいのよ」
 え?何?そんな違いなの?そもそも、そんな厳しい訓練要求したか?
「していますよ。私もきついと思いますけど、そんな私でも引きますよ」
 あのー、総司さん。心読まないでくれます?
(八幡だって読めるじゃないですか)
 うお!?マジだ。すげー。新発見だ。
(だから言ったじゃないですか)
「あなたたち、そろそろ口に出して会話してくれないかしら。そんな秘匿回線みたいなことして」
「ちっ、せっかく口を開かなくても意志疎通できる手段を手に入れたと思ったんだがな」
 しかも、なにちゃっかり雪ノ下も俺の心読んでんの?俺の周りエスパー多すぎだろ。
「できる人間が限られるものはコミュニケーションとは呼ばないわ。却下ね」
「なんか…………楽しそうな部活だね」
「バカみたいな会話しながら勉強してるだけだけどな」
 そもそも、三人だけで教室でただ勉強してるだけのものを部活と定義して良いのだろうか?そんな意味を含めては皮肉を返すと、由比ヶ浜?はあわあわ慌てながら両手をブンブン振る。
「あ、いやなんていうかすごく自然だなって思っただけだからっ!ほら、そのー、ヒッキーもクラスにいるときと全然違うし。ちゃんと喋るんだーとか思って」
「だって喋る意味ないだろ?」
「さすが八幡さん!私たちに出来ないことを平然とやってのけるっ!そこにシビれる!あこがれるぅ!」
「…………これは重症ね。まったく、何でこんなのが私より優秀なのかしら」
 これには、雪ノ下も頭を悩ませたようにこめかみをおさえていた。どうしたんだろうか?頭痛か?
「つい脱線してしまったわね。それで由比ヶ浜さん、あなたは平塚先生に紹介されてここに来た、ということでいいのかしら?」
「うん。それで平塚先生から聞いたんだけど、ここは願いを叶えてくれるんだよね?」
「いいえ、それは違うわ」
 どこぞの超高校級の奇跡の人じみたことを連想させるようなことを雪ノ下の言葉の通り、ここは何でも屋や生徒会のようにただ助けて願いを叶えるのではない。
「ここは、人の自立を促すところよ」
 雪ノ下曰わく、つまりは人に魚を与えるか、魚の釣り方を教えるかの違いらしい。つまるところ、願いが叶うかはそいつ次第、というわけだ。
「そ、そっか。なんかかっこいいね」
 あ、八幡わかった。この子アホの子だ。間違いない。俺のサイドエフェクトがそう言っている。
「叶うかはあなた次第。でも、できる限りの手伝いはするわ」
「あ、あのね、クッキーを……」
 由比ヶ浜のその言葉と同時に雪ノ下がくいっと顎で廊下の方を指し示した。そして、総司からもテレパシー通信。なんだよ。
(この前ランク戦で勝った分、売店で金平糖買ってください)
「はあ、ちょっと売店で買ってくるわ」
「あっ!八幡さん!待ってくださいよ~」
 






「なんだこりゃ」
 目の前には木炭。あたふた後ろにはあたふたする由比ヶ浜。その横にこめかみをおさえている雪ノ下。俺の隣に木炭を見てどん引きしている総司。いったい何をしたらこんなカオスな空間が生まれるんだ。
 時間は数十分前まで遡る。 






 そして、遡ること数十分前。俺と総司は自販機で適当に話し込んでいると、雪ノ下から家庭科室へ来るようにとメールが届いた。
「クッキーを作るわよ」
 どうにも由比ヶ浜の依頼はクッキー作りらしい。
 なんでも、とある男子生徒に助けられたからお礼がしたいのだとか。だが、クッキーを作ったことないさらに言うなら料理をしたことがないため我らのところへ来たと。一波乱ある予感。つーか、オトモダチに教えてもらえよ。そう思ったのだが、
「あまり知られたくないし、こういうマジっぽい雰囲気、友達とは合わない、から」
 とのことだ。いや、マジっぽい雰囲気ってなんだよ。
 つーかそもそも、こんなコイバナを我らが奉仕部に持ってくる方が間違いだ。選択肢を間違っている。
 まずぼっちのスペシャリストこと俺。太刀川さんなみの戦闘バカでかつ俺にしか話しかけないためクラスぼっちの総司。そして、同じく瀟洒なクラスぼっちの雪ノ下。このぼっち三銃士がそろう。奉仕部にできること何て限られてる。
 二人だけで話してたからどんなに深刻な話かと思えばこれだよ。いや安心できたと行っても良いかもな。あれだろ?「あんたなら大丈夫だよ~」とか言っといて、フられたら「あの男マジサイテー」とか言っとけばいいんでしょ。こんなに推理できるとか八幡マジ天才。
 そんな思考してると、総司と雪ノ下が肩をすくめてため息をついていた。おいこらそこ。心を読むんじゃーない。
 しかし、それを見ていた由比ヶ浜は自分に向けられたものだと判断したらしい。スカートをぎゅっと握りしめ俯いてしまった。 
「あ、あははー、へ、変だよねー。あたしみたいなのがクッキーとか何乙女ってんだって感じだよねー」
「そうね、確かにあなたみたいな派手っぽい人がやるイメージではないわね」
「だ、だよねー。変だよねー」
 俯きながら。上目を使い不安そうな目で俺をみる。
 なんか、こいつ人に振り回されてる感じがする。自分の意見ではなく他人の意見にいつも乗っかってそう。
 他人の意見の尊重と言えばきれいだがこいつのはそうじゃない。他人に周りを円滑に回すために気を遣い、諍いが起こらないようにするために怖がっているだけだ。おそらく、俺の答えでこいつが雪ノ下のぱーふぇくと料理教室をするかが決まる。煽るか。
「………べつに、似合わないだとかきゃらじゃないだとか柄じゃないだとか、そんなの関係なしに興味ないだけだ」
「もっとひどいよ!ヒッキーマジあり得ない!あー腹立ってきた!あたしだってやればできる子なんだからね!」
 よし、作戦通り。煽れば乗ると思ったよ。
 俺の内心を知ってか総司が呆れるように笑っていた。さて、教えるのは雪ノ下にまかせて俺らは適当に過ごすかと思い、総司へ視線を動かす。だが、耳からの情報は常に入ってくるもので、エプロンまでつけられないと知ったときは背筋が凍った。






 そして現在に至る。まさか、砂糖と塩を間違えるとは思わなかった。その調理過程は化学の実験か何かかと思わせるには充分だった。
「わからないわ。何故あんなにミスを重ねられるの?」
「私、クッキーとか実物見るの久しぶりなんですけど、こんなに禍々しいものでしたっけ?」
「違うぞ、総司。これはクッキーじゃない別の物だ」
「ああ、木炭ですね!」
「違うし!」
 由比ヶ浜が否定するが、いやでもこれホームセンターとかと並べてあるやつと遜色ないぞ。
「見た目はあれだけど、食べられる物使ってるから大丈夫だよね!」
「そうね、ちょうど味見役もいるし」
「ははは!雪ノ下、お前にしてはえらく珍しい言い間違いだな!これは毒味というんだ!」
「毒じゃないし!…………………やっぱり、毒?」
 自分でも自信ないんじゃねーか。
 まあでも、引き受けちまった手前、
「食わねーわけには、いかんよなー」
 その言葉を最後に俺はクッキーを一つ取り、口に運ぶ。総司は八幡さん、ストップ!と静止を促しているが、ここで食わねーと、男じゃねぇ! 
 ジャリ!
 そんな食感を残し、薄れゆく俺の耳に最後に聞こえたのは、八幡さんが死んだ!という声だった。







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 設定②

 沖田総司

 ポジション:アタッカー

 トリガー構成
 メイン:孤月、韋駄天、旋空弧月、シールド
 サブ :FREE、グラスホッパー、シールド、バックワーム

 好きなもの:和菓子、甘味、八幡、チームメイト

 嫌いなもの:沢庵、八幡乃至チームメイトを侮辱するやつ

 サイドエフェクト:視神経強化
 目がよくなるのではなく、周りがスローに見える。でも、八幡のヒスった状態の方が凄い。

 この作品のメインヒロイン。ボーダー随一のスピードスター。以前生駒さんの旋空と総司どっちが速いか45m走をしたことがあるとかないとか。メインヒロイン張れるだけでも沖田さん大勝利! 
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