魔法の調味料
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第一章
魔法の香辛料
連合の一国パラグアイのイソルダ星系に住むブラジル料理のシェフバンド=エルチェは実に研究熱心な男だ。
ブラジル料理だけでなく他の料理も作ってみて店の者に食べてみたりしている。
「今度はですか」
「ああ、ハンバーガー作ったみた」
エルチェはウェイターの一人ロベルト=リベリオに話した。その恰幅のいい口髭の顔を真剣なものにさせて。髪はパーマで肌は浅黒い。背は二メートルある。同じ位の背だが赤髪で緑の目ですらりとしたアフリカ系のリベリオとは正反対と言える感じだ。
「アメリカのな」
「間にパイナップル挟んでますね」
「それもな」
「やってみたんですね」
「アメリカのフロリダ星系風のだ」
ハンバーガーだというのだ。
「どうだ?」
「はい、いけます」
実際に手に取って食べてからだ、リベリオは答えた。
「これは」
「そうか、いけるか」
「それでこのハンバーガーをですか」
「店の新商品として出すか」
「ブラジル風にアレンジしてですね」
「そう思うがどうだ」
エルチェはリベリオにあらためて問うた。
「ハンバーガーもな」
「いいですね、それも」
「それじゃあもっと研究していくな」
「はい、前は餃子でしたね」
中華料理の代表格の料理の一つだ。
「水餃子でしたね」
「あれをアレンジしたな」
「はい、売れてますね」
「うちはブラジル料理だがな」
「常に進化する店ですね」
「俺はそうした料理を目指してるんだ」
求道を見せた、閉店後のひっそりとした店の中で。もう客達はおらず店に残っているのは彼とリベリオだけになっている中で。
「いいと思ったものは何でも取り入れる」
「どの国のどんな料理でもですね」
「ブラジル料理に取り入れるんだ」
「それがこのお店ですね」
「まあ俺はこの国で生まれ育ってるがな」
ここではだ、エルチェは少し笑った。椅子は全てテーブルの上に上げられて奇麗に掃除された店の中で。
「ブラジル料理好きだからな」
「それで高校を卒業してすぐにでしたね」
「就職してな」
言うまでもなくブラジル料理の店にだ。
「独立してだ」
「こうしてですね」
「いつも研究しているんだ」
「どんな国の料理もいいと思ったら入れる」
「当然既存の料理も研究してるだろ」
「常によりよき味ですね」
「そうだ、調味料一つを取ってもな」
味付けをするそれもというのだ。
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