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IS~夢を追い求める者~

作者:かやちゃ
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第2章:異分子の排除
  第47話「激動の世界」

 
前書き
本来の夢のために一度世界をかき乱す...。
桜・束「多分これが一番早いと思います。」

要約すると二人の行動はこんな感じです。
実際、一度レールから外さないと難しいですしね。
 

 



       =out side=





 突然のハッキングからの桜たちの登場に、IS学園の生徒は騒然となる。
 否、全世界のテレビ媒体をハッキングしているため、IS学園どころか全世界が騒然としていた。

【そうそう。ハッキング対策するのは別に構わないけど、とーっても大事な事を聞き損ねちゃうよ?それでもいいなら対策してもいいけどね。】

「なにやっているんだあの馬鹿どもは...。」

 さもそれが当然かのように言う束に、食堂に駆け付けた千冬がそういう。

【それじゃあ、ほとんどの人が知っているだろうけど、自己紹介するね!私こそがISを創り出した天才科学者、篠ノ之束さんだよ~!ぶいぶい!】

【その幼馴染、神咲桜だ。容姿も頭もこいつに似ているが、れっきとした別人だぜ?】

 束の事はともかく、桜の事で各国は驚きの反応を見せる。
 いきなり無名の人物がまるで束と同じ立ち位置のように現れたからだ。

「.........。」

「.........。」

 秋十達は他が騒めく中、黙って映像を見続ける。
 ようやく何をしているか分かったものの、今後の行動が気になるからだ。

【さて、なぜこうしてハッキングしてまで現れたかと言うと...。】

【ぶっちゃけさ、いい加減ISを本来の使い方してくれないかな?】

 さっきまでのテンションと違い、非常に冷めた声で束が言う。

【一般のIS操縦者が知らないのはまぁいいけどさ、一部の連中...特に私が初めてISを発表した時に聞いてた連中はさ、“どういう目的”で作ったのか知ってるよね?】

【束の...俺達の想いを込めたISは、その目的に沿った存在になっているかねぇ?】

「....本来の目的...か。」

 二人の言葉に千冬が反応する。

【まぁ、聞くまでもないよね。私は宇宙に羽ばたけるようにISを作った。なのに、今の世界はどうなっているの?】

【女性しか乗れない欠陥を抱えたまま、スポーツに使われたり...挙句には女性しか使えないという事で世界の風潮も変わってしまった...まぁ、控えめに言ってひどいな。】

【というか兵器呼ばわりってなにさー。私はロケット以上に小回りの利く“翼”を発明しただけなのに、誰一人として同じ見方をしてくれないじゃん。】

 “だから”と二人は区切り、驚愕の一言を放つ。

【ISを今までのように乗れなくしました!わー、ぱちぱち!】

【乗れなくなったと言うより、ISの意志に認めてもらえない限り、乗せてもらえなくなったと言うべきだな。つまり、ISにも拒否権ができたって訳さ。】

 その言葉に、放送を見ていた各国の人はISを起動させようとする。
 しかし、一向に起動しないという事実に愕然とした。

【そうそう。既に以前からISに認めて貰えてる奴もいるぜ?ISを乗り物ではなく、相棒や“翼”だと思っている奴には力を貸してくれる。現に俺の知り合いにもいるしな。】

【他にも、ISと協調できたとしても乗れるよ。】

 淡々という桜たちだが、それを聞いた者達は秋十達以外それどころではなかった。
 突然ISに乗れなくなる。...それは、今まで男性に対して絶対的な抑止力がなくなってしまったのと同義なのだ。
 ISが現れる前と変わらない者はともかく、女尊男卑の風潮に流されていた女性たちはそれはもう阿鼻叫喚ともいえる状態になっていた。

【はははっ!混乱してるな!まぁ、それが狙いだったからな!】

【自分がでかい態度を持てた要因がなくなって、それで喚かれてもねぇ。】

【ま、因果応報って奴だな!】

 まさに悪役と言った雰囲気で喋る桜と束。

【まぁ、こんな嫌がらせ染みた事をして、“なぜこんな事を”と思う奴もいるだろう。】

【私たちの目的は、幼い頃...ISを思いついた頃から変わらない。】

【俺達はISで宇宙に羽ばたく。】

【そのために、世界を変える。この、歪んだ世界を。】

 ただの戯言だと、誰もが思おうとして、思えなかった。
 実際、既に手玉に取られているからだ。

【そうそう。先日、IS学園の臨海学校で生徒の専用機のスペックが規格外だとか、他にも根も葉もない噂が流れたみたいだけど...。】

【あれ、ぶっちゃけ俺らが仕組んだ事だから。】

「えっ....?」

 ユーリの事を示したその言葉に、ユーリが驚く。
 実際はエグザミアの意志が過保護なのと単一仕様に欠陥があっただけだからである。

【なんでも既存のISのスペックを上回っているんだって。それで、そのISを作ったワールド・レボリューションが疑われてるとか。】

【気の毒にな。俺達に利用されて、それで周りから敵視されるなんて。】

【私たちで仕込んでおいてそれはないよー。】

「どうして....。」

 あからさまにヘイトを集める言動に、ユーリは声を震わせる。
 だが、その行動は、ユーリも“被害者”だったと思わせる事となる。

【この際だから言っておくが、そのISは俺のISを完成させるための試験機だ。まぁ、今となってはどうでもいいから放置してたんだけどな。】

【おっと、これ以上ワールド・レボリューションを追い詰めるのはダメだよ?一応、利用させてもらったお礼として、私たちがそれを阻止するからね。】

 釘を刺し、敵意を自分たちだけに向けていく二人。
 ふざけたような言動に聞こえるが、秋十達にはその奥に秘めてある“覚悟”を、映像越しからとは言え感じ取っていた。

【さて...色々長話もしたけれど、止めたければ止めに来ればいいよ?】

【まぁ、ISをあまり使えなくなった奴らにできるのなら...な?】

【もちろん、私たちの大事な人達を人質に取るなんて、そんな馬鹿みたいな事しないよね?...したら、死んだ方がマシな目に遭わせるよ。それじゃあね。】

 そういって、一方的な映像は勝手に切られる。
 そして、本来の映像が流れ始めた。

「....そういう事か...。」

 黙って見ていた秋十が、そう呟く。
 理解したのだ。なぜ、自分たちを置いてどこかへ行ったのか。

「荒れるぞ。これは...。」

「世界中がISに注目してる中、いきなりISが使えなくなると...。」

「...まずは学園の皆を落ち着かせるのが先だ。」

 そういうや否や、千冬は一喝し、騒ぎだそうとする生徒を黙らせる。

「落ち着け!慌てた所で何も変わらん!今は自室に戻り、待機するように!こちらでも緊急の対処を行う。連絡があるまで勝手な行動は慎むように!」

「マドカちゃん、キリエ先生とアミタ先生は?」

「別の場所...でも、千冬姉が先生を集めると思うから大丈夫。」

 なのはの言葉にマドカはそう答え、ユーリに話しかける。

「ユーリ。」

「...桜、さん...どうして....。」

「ユーリ!!」

「っ...マドカさん...。」

「今は自室に戻るよ。そこで落ち着いて考えよう。」

 ユーリを宥め、秋十達はすぐに自室へと戻っていった。









       =桜side=





「...皆驚いているだろうな。」

「ゆーちゃんはショックだろうねぇ...。」

 全世界に俺達の映像を届け、それが終わった後で俺はそう呟く。

「さー君の見立てでは誰がISを使えると思う?」

「ユーリちゃんは確定として...秋十君やマドカちゃんも行けるだろうな。不確定ではあるが、俺が学園で仲良くしていた奴のほとんどが乗れるだろうよ。...ただ、ISの意志と向き合うという前提が必要だが。」

「女尊男卑の連中はまず使えないからねぇ。そんな思想を持っていなくても、ISをただの“乗り物”として認識していたら意味がないからね。」

 俺達がISに対して施した事は大きく分けて四つ。
 一つ目は、全体的な機能のアップデート。さらに宇宙に羽ばたくためだ。
 二つ目は、宇宙での活動にさらに適応するように改善。
 三つ目は、女性しか扱えない欠陥の解決。これにより、男性も扱えるようになる。
 四つ目は、先程も言っていた通り、ISが認めなければ乗れなくなった。

「よし、次の段階に移るぞ。」

「まずは各国からの干渉の遮断。それから地盤を固めないとね。」

「今までの束のように逃げ回るのではなく、一種の要塞と化す。」

 そのために、色々な事をしなければならない。
 協力者が不可欠だし、核爆弾の事も考えておかなければならないしな。
 早々使ってくる事はないが、それを防げる防御力は必要だ。

「...まぁ、その辺においては...。」

「私たちに任せてもらおうか!」

 この人(ジェイル・スカリエッティ)がいるから、大丈夫だしな。

「束、核爆弾への対策は?」

「理論上は核爆弾を3個分まで防げるよ。ただ、放射能は難しいね。」

「一つ程度ならどうとでもなるが、それ以上は難しい...か。」

 なら、改良をしておかないとな。

「各勢力の状況は?」

「どこもかしこも慌てているな。今の所何か行動を起こしてくる訳でもない。...今のうちに圧力をかけておくか?」

「そうだねー。適当にウイルスでも流しておけば?」

「オーケー。」

 所謂“絶対悪”。そのような存在に、俺達はなろうとしている。
 そのために、世界を混乱に陥れているのだ。

「とりあえず一日で全世界を相手にできる程にまで態勢を整えるぞ。」

「任せて!システム面ではもう完璧だから、後は物理面だけだよ。」

 システムにおいて、以前から束でも十分だったからな。
 そこに俺も加わればまず負けない。
 だが、直接の場合はそうとは言えないから、こうして対策を続けている。

「桜、束ちゃん、飲み物はいるかしら?」

「母さん?...ちょうどいいや、貰うよ。」

「私も!喉渇いてたんだよね!」

 そこへ、母さんがお茶を淹れてくれる。

「...それにしても、母さんはよかったのか?」

「何が?」

「俺達についてきた事。何をするか分かっていても、どう考えてもいい事ではないのに。」

 俺達についてきたのは、元々裏組織であった亡国企業穏便派と、俺達と共に世界を変える事に興味を示した変人くらいだ。
 母さんは俺達と違って常識人だから、ついてくるとは思えなかったが...。

「...ただ、離れ離れに...桜の事を知りえない場所に置いて行かれるのが嫌だっただけよ。例え悪い事でも、私はついて行くわ。」

「母さん...。」

「でも、無茶はさせないわよ。大事な息子なんですもの。」

「...わかったよ。」

 “悪い事”を容認するのは親として失格だが、それだけ俺を心配しているという事だ。
 長い間、ずっと一人にさせてたからな...。

「それじゃあ、頑張ってね。」

「ああ。」

 母さんが去っていき、ジェイルさんもいつの間にかいなくなっていた。
 部屋には、俺と束しかいなくなる。

「....ゴーレムはできてるか?」

「一応ねー。今の状況なら、これで行けるでしょってぐらいかな。」

 次の段階に進む際に、やっておかなくてはならない事がある。
 それを為すためにゴーレムを使うんだが...。

「秋十君達がいる限り、足りない気もするんだがな...。」

「ここは悪役らしく、人質でも取ってみる?」

「それ、場合によっては噛ませ犬になる奴だろ...。まぁ、有効な手段だが。」

 これはちょっと非人道的だから、母さんとかにも知らせていない。
 ...まぁ、傍から見れば大して変わらないけどさ。

「...ユーリちゃん、大丈夫かね。」

「あっ君とまではいかなくても、過酷な人生を歩んできたからね。決定的な裏切りとかがない限り、大丈夫だと思うよ。」

「なんなら、連れてきたら説明しておくか。」

 そう。俺達がやろうとしている事は、IS学園の襲撃及びユーリちゃんの拉致。
 エグザミアのスペックが露見してしまった今、何かしらの悪意に狙われるだろう。
 だから、会社よりも“被害者”にする。そのために拉致するのだ。

「エグザミアは今は学園が預かっているから...。」

「俺が侵入して取ってくるさ。以前、千冬に付き合って奥の方に入ったからな。」

「じゃあ、任せるよ。ジャミングとかはこっちに任せて。」

 まぁ、以前に俺が入っていなくても、その気になれば内部構造は分かるけどな。

「決行は?」

「早い方がやりやすいかもねー。」

「じゃあ、明後日の朝でいいだろう。」

「...仕掛ける側が言うのもなんだけど、割とひどいね。それ。」

 ただでさえ混乱している状況なのに、その上早朝に仕掛けるのだ。
 パニックになるだろうから、確かにひどいな。
 まぁ、“悪”として名を知らしめるにはこれぐらいしないとな。
 それに、下手に対策されると誰かを殺してしまうかもしれないし。

「警戒すべき相手はどれくらいかな?」

「まずISを使える連中だな。その中でも要注意が千冬と秋十君、マドカちゃん。次いでラウラ、生徒会長、山田先生、キリエとアミタって所か。ユーリちゃんは精神状態から搦め手に弱くなっているだろうし、他は実戦経験が少ないのが多い。」

「ゴーレムじゃ厳しいかなぁ。」

 まぁ、ゴーレムは以前学園に来た数とは比べ物にならないけどな。
 その代わり、ISコアを使用していないから滅茶苦茶弱いが。

「いざとなれば俺がゴーレムの指揮を執る。想起も暮桜もない千冬と、今の秋十君やマドカちゃんなら相手にできるだろう。」

「油断はよくないよー?」

「いや、しねーよ。できねーよ。既にどれぐらい強いかは知っているしな。」

 最終世代としての性能を使わなければ一人ずつしか相手にできないだろう。
 それほどまでに強いからな...。

「じゃあ明後日の朝に決行だね。...気を付けてよ?この状況なんだから、ちーちゃんが私たちに対して相当警戒しているだろうから。」

「ああ。わかっているさ。」

 おそらく、突入前に気づかれるだろう。
 それでも、数はこちらの方が多い。短時間なら押せるはずだ。

「話は聞かせてもらったわ!」

「人類は滅ぼげらっ!?」

「いきなり現れてふざけないでください。俺も反応に困ります。」

 四季さんと春華さんの突然の登場に、手元にあったPCのマウスを投げつけてしまった。
 見事に四季さんの顔面に命中したが、当の本人はピンピンしてた。

「しっかりツッコミが出来てるじゃないか。」

「咄嗟の反応ですよ...。まったく、それで、何の用ですか?」

 この人達は本当に何を考えているのかわからない。
 俺や束でさえ予想だにしない事を仕出かしたりするのだ。

「千冬の足止めは、俺達に任せてもらおう!」

「失踪したはずの親が邪魔してくるとかなかなかひどいですね。」

「ぐはぁっ!?」

 皮肉を言ったら吐血するような動きをして膝をつく。
 ...いや、この人は何がしたいんだ...?

「とにかく、IS学園襲撃は私たちも参加するわ。」

「...いいんですか?そんな事をすれば...。」

「貴方達は私たちにとったらまだまだ子供よ。大人に任せなさい!」

 いい事言ったつもりな春華さんだが、俺達には楽しんでいるのが丸わかりである。
 ...ホント、何考えてるんだこの人達は...。

「...まぁ、そこまで言うのなら...。」

「ちょっと二人を加えてでの動きをシミュレートするねー。」

 束に作戦の組み立てを任せ、俺は二人の相手をすることになる。
 ...二人の相手は苦手なんだが。











   ―――賽は投げられた。

   ―――世界は乱れ、混乱に満たされるだろう。

   ―――後は、その矛先を一つの未来に収束させるだけだ。









 
 

 
後書き
これ以上やると長引くので短めで終了です。

この小説の目的に、凡才(秋十)が天才(桜)を打ち倒すというものもあるので、最終章である次回からはそんな展開になっていきます。
...原作?ナニソレオイシイノ? 
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