| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

英雄伝説~灰の軌跡~

作者:sorano
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

外伝~メンフィル帝国のリベール王国への依頼~

”パンダグリュエル制圧作戦”が成功したその日の夜、リベール王国の女王――――アリシア・フォン・アウスレーゼ女王は孫娘であり、自分の跡継ぎであるクローディア姫と共に夕食を取っていると扉がノックされた。



同日、19:15――――



~リベール王国・グランセル城・女王宮~



「―――女王陛下、殿下!お食事中の所、申し訳ございません!早急に報告する事がある為、入室してもよろしいでしょうか?」

「え……」

「―――構いません。―――ヒルダさん。」

「はい。」

「失礼します。」

ノックの音に気付き、クローディア・フォン・アウスレーゼ王太女と共に夕食を中断したアリシア女王は女官長であるヒルダ夫人に視線を向け、ヒルダ夫人が扉を開けると王室親衛隊隊長のユリア・シュバルツ准佐が入室した。

「それで……報告とは何でしょうか?」

「ハッ!今しがた、グランセル城にメンフィル帝国の大使―――リウイ・マーシルン前皇帝陛下がペテレーネ神官長と共にご来訪されまして。可能ならば今夜中に陛下達との会談を希望しているとの事です。」

「ええっ!?リ、リウイ陛下とペテレーネ様がですか!?確か陛下はエレボニアとの戦争の為のメンフィル軍の総指揮官としてメンフィル軍を指揮をされているのに、何故………」

アリシア女王の質問に答えたユリア准佐の報告を聞いて驚いたクローディア姫は戸惑いの表情をしていた。

「……リウイ陛下達の話によると会談の内容はそのエレボニアとメンフィルの戦争の和解の件について女王陛下達に依頼したい事がある為との事です。」

「ええっ!?メンフィルとエレボニアの戦争の和解の件で私達に依頼ですか!?」

「…………………わかりました。準備ができ次第すぐに会談に応じるとお伝えしてください。―――ヒルダさん、急で申し訳ございませんが陛下達との会談の為の部屋の用意を。」

「―――かしこまりました。」

ユリア准佐の説明にクローディア姫が驚いている中目を伏せて考え込んでいたアリシア女王はユリア准佐に答えた後ヒルダ夫人に指示をした。その後アリシア女王とクローディア姫は客室の一室でリウイ達との会談を始め、ユリア准佐はアリシア女王達の警護の為に扉の前の守護を始めた。



~客室~



「―――夜分遅くの突然の訪問に応えて頂き、心より感謝する。アリシア女王、クローディア姫。」

「……ありがとうございます。」

アリシア女王達との会談を始めたリウイはまず二人に感謝の言葉を述べ、ペテレーネもリウイに続くように感謝の言葉を述べた後会釈をした。

「いえ………両帝国の間で起こってしまった戦争を和解へと導く事は私達リベール王国が心から望んでいる事ですので。」

「その……メンフィル帝国がエレボニア帝国への侵略を開始して日は浅いのに、何故突然エレボニア帝国との和解する事を考えられたのでしょうか?」

二人の感謝の言葉に対してアリシア女王は謙遜した様子で答え、クローディア姫は戸惑いの表情でリウイに問いかけた。そしてリウイとペテレーネはメンフィル帝国がエレボニア帝国との和解する事を決めた理由――――メンフィル・エレボニア戦争で大手柄を挙げたリィンの望みの一つが両帝国の和解である事を説明した。

「今回の戦争勃発の原因となったユミルの領主のご子息がご両親の為に………」

「リィン・シュバルツァーさんというと確かクロスベル警察の”特務支援課”に所属していましたが………」

リウイ達の説明を聞いたアリシア女王が驚いている中ある事が気になったクローディア姫は不思議そうな表情でリウイ達を見つめ

「彼は既に特務支援課の派遣任務を終え、メンフィル軍に帰属しています。”クロスベル独立国”を名乗る前のクロスベルが”あのような宣言”をしましたので。」

「あ………」

「”資産凍結宣言”ですね。………話を戻しますがメンフィル帝国は今回の戦争で活躍したリィン・シュバルツァーさんに褒美として、リィンさんの希望―――メンフィル帝国とエレボニア帝国の和解に応じるとの事ですが、エレボニア帝国を占領するつもりでいたメンフィル帝国―――”国家”の決定を覆す程の活躍をなされたリィンさんは具体的には一体どのような活躍をされたのでしょうか?」

ペテレーネの説明を聞いてある事を思い出したクローディア姫が不安そうな表情をしている中静かな表情で呟いたアリシア女王は真剣な表情になってリウイ達に問いかけた。



「――――”バリアハート制圧作戦”では今回の戦争勃発の元凶となった”戦犯”であるアルバレア公爵家の当主―――ヘルムート・アルバレアを討ち取り、”パンダグリュエル制圧作戦”では貴族連合軍の”総参謀”――――ルーファス・アルバレアを討ち取っている。」

「な―――――」

「ええっ!?そ、それじゃあ既に”四大名門”の当主の一人に加えてカイエン公に次ぐ貴族連合軍の重要人物までリィンさん―――いえ、メンフィル帝国に殺害されていたのですか……!?」

「しかも既にクロイツェン州の公都であるバリアハートと貴族連合軍の旗艦である”パンダグリュエル”までメンフィル帝国に占領されていたのですか………」

リウイの説明を聞いたクローディア姫は信じられない表情で声を上げ、アリシア女王は絶句した後重々しい様子を纏って呟いた。

「ああ。―――それとクローディア姫。貴女にとっても因縁がある人物――――結社の”執行者”の一人である”怪盗紳士”も”パンダグリュエル制圧作戦”にてプリネ達が討ち取っている。」

「!プリネさん達が”怪盗紳士”を…………」

更なる驚愕の事実を知ったクローディア姫は目を見開いた後複雑そうな表情をした。

「………”執行者”が貴族連合軍の旗艦で討ち取られたという事は今回のエレボニアの内戦……まさか結社”身喰らう蛇”も関わっているのでしょうか?」

「あ…………」

そしてある事に気づいたアリシア女王の推測を聞いたクローディア姫は呆けた声を出した。

「はい。―――ただ2年前に起こった貴国の”異変”の時と違い、結社は貴族連合軍の”裏の協力者”として裏工作や暗闘等に徹しているようです。」

「”裏の協力者”、ですか…………」

「…………話を和解の件に戻させて頂きますが、エレボニア帝国との和解で私達に依頼したい事があるとの事ですが、それは一体何なのでしょうか?」

ペテレーネの説明を聞いたクローディア姫が不安そうな表情をしている中、目を伏せて考え込んでいたアリシア女王は目を見開いてリウイ達を見つめて問いかけた。



「リベールに依頼したい事……―――それはメンフィルとエレボニア、双方の代表者が和解条件を記した条約書に調印する場としてこのグランセル城を使う事の許可と、調印式に貴国の代表者―――アリシア女王、もしくはクローディア姫が立ち会う事だ。」

「!!」

「え…………和解の調印式をグランセル城で、しかもその場に私かお祖母様が立ち会う事……ですか?一体何故………」

リウイの答えを聞いたアリシア女王は目を見開き、クローディア姫は呆けた後戸惑いの表情でリウイ達を見つめた。

「……………今回の戦争に関して中立の立場であるリベール王国で行い、リベールの代表者が調印式に立ち会う事によって、メンフィル帝国やエレボニア帝国だけでなくリベール王国(わたくし達)を含めた中立勢力も納得せざるを得ない状況にし、エレボニア帝国の状況が落ち着いた後エレボニア帝国に私達――――中立勢力の仲裁によって和解条約の撤回や条約内容の変更をさせない為ですか………」

「!!……………あの、リウイ陛下。和解の調印式には陛下も仰ったように両帝国の代表者が調印する必要があります。エレボニア帝国の代表者である”アルノール家”は陛下達もご存知かと思われますが、オリヴァルト殿下を除いて全員貴族連合軍によって幽閉されている状況です。ですから肝心のエレボニア帝国の”代表者”がいない現状で和解の調印式を行う事は不可能かと思われるのですが……」

目を細めてリウイ達を見つめて答えたアリシア女王の推測を聞いて目を見開いたクローディア姫はすぐに立ち直ってある事をリウイ達に指摘した。

「―――”エレボニアの代表者”なら既に用意ができている。」

「ええっ!?ま、まさか既にオリヴァルト殿下と接触されたのですか?」

リウイの答えを聞いて驚いたクローディア姫はリウイに問いかけ

「いや、ユーゲント皇帝の娘――――アルフィン・ライゼ・アルノール皇女だ。」

「な―――――」

「ア、アルフィン皇女殿下ですか!?ですが確かアルフィン皇女殿下は”ユミル襲撃”の件で貴族連合軍の手の者によって拉致され、幽閉の身になったとの事ですが………」

リウイの口から出た驚愕の答えにアリシア女王が絶句している中クローディア姫は驚きの声を上げた後戸惑いの表情でリウイ達に指摘した。



「本日行った”パンダグリュエル制圧作戦”にて”パンダグリュエル”に幽閉されていたアルフィン皇女を捕縛した。よって現在アルフィン皇女はメンフィルの下にいる。」

「!!」

「ええっ!?ア、アルフィン皇女殿下がメンフィル帝国に捕縛されたのですか!?そ、その……メンフィル帝国の捕虜になってしまったアルフィン皇女殿下は現在どのような待遇を受けているのでしょうか……?」

リウイの説明を聞いたアリシア女王は目を見開き、驚きの声を上げたクローディア姫は不安そうな表情でリウイに問いかけた。

「現在は我が軍の旗艦―――”モルテニア”の貴賓室にて大人しくしている。」

「また、アルフィン皇女には臨時の侍女としてリフィア殿下の専属侍女長であるエリゼ・シュバルツァーさんを付け、エリゼさんにアルフィン皇女のお世話を一任しています。」

「エリゼさんがアルフィン皇女殿下のお世話を………」

リウイに続くように答えたペテレーネの説明を聞いたクローディア姫は呆けた表情で呟いた。

「帝位継承権が存在しているアルフィン皇女の方が”庶子”の為帝位継承権が存在しないオリヴァルト皇子よりも、”エレボニアの代表者”としての資格がある為、アルフィン皇女がメンフィル帝国が用意した和解条件の条約書に調印すれば問題はないと思われるが?」

「それは…………」

「………アルフィン殿下に和解条件の条約書に調印してもらうと仰いましたが、メンフィル帝国はエレボニア帝国に対してどのような”条件”をつけて和解するおつもりなのですか?」

リウイの正論に反論できないクローディア姫が辛そうな表情で顔を俯かせているとアリシア女王は真剣な表情でリウイに問いかけた。



「それについては現メンフィル皇帝であるシルヴァンを始めとしたメンフィル帝国政府が決める事ゆえ、既に隠居の身である俺はエレボニア帝国との和解の件について今この場で明言はできないが………普通に考えればエレボニアはメンフィルとの和解の為に多くの領土をメンフィルに贈与する条約は確実に要求するだろうな。」

「そ、そんな………リウイ陛下。お言葉ですが、戦争した相手の国家の領土を奪い取る条約なんて、どう考えても”和解条約”には当てはまるとは思えません!現に”百日戦役”でもリベール王国とエレボニア帝国が和解した際、エレボニアはリベールの領土の贈与を要求しませんでした!」

リウイの推測を聞いたクローディア姫は悲痛そうな表情をしたがすぐに決意の表情になって反論した。

「………フッ、よりにもよって”百日戦役”を例に出すとはな。――――クローディア姫。今回の戦争と”百日戦役”には決定的な違いがある。よって、クローディア姫の指摘は的外れだ。」

クローディア姫の反論を聞いたリウイは不敵な笑みを浮かべた後真剣な表情になってクローディア姫を見つめて答えた。

「え……………」

「クローディア姫も知っての通り、”百日戦役”勃発の原因は”ハーメル村の虐殺がリベール王国軍によって起こされたという事”だ。だが、”ハーメルの惨劇”の”真実”は結社の”蛇の使徒”―――”白面”ゲオルグ・ワイスマンが関わっていたとはいえ、エレボニア帝国による自作自演――――つまり非があるのは”戦争を仕掛けたられた側であるリベール王国ではなく戦争を仕掛けた側であるエレボニア帝国”だ。対して今回の戦争勃発の原因であるユミル襲撃の件で非があるのはどちらだ?」

「!!そ、それは…………で、ですが!ユミル襲撃の件はエレボニア皇家である”アルノール家”の方々やエレボニア帝国政府の指示によるものではなく、エレボニア皇家―――いえ、エレボニア帝国に対して反乱を起こした貴族連合軍の暴走によるもので、エレボニア帝国に非はありません!」

リウイの正論に目を見開いた後言葉を濁したクローディア姫だったが、すぐに立ち直って再び反論した。

「エレボニアに非はない?―――笑わせてくれる。”皇”とは時には非情な手段を取り、自らの手を血で染め、そして皇家のみに唯一許される強権を使ってでも国を……民達の生活の平穏を保つ”義務”がある。ユーゲント皇帝を始めとしたエレボニア帝国の皇家である”アルノール家”は”皇家としての義務”を果たさずに貴族派と革新派の対立を上手く治める事ができなかった所か内戦を引き起こし、挙句の果てには他国である我等メンフィルをも巻き込む戦乱へと陥らせてしまった責任の一端を担っている。――――違うか?」

「ッ!!そ……れ……は…………」

「…………………」

続けて口にしたリウイの厳しい意見にして正論でもある話を聞いたクローディア姫は息を呑んだ後辛そうな表情で答えを濁し、クローディア姫同様リウイの正論に対して反論を持ち合わせていないアリシア女王は重々しい様子を纏って黙り込んでいた。



「そしてそちらも知っての通り、幾ら遊撃士の入れ知恵があったとはいえ、自身が貴族連合軍に狙われている身であると理解していながらユミルに避難してきた挙句俺やシルヴァンを始めとしたメンフィル帝国政府に亡命を申し出る所か、ユミルに避難した事を内密にしていたアルフィン皇女はエレボニアの皇族――――それも”帝位継承権”を持つ皇族だ。加えて猟兵共にユミルの襲撃を指示したのはエレボニア皇家に次ぐ権力を持つエレボニアの大貴族である”四大名門”の当主だ。クローディア姫はこれらの話を聞いてもなお、エレボニアに非はないと言えるのか?」

「………………」

「………お話はわかりました。不幸な偶然が重なった事によって起こってしまったメンフィル帝国とエレボニア帝国の戦争を和解へと導く場を提供する事は両帝国と友好を結んでいる国として……そして”不戦条約”を提唱した国としても異存はありません。貴国の依頼……謹んで請けさせて頂きます。」

リウイの問いかけに対して返す言葉がないクローディア姫は辛そうな表情で顔を俯かせ、アリシア女王は話を戻して決意の表情でリウイ達――――メンフィル帝国の依頼を請ける事を答えた。

「お祖母様………」

「―――感謝する、アリシア女王。明日にはレマン自治州にある遊撃士協会の本部とも交渉し、遊撃士協会の関係者が今回の戦争の和解調印の場に立ち会う事を依頼するつもりだ。できれば、七耀教会の関係者にも立ち会ってもらいたいと思っているが………依頼をしておきながら厚かましい話と思われるが、七耀教会との交渉については長年七耀教会との関係を良好に保ち続けているリベール(そちら)に任せても構わないだろうか?」

アリシア女王の答えを聞いたクローディア姫が複雑そうな表情をしている中リウイは感謝の言葉を述べた後今後についての話をし、ある事をアリシア女王に問いかけた。

「そのくらいでしたら構いません。ちなみに和解調印の日はいつがよろしいのでしょうか?」

「3日後―――12月9日だ。その日ならば多忙なシルヴァンも予定を空ける事ができる。」

「え………リウイ陛下は和解調印の場に参加なさらないのですか?」

アリシア女王の質問に答えたリウイの答えを聞いてある事が気になったクローディア姫は戸惑いの表情でリウイに訊ねた。



「大使を務めているとはいえ、俺は既にメンフィル帝国政府の関係者としては隠居の身だ。よって現メンフィル皇帝であるシルヴァンが参加するのが”筋”だ。それと和解調印だが、調印が終わるまでメンフィルとエレボニアの和解の件については公にしないでもらいたい。」

「え…………」

「……何故でしょうか?国家間同士の戦争の和解なのですから、当然公にすべきと思われるのですが。」

リウイの要請にクローディア姫が呆けている中アリシア女王は眉を顰めてリウイに問いかけた。

「アルフィン皇女をメンフィルに奪われた貴族連合軍が和解調印の件を知れば、アルフィン皇女の”救出”を大義名分にしてリベールに侵攻し、その結果リベールまでエレボニアの内戦に巻き込まれる事になる可能性があるからだ。リベールとしても、エレボニアの内戦に巻き込まれて、メンフィルのように貴族連合軍――――エレボニアと戦争する事態に陥る事は絶対に阻止すべき事態だと思われるが?」

「それは…………」

「…………まさか和解調印の場をこのグランセル城に指定したのは、私達が箝口令を敷きやすくする為ですか?」

リウイの説明を聞いたクローディア姫は不安そうな表情になり、ある事に気づいたアリシア女王は静かな表情でリウイに問いかけた。

「ああ。それとこれは”依頼”ではなく”提案”なのだが……そちらがよければ和解調印の日まで捕縛したアルフィン皇女をリベールに預けても構わない。」

「ええっ!?ど、どうしてそのような提案を……」

リウイの提案を聞いたクローディア姫は驚いた後信じられない表情でリウイを見つめた。



「単純な話だ。メンフィル帝国の捕虜としてメンフィルの下にいるアルフィン皇女が和解調印の場に参加し、メンフィルが要求する和解条約に調印すればメンフィルが調印の日までにアルフィン皇女に危害を加えたり、脅迫して調印させたと邪推するエレボニアを含めた勢力が現れる事を防ぐ為だ。それにその方が調印式までの公平性が保たれ、メンフィルの捕虜となったアルフィン皇女の身を心配しているリベールとしても安心できる話と思われるが?」

「あ…………」

「………わかりました。アルフィン皇女の”保護”もさせて頂きますが………いつ頃アルフィン皇女の身柄をリベールに預けて頂けるのでしょうか?」

自身の疑問に対するリウイの答えを聞いたクローディア姫が呆けている中アリシア女王はリウイの提案も受ける事を決めた。

「そちらさえよければ、今夜中の移送も可能だ。」

「ちなみにアルフィン皇女の移送方法は私の転移魔術によるものですから、グランセル城内に加えて女王宮にも直接移送する事も可能ですからアルフィン皇女がリベールに預けられた事を知る方達の数を絞る事も可能です。」

「……でしたらお言葉に甘えてアルフィン皇女の移送場所や時間も指定させて頂きます―――――」

その後リウイ達とアリシア女王達はいくつかの事を取り決めた後リウイはペテレーネの転移魔術によってリベールから去った。



同日、21:00―――



~空中庭園~



約2時間後アリシア女王達はリウイ達が連れてくるアルフィン皇女を迎える為にユリア准佐と王国軍のトップにして、”百日戦役”時劣勢であったリベール軍を立て直してエレボニア軍を撃退したリベールの英雄、”剣聖”カシウス・ブライト准将と共にリウイ達が転移魔術で現れる場所――――アリシア女王とクローディア姫が住む女王宮へと通じるグランセル城内の空中庭園で待機していると、転移魔術によって術者であるペテレーネがリウイとアルフィン皇女と共に空中庭園に現れた。

「あ…………」

「到着したようですな。」

「リウイ陛下達の傍にいるあの女性がオリヴァルト殿下の妹君であられるアルフィン皇女殿下ですか……」

リウイ達の登場にクローディア姫は呆けた声を出し、カシウスは静かな表情で呟き、ユリア准佐はアルフィン皇女に視線を向けて呟いた。

「ほう?アリシア女王やクローディア姫はともかくレイストン要塞常駐のリベールの”英雄”がわざわざ自らこんな真夜中の移送に出迎えに来るとはな――――”剣聖”カシウス・ブライト。」

「陛下達がグランセル城を去ってから女王陛下達より連絡がありましてな。陛下達よりお預かりする皇女殿下や和解調印式の警備の件も含めて女王陛下達と相談する事もありますので急遽登城し、女王陛下達と共に陛下達の出迎えをさせて頂きました。」

カシウスに気づいたリウイは興味ありげな表情でカシウスに視線を向け、リウイの言葉に対してカシウスは静かな表情で答えた。



「そうか。―――ちょうどいい機会だ。リィン・シュバルツァーの件で改めて礼を言っておく。僅か1ヵ月で訓練兵であった者をあそこまで鍛え上げた事、感謝している。」

「過分なる感謝のお言葉、恐縮です。ただ彼自身、元々老師の教えによって基盤はできていた事に加えて”ゼムリア大陸真の覇者”と名高いメンフィル軍にも鍛えられていたお陰で、教える事も少なく、私は大した事は教えておりません。」

「フッ、謙遜するな。既にアリシア女王達から聞いていると思うが弟子の大活躍にリィンを鍛え上げた”師”の一人として誇らしい話だろう?」

「………女王陛下達から話を聞いた時に最初に感じたのは誇らしいというか、驚きの方が勝っていましたな。まさか彼が貴族連合軍のナンバー2である”総参謀”を討ち取るとは………」

口元に笑みを浮かべたリウイの問いかけに対してカシウスは静かな表情で答えた。

「リィンがルーファス・アルバレアを討ち取る事ができたのもお前の教えの一つ―――”絆”によるものと言っても過言ではないだろう。実際リィンもエステルのように多くの異種族達との協力関係を結び、その者達や今までの人生で絆を結んだ仲間達の力も借りてルーファス・アルバレアの件も含めて今回の戦争で大手柄をあげたのだからな。―――かつてエステルが異種族を含めた多くの”絆”を結び、クーデター、異変、そしてクロスベルでの”教団”事件を解決したようにな。」

「…………………そうですな。リィンの活躍に私の教えも活きていて、彼に師事をした者として何よりです。」

「准将………」

「……………」

リウイの指摘に静かな表情で同意しているカシウスの様子をユリア准佐は心配そうな表情で見つめ、クローディア姫は辛そうな表情で黙り込んでいた。そしてリウイとカシウスの会話が途切れるとアリシア女王がリウイに問いかけた。



「……リウイ陛下、そちらの方がアルフィン皇女殿下ですか?」

「ああ。」

「―――お初にお目にかかります、アリシア女王陛下、クローディア王太女殿下。エレボニア皇帝ユーゲント三世とその妻プリシラの娘、アルフィン・ライゼ・アルノールと申します。この度は我が国とメンフィル帝国の戦争を和解へと導く調印の場を用意して頂き、調印式にも立ち会って頂く事に加えて調印式までの間のわたくしの保護を受け入れて頂いた事、心から感謝しておりますわ。」

アリシア女王の言葉にリウイが頷くとアルフィン皇女がアリシア女王達の前に出てスカートを両手で摘みあげて上品な仕草で会釈をした後自己紹介をした。

「いえ、私達は両帝国と友好を結んでいる国として……”不戦条約”を提唱した国として、戦争状態に陥ってしまった両帝国を和解へと導く事は心から望んでいる事ですから当然の事をしたまでです。」

「現在女王宮に殿下に休んで頂く客室の準備の用意を急がせています。客室の準備が整うまでの間、疲れや心労によく効くハーブティーを私とお祖母様が御馳走させて頂きますので、今までの疲れを少しでも癒して貰えれば幸いです。」

「女王陛下と王太女殿下の寛大なお心遣いに心から感謝致しますわ。短い間になりますが、お世話になります。」

アリシア女王とクローディア姫にアルフィン皇女は感謝の言葉を述べ

「―――それでは俺達はこれで失礼させてもらう。ペテレーネ。」

「はい。転移――――メンフィル大使館。」

リウイはペテレーネに視線を向け、視線を向けられたペテレーネは頷いた後転移魔術を発動してリウイと共にグランセル城から去って行き、リウイ達を見送ったアリシア女王達はアルフィン皇女と共に女王宮へと向かった。



そして2日後、メンフィル帝国軍はラマール州の公都にして”カイエン公爵家”の本拠地でもある”海都オルディス”を占領する作戦――――”オルディス制圧作戦”を実行する為にオルディスへの急襲を開始した――――――!


 
 

 
後書き
次回は再びリィン達の視線に戻ります!……とは言ってもオルディス篇はバリアハート篇やパンダグリュエル篇と違って、あっさり終わる予定(具体的には1~2話くらい)ですからリィン達はそんなに活躍しないと思います。オルディス篇があっさり終わる理由については兵器か合成魔獣(キメラ)と言えば、ある程度察しがつくかとww 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧