艦隊これくしょん~男艦娘 木曾~
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第十八話
前書き
どうも、最近になって、青葉が気になり始めてきました。なお、一位は不動ですが。
俺はすぐさま壁の方向へと向き直した。そして目を閉じて、さっき見た光景を忘れようとしていた。
「いやいや、別に見られても減るもんじゃねぇし。こんな不良の事故で怒らねぇから。」
イヤ、コッチガ目ノヤリバニ困ルノデスガ。
「むしろラッキーだろ?こんなに合法的に女の子の裸見れたんだからさ。」
オマエハソレデイイノカヨ。
俺は思わずカタコトになっていた思考回路をなんとか振り払う。そして、深呼吸。
「つーか、むしろ見るか?ホレホレ?」
「……お前、それ他の奴にもしてんのか?」
流石に自分の仲間が痴女だったら一回考え直さねぇとと思った。
「いや全然?むしろ見せる様なヤローも居ねぇし。」
気まぐれだよ、と木曾は笑った。俺は笑えなかった。
……気まぐれだったら、今ここで俺はぶっ飛ばされてたかも知れねぇってことじゃね?
そんな俺の心配を他所に、木曾は身体を洗い始めた。
…………トシゴロノオンナノコノシャワーシーン…………。
ってアホかボケェ!!
俺はそう思いながら自分の顔を両手で挟むように叩いた。なかなか痛い。そのまま悶々としていること五分。
「うーい、入るぜー。」
どうやら身体を洗い終わった木曾は湯船に入ってきた――俺の目の前に。
「いやお前マジかよ!なんでわざわざ男の前に入るんだよ!」
「あー、スマンスマン。他の奴らと同じ感覚だったわ。」
―と言うわけで、俺達は一緒の湯船に背中あわせで入っていると言うわけだ。たかがこれだけのことを話すのに大分時間使ったな。結論としては、俺は絶対悪くない。
「んー?そりゃあ偶然だろ?」
木曾は俺の質問(前回の冒頭でのもの。)に答えた。いや、そんなことは分かってるけどさ。
「俺はてっきりお待ちがとっくに入渠してると思ってきたからな。そのためにわざわざ時間ずらした訳だし。」
俺はそこで一息入れて、再び話し始めた。
「んで、お前はなんでこんな夜遅くに入渠してるんだ?」
俺がそう聞くと、木曾は間髪いれずに答えた。
「そりゃ、さっきまで訓練してたからな。」
え?
「まて、こんな夜遅くまでか?」
俺は思わず聞き返した。確か、こいつは食堂でさっさと飯を食って……あのときが一八三〇位だったから……五時間も?
「まぁ、毎日のようにしてるから、たいしてキツくもないけどな。」
「…………。」
そのとき、俺は納得した。
俺は今日……いや、もう昨日か。昨日の出撃での木曾の活躍を見て、こいつ、天才なんじゃねぇかと思ってた。
だけど、この話を聞いて理解した。
「お前…………バカだろ。」
こいつがただのバカだって事に。
「ん、よく分かったな。そうだよ、俺は大バカ野郎だよ。」
溜息をつきながら木曾は言った。
「何に駆られてだよ。理由は有るだろ?」
『どんな奴の行動にも理由がある。分からない時はきっちり聞いてみろ。』
中学校の時のバスケ部の顧問の先生が言ってた台詞だ。
だから俺は何か疑問があったら、必ず質問することにしている。今回もそうだ。
「んー………普通に教えるのも恥ずかしいな。」
いやいや、裸見られたんだから、これ以上恥ずかしいことなんてねぇだろ―俺はそう思った。
まぁ、木曾だししゃーないか。
「そうだな、これから一週間で調べてみろよ。人に聞くなりなんなりしてさ。」
木曾は俺の肩に手を置いた。そして、そのまま立ち上がった。
「あと、お前ももう上がっちまえ。もう多分大丈夫だから。」
木曾はそのまま脱衣場に向かって歩いていった。
「あーあとさ。」
木曾は立ち止まってこちらを振り返った。
「お前なかなか(自主規制)だな。」
最後にとんでもない台詞を残して上がっていった。
「………あいつ、本当は男なんじゃね?」
なんか、ここまであいつと話している感覚が、悠人や拓海と話している感覚だった。
……まぁ、身体は完全に女の子なんですが。
「…………。」
これからしばらく木曾を見るたびに思い出しちゃうな……。
うん、耐えよう。
「しかし、木曾の昔ばなしね……。誰に聞こうかな………。」
取り合えず、青葉と提督、後は明石さん辺りかな?
「おーい、もう出るから来ていいぞー。」
脱衣場から木曾が声をかけてきた。
「……いいか?そこから出てろよ?その中に居るなよ?」
俺は念を押して、風呂から上がった。
―五分後―
「ん、上がったか。」
外に出ると、木曾は律儀に待っていた。
「おう。しかし、木曾は毎日この時間まで起きてるのか?」
「ああ。最近は〇一三〇位に寝てるな。」
うーん、年ごろの女の子としてその睡眠時間は良いのだろうか?
「まぁ、よっぽどの事がない限り俺達艦娘が不健康になることはねぇからな。」
そう、これもどうしてか分からないのだが、艦娘と言うのは極端に言えば寝なくても良いのだ。
まぁ、人だった頃からの習慣みたいなものがあるから、基本的には寝る訳だけど。
「学生時代だったらどれだけ羨ましい事か。寝なくても良いなら夜通し遊ぶのに。」
ここに来てからは、睡眠というものがどれだけ有り難いものなのかよく分かったから、毎日ちゃんと寝ている。
毎朝〇五三〇起きだけど。
「んじゃ、そろそろ寝るかな。」
「おう、おやすみ。」
木曾は、そう言って自分の部屋の方向に歩き始めた。
「(ボソッ)。」
「ん?なんか言ったか?」
「いや?それじゃ、おやすみー。」
木曾は廊下の角を曲がって行った。
「…………。」
うん、今木曽と話している間、ずっと思い出しそうになってるのを堪えてた。
「あーあ、こりゃしばらくしんどそうだな………ま、そのとき考えればいっか。」
俺はそう言って、自分の部屋へ向けて歩き出した。
―この事件の事が吹き飛ぶようなものを見るとは知らずに。
後書き
読んでくれてありがとうございます。そろそろ別の作業の収録を再開したいなー、と思いつつ、そんな時間がどこにもなくって辛いです。一日が四八時間位ほしい。
それでは、また次回。
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