IS~夢を追い求める者~
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最終章:夢を追い続けて
第48話「“対話”」
前書き
―――見てみたくはないか?凡才が天才を超える瞬間を。
...と言う訳で最終章です。転生者関連でのやる事は終わったので、最後の修正です。
=out side=
「...やはり無理、か。」
「このままでは授業もできませんね...。」
学園にあるISの前で、千冬と真耶はそう呟く。
桜たちの世界に対する宣戦布告の後、結局学園は臨時休校。
教員たちで対処に動いていた。
「専用機持ちはどうなんだ?」
「....何人かは動かせますが、全員ではありません。」
「...ISに対する印象か...。動かしているのは?」
「一年の篠咲君と篠咲さん、それと更識さんだけです。他の方は...なんというか、動かせそうで動かせないと言った、一押しが足りない状態のようです。」
元々“翼”や“相棒”と言った印象でISを使っていた秋十とマドカ、簪は動かせるが、道具とは思っていなかったものの、あまりそう言った印象ではなかった他の者は、後一押しが足りないかのように動かせないらしい。
「...一度、一年の専用機持ちと生徒会長をアリーナに全員集めてくれ。」
「分かりました。」
千冬が真耶にそう指示を出し、真耶は駆けだす。
「飽くまで自由に羽ばたくための“翼”。...ISそのものに気に入られない限り、乗れないと言うのなら、私が後押ししてやるか。」
一人残った千冬は、一足先にアリーナに向かいつつ、そう呟く。
「勝手に全てを背負い込むなど、させんぞ馬鹿者共が...。」
二人の幼馴染として、千冬は止めようと決意を新たにした。
「集まったか。」
「...専用機持ちを集めてどうするつもりなの?冬姉。」
一夏を除いた専用機持ち全員を千冬は見渡す。
そこへ、なぜ集めたのかマドカが聞く。
「今、世界中はパニックに陥っており、それに付け込んで悪事を起こす輩も増えるだろう。そして、女尊男卑の風潮を生み出したISを恨む者が、このIS学園を攻めてくるかもしれん。」
「...ありえる話ですね。実際、更識でもそういった怪しい動きは捉えています。」
混乱に乗じて悪事を為す輩が出てくると、千冬は前置きを言う。
「そのため、防衛のためも兼ねて、お前たちにISを動かせるように....いや、ISで羽ばたけるようになってもらう。」
「...なるほどね。」
言い直した千冬に、マドカは言わんとしている事を理解した。
「防衛も“兼ねて”...ね。私と秋兄、簪以外は動かせそうで動かせなかった。...“対話”させるために皆を連れてきたんでしょ?」
「...ばれていたか。その通りだ。元々専用機を持っている者は何かしらISに思い入れがある。大抵は“相棒”と言った風にな。だが、それでもお前たちが動かせそうで動かせないのは、未だにISを道具としての相棒として思っていないからだ。」
「道具として...ですか。」
思い返してみれば、ISは飽くまで乗り物だと思っていたと、セシリアは呟く。
「お前たちは、ISにとって“乗り手”としては信頼に足るものの、“担い手”としては一つ欠けている。それが今言った事だ。先日束が言っていたように、ISは宇宙に羽ばたくための“翼”でしかない。」
「私たちの、無意識下におけるISに対する認識を変えろ...という訳ですか。」
「そう言う事になるな。」
楯無の言葉を千冬は肯定する。
だが、それは言葉にするのなら簡単だが、実際は難しい事だ。
無意識下...それはただ意識して直そうとしても直せないものだ。
「何もすぐに変えろとか、宇宙に羽ばたく事を強制する訳ではない。道具として扱わず、“翼”や“相棒”として接するという覚悟を見せればいい。」
「覚悟...ですか。」
「まぁ、一言で言えば...お前たちは自分の専用機を“説得”しろ。それだけだ。」
ISにも意志があり、それが搭乗者を拒むのならば...和解すればいい。
そう言外に千冬は言った。
「秋十、マドカ。エーベルヴァインを頼む。私はあいつらを見ておく。」
「分かった、千冬姉。」
「...それにしても、今はプライベートになるの?普通に接してるけど...。」
「このような状況だ。気にしてられん。」
精神的に不安定なユーリは秋十達に任せられ、千冬は他の者を見ておく事にした。
「ユーリ...大丈夫?」
「...大丈夫...です。IS学園が危ない事は分かっていますから、皆さんを信じましょう。」
「そうじゃなくて!ユーリは...ユーリ自身は大丈夫なのか聞いてるの!」
普段の様子とは打って変わり、暗い雰囲気なユーリに簪はそういう。
友人として、心配しているのだ。
「...やっぱり桜さんがいなくなった事が響いているか...。」
「それだけじゃないよ。桜さんが束さんと一緒に世界中に宣戦布告...つまり、どうであれ形式上、桜さんは私たちを“裏切った”事になる。それが一番の原因だろうね。」
「なるほどな...。」
何か自分たちの知らない所で企んでいる。
そうわかってはいるのだが、それでも“裏切られた”事にユーリは耐えられないのだと、秋十は納得する。
「...俺には励ます事は無理だな...。俺とユーリでは、桜さんに抱いている感情は似ているようで全然違う。」
「...そうだね...。」
二人共桜に助けられた。
だが、性別の違いが抱いた感情を別のベクトルへと派生させた。
秋十とユーリ、“尊敬”と“恋心”では全く違うのだ。
それが理解できてしまったからこそ、無闇に慰める事はできないと、秋十は理解した。
「千冬姉に任された手前悪いが、俺が傍にいても意味がない。ここはマドカと簪に任せるよ。女性同士の方がいくらか気分はマシだろう。」
「秋兄はどうするの?」
「千冬姉と一緒に、皆を手助けしてみる。」
自分にできる事をやる。そう言って秋十は千冬達の方へと行った。
「....“説得”と言われても、何をすれば...。」
「まぁ、一重にそう言われてもわからないよな。」
「あ、秋十!?いつの間に...。」
まず手始めに、秋十は箒の所へと生き、手助けする事にした。
「箒はこういうのは苦手そうだからな。」
「む...確かにそうだが...。」
「そこまで難しく考えなくていいぞ。...箒、お前は紅椿を以って何を為したい?それをありのまま伝えればいいんだ。後は、共に歩んで、羽ばたいてくれるかだ。」
「何を為したいか....か。」
そう呟くと、箒は少し考え込んでから、紅椿に手を当てて語り始めた。
「...私は、始めの頃はISと姉さんを少なからず恨んでいた。普通に過ごしていた私たちが、バラバラになってしまったからな。...だが、最近になって気づいたんだ。姉さんも、未来と夢を壊された側なんだと。」
「箒...。」
“兵器”として扱われた...その結果、束は行きたかった宇宙に行けなくなった。
箒は、遅まきながらもそれを理解したのだ。
「そして、姉さんは今、世界を敵に回してでもその夢を強引に成し遂げようとしている...。...それだけは止めたい。」
「.......。」
「“無理矢理”はダメなんだ...!そんな事をしては、ますます私と姉さんは離れてしまう...!まだまだ姉妹らしい事も出来ていないのに...!」
秋十やマドカ、千冬を見て、箒は少なからず兄妹や姉妹と言った関係に憧れていた。
しかし、ISが出来てからは束とそれらしい関係になれていなかった。
だからこそ、さらに離れ離れになるのは嫌だと、箒は言ったのだ。
「私は...共に歩みたい!姉さんと、秋十と...皆と!だから、力を貸してほしい...!」
それは、転校続きで孤独だった箒の、心からの願いだった。
しかして、それを聞き届けた紅椿は....。
【...その覚悟、しかと受け止めました。妹様の覚悟が曇らない限り、力となりましょう。】
「っ!?....!」
―――その想いに、応えた。
頭に声が響いたかと思えば、次の瞬間、箒は紅椿を纏っていた。
「乗れ...た...?」
「やったな、箒。お前の想いが通じたらしい。」
“共に歩みたい”。その願いが紅椿を動かしたのだと、秋十は言う。
「今、声が聞こえたんだが...。」
「...いや、俺には聞こえなかったが...なるほど、紅椿の声だな。」
「そうか...。」
“意志”があるのならば、おかしい事ではないと箒は断じ、一度待機形態に戻す。
「...少なくとも、姉さん達を止めて、かつての私たちのようになれるまで、この覚悟を歪ませるつもりはない。...これからよろしく頼む。」
「...もう、大丈夫そうだな。」
「ああ、ありがとう秋十。」
「いいって事さ。」
箒はもう大丈夫だと確信した秋十は、次に鈴の下へと行く。
「...箒は動かせたのね。」
「鈴?どうしたんだ?」
ただじっと甲龍を見ていた鈴は、秋十が来た事に気づいて振り返る。
だが、その様子が他の人とは違う事に秋十は気づいた。
「...あたしは皆とは違うのよ。」
「えっ...?」
「...あたしがIS学園に来た理由、知らないでしょ?あたしはね、洗脳されていたからかもしれないけど、あいつに会うためだけに一度蹴った誘いを受けたのよ。...つまりは、ただ私欲でここに来たの。...この子も利用してね。」
IS学園に来る以前、鈴はIS学園からの誘いを一度蹴っていた。
しかし、一夏が入学する事を知り、急遽撤回してその誘いを受けたのだ。
...代表候補生という立場と、ISを利用して。
「そんなあたしが、“説得”だなんて...生半可な言葉しか並べられないと思ったのよ。」
「鈴...。」
そんな自分が、乗る資格はないと言う鈴に、秋十は少し言葉を詰まらせる。
「...けど、鈴はそれを“自覚”した。それだけでも十分だ。」
「........。」
「今はどうしたいか、どうありたいか、それを伝える方が大事だ。」
過去に邪な思いを抱いていたのなら、償えばいい。
今は違うと証明すればいいと、秋十は言った。
「....わかったわ。あたしも、もっと向き合ってみる。」
「その意気だ。」
“もう大丈夫だろう”と思った秋十は、ふと辺りを見回してみる。
すると、ラウラが既にISを纏っていたのが目に入った。
「ラウラ、お前はもう纏えたんだな。」
「ん?まぁな。教官が“説得”しろと言ったからには、こちらからも覚悟を示すべきなのだろうと思ってな。元々道具のように見ていた節もあったが、それがダメだと知った今は、きっちりと切り替えた。...私の相棒であり、同志だとな。」
「ラウラらしい切り替えだな。」
何よりも、教官である千冬が“翼”だと言ったのだ。
ラウラにとっても、ISに対する考えを改める一言だったのだ。
「私は、過去にISによって存在価値をほとんど消された...が、その事実があって今がある。その事を私は受け入れている。だからこそ、共に歩むと決めたのだ。」
「...なるほどな。」
ISを一旦解除し、降りたラウラに秋十は一言そういう。
「師匠達は、ISを道具として見て欲しくないのだろう。飽くまで“翼”...もしくは“相棒”として見て欲しいのだろうな。」
「...ああ。桜さんも束さんもISの事は自身の子供のように見ていたからな。」
そこへ、千冬がやってくる。
「...箒と鈴はお前に任せて正解だったな。」
「千冬姉?他の皆は....っていつの間に...。」
他の皆はどうしたかと問おうとして、後ろで皆が纏っているのを見てやめる。
「オルコットは元々“水”を宿す事をあいつに習っていたから、早々に同調した。ローランも桜の影響を受けていた上に、事情もあったからな。“相棒”として見ている側面が強かったらしい。更識も国家代表なだけあって、その側面が強いから、一押しすればあっという間だ。」
「さ、さすが千冬姉...。」
「だが、問題は....。」
千冬はユーリの方を見て、口ごもる。
マドカと簪が必死に励ましているが、まだ立ち直っていないからだ。
「彼女をどうするべきか...だ。」
「...ユーリにとっては、“また捨てられた”と思うようなものだからな...。」
「お前やマドカの言葉も届かないという訳か...。」
届くとすれば、それは桜の言葉だけ。...千冬はそう思った。
「肝心の桜から何かしらのメッセージがなければ、どうしようもないぞ...。」
「...とりあえず、シュテル達もユーリの傍に居させた方がいいと思うけど...。」
「焼け石に水だろうな。だが、少しでも味方が多い方が彼女の精神上マシだろう。」
端末を使い、自室に待機しているチヴィットに連絡を取る秋十。
実は、臨海学校で格納領域に仕舞っていたため、しばらく秋十の部屋にいたのだ。
「....だが、あいつがこのまま彼女を放置するとは思えん。」
「ユーリを連れていく...と、桜さんは言ってたから、ほぼ確実に来るはず...。」
「防衛を固める。秋十達は、とりあえず自室に戻ってくれ。」
「分かった。」
出来る事も少ないため、秋十達は大人しく部屋へと戻っていった。
=秋十side=
「.....ん....?」
ふと、気が付けば、そこは不思議な空間だった。
綺麗な青空が広がり、辺りは草原が広がっている。
そこまでなら普通の大草原だと思えるが、そこらかしこに何かが浮かんでいた。
赤、青、黄、緑、白...多種多様な水のような球が浮かんでいる。
「....どこだ。ここ...。」
その空間の異様さの前に、なぜ俺がここにいるのかがわからなかった。
俺は、千冬姉に言われた通り、自室に戻って仮眠を取っていたはず...。
「あれは....。」
遠くの方で、何かが宙で光っている。
まるで“目指すべき光”のようにソレは光っていた。
「どうして、俺はこんな所に....。」
前触れも、何もなかった。あまりに唐突すぎる。
まさか、桜さんの仕業か...?
「...ここは夢追の中だよ。」
「っ...!?」
突然聞こえた声に、後ろを振り向く。
そこには、白いワンピースを着た少女が立っていた。
「誰だ....!?」
「ふふ...誰でしょう?声は聞いた事があると思うけど。」
「声.....?」
目の前の少女の声。...確かに、聞き覚えがある。これは...。
「....白?」
「正解!ご褒美に、ある程度の質問なら答えるよ。」
そう言って微笑む白。...いや、正しくは白式の意志か。
「夢追の中...って言ったな。詳しく説明してくれるか?」
「あれ?てっきりお母さんたちの事を聞くと思ったけど...。」
「...どうせ答えないと思ったからな。」
飽くまで“ある程度”だ。おそらく、その範疇を超える質問だろう。
「まぁ、その通りだね。じゃあ、答えるけど...夢追の中とは言ったけど、ここは夢追を表す精神世界でもあるんだよ。だから、そこら中に“夢”があるでしょ?」
「...あの水の球、全部がそうなのか...。」
よくよく見てみれば、何かしらの光景が中に見える。
所謂“夢見る光景”と言った物だろう。
「そして、あれが目指す領域。追い求めたくなるでしょ?」
「....ああ。あそこに辿り着けば、“答え”が見つかる...そんな感じだ。」
だが、辿り着けないのだろう。何せ、“夢”を追うのだから。
「理解が早くて助かるよ。」
「...それで、どうして俺をここに?」
「それはもちろん...。」
「―――私と対話するためです。」
別方向からの声に、俺は振り向く。
そこには、もう一人少女がいた。
「君が...夢追か。」
「はい。」
白よりは少し成長している姿だが、まだ少女の域を出ない。
白いワンピースなのも同じだが、髪の色が若干黄色混じりの銀髪だ。
「対話...か。千冬姉が言っていたような対話を、俺もか?」
「はい。貴方に聞いておかねばならない事があるので。」
聞いておきたい事...か。
「貴方は...今、どのような“夢”を持っていますか?目標でも構いません。」
「夢...目標か...。」
ふと、思い返してみる。俺は、常に努力を積み重ねてきた。
そして、今がある。...俺は、何を目指して努力してきたんだ?
「...目先の目標は、あいつに復讐...いや、見返してやりたいなんて、単純なものだった。でも、今はそれが為されたから...。」
考えてみれば、そんな大層な夢も目標もなかった。
努力してきたのも、ただ他の人達に追いつきたいからだった。
「俺は...ただ皆に追いつきたい。そのために努力をしている。」
「ですが、その望みは既にほぼ叶えられています。」
そうだ。既にほとんど叶えられたも同然だ。
努力を重ねに重ねた結果、俺は普通の人よりも優れた領域に立っていた。
文字通り、努力の賜物と言う訳だが、“その先”が俺にはあるはずだ。
「....なるほど...な。」
「...気づけましたか?自身の秘めた“夢”に。」
「漠然と...だけどな。」
切欠は、確かに追いつきたいという想いだった。
それに嘘偽りは一切ないし、今も桜さんや束さんに対して抱いている。
だけど、“夢”はまた別にあった。
「...俺は、どこまでも、どこまでも果てしなく、駆け抜け、羽ばたいていきたい。地上を駆けるのでもなく、空を自由に羽ばたくのでもなく、ただ、自分の力の限り....!」
幼い頃、束さんに宇宙に行きたいという夢を聞かされた時から、その想いはあった。
俺は、ただ自由に羽ばたきたいのだ。...この、広大な世界を。
まだ、誰も知らないような領域も含めて、全ての世界を...!
「....それは、到底叶えられるような願いではありませんが...。」
「...“夢”は、追い求めるもの...桜さんから聞かされたよ。」
無茶苦茶な夢だと、普通の人が聞いたら呆れるだろう。
だけど、俺は本気だ。無意識に、幼い頃から思っていたんだからな。
「それに、君自身の...“夢追”も、そのためにあるんだろう?」
「....なるほど。」
“夢”を追うためのIS...それが“夢追”だからな。
「例え届かなくても、追い求めるのが“夢”だ。なら、それだけ大きく持たないとな。」
「....いいでしょう。」
俺の言葉を聞き終わった夢追は、満足そうに目を瞑る。
「納得のいく答えが出なければ...と思っていましたが、杞憂でしたね。」
「...ちなみに、その場合はどうなってたんだ?」
「それでも担い手としては認めていましたが...少なくとも、お父様には勝つ事は不可能になっていたでしょう。」
「...そうか。」
これ以上の伸びしろがなくなるとか、そういう事なのだろう。
しかし、ISの皆が皆、桜さんや束さんを親として呼んでいるのは違和感があるな。
「...時間です。そろそろ、目を覚ます時です。」
「じゃあ、行こう?」
「...ああ。」
白の手を取り、俺は現実へと戻されていく。
「.......。」
現実へと戻り、俺の視界には自室の天井が見える。
ふと、手を伸ばしてみる。
「...自由に羽ばたく...か。」
俺の、本当の“夢”。
幼い子供が抱くような、荒唐無稽な叶えられそうにない願い。
「我ながら、なんて馬鹿らしい願いなんだ...。」
だけど、そんな夢だからこそなのか...。
「...目指したくなってくるな。」
“出来損ない”と、“落ちこぼれ”と蔑まれたからなのか...。
そんな、途方もない願いに、俺はやる気を出していた。
「...ま、とりあえずは目先の事だな。」
ユーリの事や、会社の事、学園の事と色々とどうにかするべき事がある。
ユーリに関しては、近いうちに桜さん達が何か仕掛けてくるだろう。
「それだけじゃない。...IS学園は、今は恰好の獲物だ。」
代表候補生など、有力や有力になりそうな人物の集まっているのがこの学園だ。
おまけに、ISに恨みを持つ男性も少なくはない。
それなのに、防衛力の要であるISが使えなくなったのだ。
...何かしらの“悪意”に狙われる可能性が高い。
「..........。」
ふと、俺の心の中に一つの感情が浮かび上がってくる。
...この、感情は...。
「....恐れているのか...。」
いつもは、桜さんが近くにいた。
実質一人だった時もあるが、それでも桜さんはどこかからか俺を見ていた。
でも、今はそれがない。
「余程の安心感を、俺は桜さんに持っていたんだな。」
失って初めて気づく大切さという奴だろうか?...ちょっと違うか。
まぁ、確かに不安だ。不安で、恐いと感じる。....けど。
「...大丈夫だ。」
俺は、もう独りではない。
皆が戻ってきた。ここには仲間もいる。千冬姉もいる。
だから、恐れる事なんて決してない。
「....よし。」
不安はなくなった。未だにいつ仕掛けられるかという緊張はある。
でも、無闇に恐れる事はなくなった。
「やる事もないし、筋トレでもするか。」
そういう訳なので、俺はしばらく筋トレをして時間を潰す事にした。
今できる事は限られてるしな。
後書き
とりあえず専用気持ちは動かせるように。
他に動かせそうな人物は、なのはやシグナム...次点に静寐や本音達です。
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