制服が邪魔をする
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第二章
だから彼にこう言った。すると彼はこう返してきた。
「それでいいかしら」
「いいよ。それじゃあね」
「それなら。今からね」
「これから何処に行くのかな」
「マクドナルドだけれど」
「俺も言っていいかな」
「お話するのならね」
それならと彼に返してそれからだった。私達は二人でマクドナルドで話をした。それからだった。
私達はよく一緒に遊んだ。私は彼氏彼女の関係じゃなくて友達として付き合っていた。けれどその私に皆は言った。
「いい彼氏ゲットしたじゃない」
「顔いいしね」
「性格も明るいし」
「向こうから告白されてよね」
「それで付き合ってるのよね」
「付き合ってないから」
私は周りの少し囃し立てが入っている言葉にいつもむっとして返した。
「そういうのは全然ね」
「ないの?」
「そう言うの?」
「そう、ないから」
いつもこう言って否定した。
「全然ね」
「何よ、結構一緒にいるじゃない」
「放課後なんか特に」
「それで何もないってね」
「交際してないとか言えないでしょ」
「友達だから」
私は不機嫌そうに右手で髪を前から後ろに掻き分けて言った。不機嫌な時はよくそうなる。
そのうえでこういつも言った。
「それ以外の何でもないから」
「寂しい言葉ね」
「人をがっかりさせるっていうか」
「もう私失望したわ」
「私も」
「実際そうだから」
本当にむっとした顔で返す。
「ただの友達だから」
「まあそう言ってもね」
「あんた最近感じ変わったわよ」
「前のいつも不機嫌な感じが消えたから」
「結構明るくなったわよ」
「そうかしら」
そう言われてもこのことは自覚がなかった。自分では相変わらず不機嫌なつもりだった。
制服も嫌いだ。だからこう言った。
「この服だってね」
「けれど前よりは言うこと減ったじゃない」
「それもかなりね」
私が自覚していないことをいつも言われた。そして。
彼にもだ。一緒にいるとよくこう言われた。
「段々と明るくなってきてない?」
「そう?」
「いやさ、何か最初に声かけた時俺玉砕覚悟してたんだよ」
「友達になりたいって言われて断るつもりはないから」
わざと不機嫌な顔を作って言い返した。今私達は一緒にお昼御飯を食べている。食堂でわたしはにしんそばにお握り三個、彼はきつねうどんと卵丼だ。
その二つを食べながらそうして言うのだった。
「そんなことはね」
「そうなんだ」
「そうよ。けれど皆言うのよ」
「明るくなったってだよね」
「言われるわ。そうかしら」
「そうだよ。俺最初から可愛いって思って声をかけたけれど」
可愛いと言われて悪い気をする娘はいないと思う。私も実はそうだ。
もっと言えば内面を見て欲しいけれどそれを言うのは自分でも贅沢だとは思っていた。だからそれは心の中で留めた。
その私に彼はこうも言ってきた。
「いや、明るいと余計にさ」
「いいのね」
「いいね。女の子はやっぱり笑顔だよ」
「そうなのね」
「そうそう。それでね」
彼は私にさらに言う。唐辛子の香りがおつゆの香りと混ざっていい感じになっているそのおうどんを食べながら。
彼は私に笑顔でこう言ってきた。とても明るい笑顔で。
「いいかな」
「何がいいの?」
「今度何処かに一緒に行かない?」
「何処か一緒にって」
「うん、デートの誘いだけれど」
「あのね、デートなんて」
私はお蕎麦をすするのを止めてむっとした顔で彼に言い返した。
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