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『八神はやて』は舞い降りた

作者:羽田京
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最終章 ハッピーエンドを君に
  第53話 そして時は動き出す

 
前書き
・あと5話くらいで完結します。 

 
リアスは激怒した。必ず、かの 邪智暴虐 ( じゃちぼうぎゃく ) のロリを除かなければならぬと決意した。
リアスには吸血鬼がわからぬ。リアスは、純血の悪魔である。眷属を作り、彼らと共に暮らしてきた。けれども、男の娘に対しては、人一倍に敏感であった。


「わ、私のギャスパーが……」
「リアス、しっかりして!」


 乱入してきた眷属のあまりの変り様に、リアス・グレモリーは崩れ落ちた。隣では、姫島朱乃が支えている。
 塔城小猫は無言で涙を流していた。
 彼女たちと戦っていたリインフォースは、痛ましいものを見る目でみていた。戦闘を休止したのは、せめてもの情けだろうか。


「オラオラオラァ!」
「無駄無駄無駄無駄!」


 一方、ザフィーラとギャスパーは楽しそうに殴り合っていた。
 そこに昔日の面影はない。


「エヴァンジェリイイイイイイイイイイイイイイイィン!!」
「なんだ、グレモリー」
「貴女、なんてことをしてくれたのッ! というか何をしたのよ!」
「勘違いするなよ? ボウヤの方からが強くなりたいといったんだ。そして喜べ、ボウやは完全に神器を使いこなせるようになったんだぞ」


 褒めたたえるがよい。と偉そうにエヴァンジェリンは言い放った。
エヴァンジェリン・A・K・マクダヴェル。
600年の時を生きる真祖の吸血鬼的ロリババア。その実力はあるいは魔王を凌ぐかもしれない。
はやてとエヴァは、魔法少女修行の旅(異世界)で出会った。
異世界の麻帆良からはるばるやってきてギャスパーの特訓をしてくれていた。


その特訓の結果、ギャスパーの神器≪フォービトンバロールビュー≫は、禁手化、制御に成功した。
 ただし、亜種である≪世界停止の魔眼/ザ・ワールド≫だったが。


「だからって、だからって! なんであんなゴリマッチョになってるのよ!」
「あぁ、あれは禁手化の影響だ。もとに戻るぞ。残念だがな」
「それを聞いて安心したわ」


 リアスは、心底安堵した。だが、殴り合いではやはりザフィーラに一日の長がある。
 徐々にギャスパーは押されていった。
 いつの間にか、周囲の戦闘は停止しており、敵味方が固唾をのんで、二人の壮絶な殴り合いを見守る形になっている。
 と、そのときだった。


「ザ・ワールド!」


 ギャスパーが叫ぶ。


「そして時は動き出す」


 ぐはっ、という声が響く。リアスが、その場の全員が驚いた。なぜか一瞬のうちに、ボロボロになったザフィーラの姿があったのだから。


「申し訳……ありませ、ある、じ」
「ザフィーラ!!!」


 ザフィーラが戦闘不能状態に陥った。この事実に、三大勢力側は沸き立った。
 が、すぐにその希望は断たれる。


「フッ、だがやつは四天王の中では最弱――」
「はいはい回復回復」


 シャマルの回復魔法によってすぐに復活してしまったからだ。シグナムやヴィータも回復している。
 セリフを途中で遮られたはやては、悲しそうな顔をしていた。いや、最弱呼ばわりされたザフィーラの方が、もっと悲しそうな顔をしていた。
 はやてが慌てて慰めている。と、そのときだった――


「ッ!? シャマルッ!!」
「えっ」


 ――――突然転移してきたオーディンが、シャマルを奇襲して倒してしまった。


 これは、チャンスだ。こちらは、もうすぐ援軍がくる。地力は、所詮テロリストに過ぎない禍の団よりも上だ。持久戦での分はこちらにある。
 主力だった旧魔王派は粗方倒してしまったし。シャルバ・ベルゼブブとかいう大物もいたが、本気を出したお兄さまによって一蹴されていた。
 力を解放すると一気に強くなるとか、かっこいいわよね。


「フゥーッハハハハハハハハ、ザフィーラに続きシャマルもやられたか。だが、まだだ。まだ終わらんよ」


 "エル・プサイ・コングルゥ” とかなんだかよく分からない決めポーズをしつつ、不敵な表情を浮かべたはやてが不気味だった。
 リインフォースはやっぱり死んだ魚のような目をしていた。





「カモン、アーシアああああああああッ!」
「呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃーん」


 それは唐突だった。
 はやてが叫ぶとアーシアが転移してきた。
 空気が凍る。ネタがすべったのもあるが、アーシアの登場はそれほどまでに衝撃だった。


「あ、アーシア……? 本物? いえ、なんではやて側に」
「愛ゆえに!」

 言葉に詰まりながらリアスが詰め寄るも、”愛なら仕方ないね” とアーシアはとぼけているのか本気なのかわからない返事をした。
 とりあえず、元気そうだった。


「ちょっと回復しますね」
「む、感謝する」
「ありがとう」
「しまった!」

 
 アーシアの神器によって、ザフィーラとシャマルが回復された。
 ハーはっはっはっは、と高笑いをあげるはやてを憎々し気に見つめる。


「ふう、いいお仕事しました。というわけで、報酬期待していますね!」
「え」


 一転、はやてはひきつった笑いを浮かべた。
 "報酬とか聞いていない" と叫ぶはやてを尻目に、勝負下着がどうとか女の子がいいとか嬉しそうに語るアーシア。
 彼女をみてはやての顔はますます引きつっていく。
 勝手に報酬を決めたリインフォースは、内心ほくそえんでいた。
 最近、困り顔のマスターを見るのが好きになっていた。
 実は、彼女はSだったのだ。後日恥ずかしそうに告白した彼女に対してはやては涙したという。


「さて、これでこちらの優位は絶対的になったな。それにしても、エヴァ、キミが敵に回るなんて、どういつつもりだい?」
「……はやて、お前には感謝している。吸血鬼にされ右も左もわからない私を救ってくれたのはお前たちだったからな」
「だったら、なんで敵対しているんだい?」
「『誇りある悪』として、そして……『家族』として、道を踏み外そうとするのなら止めなければなるまい」
「ふーん、まあ、エヴァは確かに強いけどさ」

 
 はやては "本気でボクに敵うつもりかい?" と余裕の表情を崩さない。
 確かにエヴァはバグキャラだが、勝てない相手ではない。


「確かに私では敵わないだろうな。私だけならな」
「……まさか」


 ここにきて思い至った。エヴァが単独できているわけがない。
 彼女がいるということは、そのパートナーも来ているはずだ。
 もちろん、チャチャマルやチャチャゼロも厄介だがそれ以上に――
 

「魔法少女ミルたん、参上だにょ」


 突然、空間を切り裂いて、巨漢が現れた。そう、この漢女こそが、ミルたん。
 その威容に辺りは静まり返った。
 サーゼクスやグレモリー眷属は文化祭のときを思い出していた。
 インパクトが強すぎたので、よく覚えている。


「やはり、そうきたか――速攻魔法発動! ラグナロク!」


 はやては、苦虫を噛み潰したような顔をする。よりによって一番戦いたくない相手がきた。
 試しに、先手を打って、極大魔法を放つ。はやては思う。厄介だ。同じ魔法少女道を極めんとする同士として、異世界を旅した仲間として、そして何より――


「正義の魔法少女として見逃せないにょ」


 ――ラグナロク、はやての手加減抜きの極大砲撃魔法を片手で握りつぶす、その実力が厄介だった。


「だが、時間稼ぎは終わった」


 その言葉ともに、はやての隣に転移する影があった。現れたのは、曹操。その手には、サマエルがある。


「はやて、待たせてすまない。準備が整った」
「そうかい。では、お披露目と行こうか――――出でよ、シェンロン!」
「なにぃ!?」


 兵藤一誠は戦慄した。ドラグ・ソボールの "あの" 神龍が現れるというのか!
 そして、降臨した。どきどきしながら見上げる。その姿はまさに――――


「いや、グレートレッドだから」

 
 ヴィータの突っ込みがむなしく響いた。 
 

 
後書き
 
・リアスは激怒した
メロスは激怒した。必ず、かの 邪智暴虐 ( じゃちぼうぎゃく ) の王を除かなければならぬと決意した。メロスには政治がわからぬ。メロスは、村の牧人である。笛を吹き羊と遊んで暮して来た。けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。走れメロス。

・エル・プサイ・コングルゥ
初見でトゥルーエンドに行った人はリアル落とし神だと思います。シュタインズ・ゲート。


・リインフォース
虐げられし融合機がSに目覚めたようです。


・速攻魔法発動
ミルたんにダイレクトアタック!

・ミルたん
文化祭以来の登場。はやてと一緒に魔法少女になろうと涙ぐましい努力をしていました。
その結果、ついに念願の魔法少女になりました。
カレイドなんちゃらさん、魔法のステッキさんは涙を流して喜んでくれたようです。


・シェンロン
ドラゴンボール的なあれ。
 
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