やはり俺がネイバーと戦うのは間違っているのだろうか
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1.かくして比企谷隊は予期もせずそろってしまう
高校生活を振り返って
二年F組 比企谷八幡
青春とは嘘であり悪である。青春を謳歌せし者達は常に自己と周囲を欺き、自らを取り巻く環境のすべてを肯定的にとらえる。
彼らは青春の2文字の前ならばどんな一般的な解釈も社会通念もねじ曲げてみせる。
彼らにかかれば嘘も秘密も罪科も失敗も青春のスパイスでしかないのだ。
仮に失敗することが青春の証しであるのなら、友達作りに失敗した人間もまた青春のど真ん中でなければおかしいではないか。
しかし彼らはそれを認めないだろう。すべては彼らのご都合主義でしかない。
結論を言おう。青春を楽しむ愚か者ども、
砕け散れ。
俺の書いた作文を現国担当の平塚先生は大声をだし読み上げた。そしてその額には今にも青筋が出てきそうな勢いだ。
「なあ、比企谷。私の出した課題の内容は何だった」
「確か、高校生活を振り返って、とか言う物だったと記憶していますが」
もしかして、文章が拙すぎただろうか。確かに学年次席がこんな文章書いてたら駄目だと言うものだろう。センスに走りすぎてしまった。
「なのに何故こんな犯行声明のような物を書き上げてくるのだ。テロリストにでもなるつもりか」
「はあ、別段なるつもりはありませんが」
あれ?おかしいな。内容を全否定されたような気がするぞ。そこまで的外れなこと書いてないだろ。
「君は、死んだ魚のような目をしているな」
「DHAがそんなに豊富そうっすか。賢そうッスね」
ま、現に学年次席なわけだが。
「まじめに聞け」
キッと眼孔を鋭くし、睨んでくるが、猫が威嚇している程度にしか見えない。寧ろ忍田さんがキレた時の方が怖い。
「俺はちゃんと高校生活を振り返ってますよ。近頃の高校生はだいたいこんな感じじゃないですか」
「私の知る限り、君も含め二人しか知らないよ」
先生がそういうと、ちょうど職員室の後ろのドアが開いた。失礼しますという声と同時に入って来た人物は俺もよく知っている人物だった。
「あれ?八幡さんじゃないですか」
俺を学校でこう呼ぶ人物は一人しかいない。沖田総司。俺の幼なじみで、我が比企谷隊のメンバーだ。
ちなみに言うと、あの新撰組の沖田総司とは何にも関係ない。あと女だ。女だ!大切なことなので二回言いました!
「八幡さんもそれですか?お互い相変わらずみたいですね」
「てことは、おまえもか」
「そういうこと。で、平塚先生。やはり文章が拙かったでしょうか?」
「………はあ、何故君たちが主席と次席を取れているのかわからないよ」
高校生活を振り返って
二年F組 沖田総司
特筆することはないんですけど、私の吐血設定ってこっちではどう言う扱いになってるんですかね?
「何故こんなメメタァな作文を書いた!」
「いや、これこそが沖田さんのアイデンティティですし」
いや、総司さんや。もう少し課題内容にふれようぜ。
ちなみにまあ、あった方が面白そうなためあるそうです。ネタでしか使われないだろうけど。
「いや、もう少し他に書きようがあったろう、ということだ。それにもっと内面的な振り返りではなくてだな」
「ならそうと、初めから言ってください。これは先生の明らかな伝達ミスであってですね」
「小僧、屁理屈を言うな」
「小僧って、確かに先生からすれば俺は小僧ですけど」
八幡さん、それはタブー。という声が聞こえるも時はすでに遅し。先生の拳は俺の顔面をスレスレで通り過ぎっていった。だが、これなら目を瞑っていても避けられるな。そもそも当てる気がないみたいだしな。
「次は当てるぞ」
無理だろ、と言おうとしたが、それを言うとさらにめんどくさくなりそうなので口を閉じた。
「とにかくだ。作文は書き直しだ」
「わかりました。では俺らは帰り(ry」
「それと、君たちには罰として奉仕活動をしてもらう」
『は?』
「先に行っておくが君たちに拒否権はない。では着いてきてくれたまえ」
「……………はあ、やれやれだ」
俺はそう溜息を吐きながらも先生の後を追った。
そうして先生について行くこと数分。特別棟にある空き教室で先生は止まった。
「なあ、総司。俺すごくいやな予感がする」
「主に八幡さんのせいでじゃないですかー」
「お前もあんな作文を書いたんだから同罪だろ」
「いやそういう意味じゃなくてサイドエフェクトのほうですよ」
はい論破!ダメだ。反論できねぇ。何で俺のサイドエフェクトはこんな働き勝たしてんだよ。本業は全く別だろ。これが発現してからずっとこんなことに巻き込まれてきたような気がする。
俺らがこんなやりとりしているうちに先生は教室の中に入った。
その教室にはあいつがいた。
「雪ノ下入るぞ」
「先生、入るときはノックをとお願いしたはずですが?」
「君はそうやって返事をしたためしがないじゃないか」
「それは先生が返事をする前に入ってくるんですよ。はあ、まあいいですけど」
彼女は雪ノ下雪乃。俺たちは彼女を知っている。
「あら、比企谷くんに沖田さんじゃない。どうしてこんなところに?おおかたの見当はつくけれど」
彼女は我々比企谷隊のメンバーであり、俺の弟子でもある。本人は総司の弟子と言い張って聞かないが。
「何だね?君たちは知り合いなのか」
「まあ、はい。そんな感じです」
仲間と言い換えてもいいのかもしれないが、平塚先生がいるここだと雪ノ下が早口をまくし立て暴走するからな。
「なら、雪ノ下。私の依頼だが、わかるな」
「……あなたたち、本気であれを出したの?」
信じられない、というような目で俺らをみる。そういえばこいつも作文の内容を改めた方がいいと言ってたな。何でだろ?
「…………先生。申し訳ございませんが、比企谷君たちの更正の依頼は受けられません」
「ほう。さも雪ノ下でも怖い物はあるか」
「……先生。私はやれることはやってきたつもりです。ですが無理な物は無理なんです。バカは死ななきゃ治りません」
よって、必然的に無理です。と雪ノ下は付け加えた。え?何で俺たちバカ呼ばわりされたの?ひどくね。
「おい雪ノ下。総司はともかく俺が死なねーような化け物扱いやめろ」
俺は至って普通の一般の高校生だ。たかが一、二回生き返っただけだろ?
「ならせめて手元に置くだけでもだめか?」
「そうですね。わかりました。それなら受けましょう」
「そうか、なら後は任せるぞ。雪ノ下」
そういって先生は出て行った。一応、気配を探ってみるが教室の外で立ち聞きなどということはないようだ。
「それにしても、雪ノ下お前放課後はここにいたんだな」
「勉強場所にうってつけなのよ。それにしても、そんなにあなたはボーダーだとバレたくないのかしら」
「ああ。考えてもみろ俺みたいなのがボーダー、しかもA級で、あの嵐山隊より高い順位の隊の隊長、だなんなてバレてみろ。闇討ちにあうぞ」
俺たち比企谷隊は全員、自分がボーダーだということを一部の先生にしか話していない。よって、生徒はもちろん、生徒指導のポストに収まってる平塚先生でさえも知らない事実だ。二人は大丈夫だろう。顔がいいからな。俺だと、この目が存在をダメにしているからな。
「大丈夫ですよ。もしそんなことになったら、最強無敵の沖田さんにお任せです!」
「何故かしら、仕掛けた側が何人いても瞬殺される未来が見えるわ」
雪ノ下がこめかみを抑えながらぼやいた。お前、未来視のサイドエフェクトにでも目覚めたんじゃねーの。
「まあ、いい。それよりもここ何部なんだ?奉仕活動がどうこうって言ってたけど」
「そのまんまよ。奉仕部というの。基本依頼を待つスタイルよ」
「なるほど」
結局、今日は依頼は無く。防衛任務ギリギリまで、居残りそれから三人で本部へ向かった。
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