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Blue Rose

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最終話 薔薇は咲いてその二

「完結してたのね」
「あれっ、未完でしょ」
「他の人が完結編書いてたの」
「そうだったの」
「それで終わってるの」
「へえ、そうだったのね」
「そこが明暗やグッドバイとは違うの」
 それぞれ夏目漱石、太宰治の作品である。
「あの作品はそうして終わってるの」
「それは知らなかったわ」
 優子も聞いて少し驚いていた、学生時代に未完に終わったと聞いてそう思っていたのだ。
「終わってたのね」
「そうだったの」
「じゃあそのことも含めて」
「論文を書いてるの」
「そうなのね」
「文章が昔のものでね」
 日本文学、近代のそれは明治二十年位まで文章は文語だった。尾崎紅葉の文章も文語の名残が強い。二葉亭四迷が変えていくがその二葉の作品にしてもまだ文語の名残が強い。
「読みにくいけれど」
「文章はね」
「ええ、中々ね」
「昔の文章は読みにくいでしょ」
「どうしてもね」
「口語に慣れているとね」
 どうしてもというのだ。
「文語は辛いわね」
「どうしてもね」
「けれどしっかり読んでるのね」
「そうして書いてるの、論文をね」
「そっちも頑張ってね」
「ええ、そして卒業したら」
 そこから先のこともだ、優花は優子に話した。ワインを飲みつつもその手は優子よりも幾分かペースが遅い。
「どうしようかしら」
「何処に住もうかっていうのね」
「ええ、姉さんはここでずっとよね」
「住んでくわよ、あの人とね」
「子供が出来ても」
「そう、一緒にね」
 そうなっても変わらないというのだ。
「一緒に住んでいくわ」
「そうよね、じゃあ」
「子供が出来たら狭くなるから?」
「もうね」
「一人暮らしはじめようかっていうの」
「そうも考えてるけれど」
「八条グループは社宅も充実してるしね」
 寮もだ、そうした福利厚生も充実している企業グループなのだ。
「だからね」
「社宅とか寮に入っても」
「いいしね」
「そうよね」
「そこは貴女の思う通りにすればいいわ」
「アパートを借りてもね」
 優花はその場合も考えて述べた。
「いいし」
「長崎にいた時みたいに暮らすことも」
「いいしね」
 こう優子に答えたのだった。
「それじゃあね」
「どうするの?」
「じっくり考えるわ」
 これが優花の今の答えだった。
「どうするかは。まずは論文よ」
「それを書いてからね」
「ええ、あとお金溜めて車もね」
 それもというのだ。 
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