魔法薬を好きなように
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第32話 神官と再会と
ジュリオ・チェザーレとかふざけた名前をつけたロマリアの神官のところでサイレントの魔法をかける。これで、魔法の同時使用は不可能だ。
「それで、具体的な用件はどのようなことでしょうか?」
「ミスタ・アミアンに尋ねたいのは、水源地で何をしていたかということかな?」
色々と省略されている質問内容だが、水源地というとサウスゴータでの件に違いない。さて、どうしようかと思ったが、元々は風竜に乗っているのがばれているようだから、本来の目的は言ってもかまわないだろう。多分。
「……アンドバリの指輪の所在地がそこだとわかりましたので、それを探しに行ってました」
「ふーん。それは大変だったね」
にこやかに答えてくるが、異端審問とか言われそうで、胃が痛くなりそうだ。
「それで、その指輪は見つかったんだね?」
「ええ、まあ」
「っということは、誰と接触したのかな?」
「……シェフィールドという女性から取り戻してきました」
「おやおや。シェフィールドというと、元皇帝の秘書ではないかね」
ガリア王の使い魔ということにばかり頭がいっていて、そっちを忘れていた。これはひとつの手札をきるしかないだろう。
「アンドバリの指輪は、ラグドリアン湖にいる水の精霊との契約により、取り戻すこととなりました。その時にアンドバリの指輪を取り戻す際の限定として、相手の精神を虚ろにする魔法が使えるというのを、水の精霊よりうけとったのです」
「なるほど。それは先住魔法だということかね」
「ええ。先ほども言った通り、使用できるのはアンドバリの指輪を取り戻すために限定されていますよ」
「その証明は水の精霊にきけばよいと君は言いたいのだね」
まさしく、しかり。
「ええ、その通りです」
「なるほど。まあ、そっちの重要度は低くてね」
おい。こっちは、胃が痛かったんだぞ。この先、何をはかせたいんだ。お前は。
「風竜を操ったそうだね」
「いえいえ。水の精霊のお願いを使い魔のルーンを経由してお願いしただけですよ」
「そのルーンを見せてもらっても良いだろうか?」
拒否権はないだろうよ。
「左上腕にルーンがありますので、一旦、服を脱ぎます。それで、サイレント……音を遮断する魔法は一度途切れるのですが、よろしいですか」
「かまわないよ」
そういわれて、軍杖は腰にもどして、左上半身をみれるように服を脱いで、ルーンを見せると、はっきりと興味が失せたように
「もういいよ。思っていたルーンとは異なったしね」
思っていたルーン?
疑問に思うが、それよりは、とっとと逃げにかかるか。
衣服を整えて、
「それでは失礼いたします」
部屋からでたところで、ため息をつきたくなるが、それよりもとっとと、この場所を離れるべきだろう。
ジュリオとしては、ルーンがヴィンダールヴではないかとの疑惑の確認のためであり、それ以外は些細なことであった。ただし、この時点でシェフィールドがガリア王国ジョゼフ王の使い魔だと気がついたのであれば、また話は異なっていたであろう。
翌日夕方、トリステイン魔法学院の再開まで暇を持て余している俺は、親父の代わりに男爵家のパーティに出席することにした。親父がアルビオンでの退却戦で1人の剣士が足止めを行なったという、ものすごくうさんくさい話の真偽について担当することになったとのことだ。
そしてパーティ会場をすすんでいった中、目にとまったのは、若々しい夫人っぽい感じのパーティドレスを着ているティファンヌだった。こちらから声をかけるか迷ったが、夫がすぐそばに居ないようなので、こちらから声をかけるのは遠慮した。
ただし気になるもので、たびたび目をむけていると、ティファンヌと視線がからまった。
一瞬戸惑ったとうな顔となり視線をはずされたところで、まあ、そうだろうなと思った。
しかし、再度視線をむけてきて歩いてくると、
「ミスタ・アミアン、一曲踊っていただけませんか?」
「夫の紹介が先だと思うのだけどね? ケルシー男爵夫人」
「今日は私1人での参加ですの」
新婚早々に1人でパーティ参加ってってなんだそれと思いながら、一緒に曲いのって踊りつつ、またしてもティファンヌから脅かされることがあった。
夜の密会の合図がきて、とまどってしまった。ティファンヌが少々自由奔放な面があるとっても、新婚早々だぞ?
「ダメ?」
「……そうじゃないけど」
意図が察せずに、曖昧に答えたが、踊りの終わり間際に
「次はいつもの男爵家のパーティでも」
と、使い魔となる前の暗語で『次は』というのはこの後、『いつもの男爵家のパーティ』というのはいつもの宿ということだろう。
ティファンヌが他の夫人と話してからパーティ会場をでていったのをみて、時間をずらして出ていくのに1曲別な女性とおどってから、いつもの宿に出向いた。
いつもの宿ではいつもの偽名を使い部屋を取ろうとしたら、先客がいるとのことで、ティファンヌだろうと、知らされた部屋の前まで行って、ノックをためらったがここまできたんだと、ノックをする。
「どなた?」
「ジャックだ」
「入ってちょうだい」
俺はドアをあけると、先ほどのパーティドレスを着ていたティファンヌが居る。
「やあ、ひさしぶりだったね」
「こっちこそ、事前に言わないで結婚しちゃって」
「いや、命にかかわることだから、仕方がないと思うよ。それよりも、パーティに1人で参加って新婚早々にどうしたんだい?」
「あのねぇ、私、多分、もうすぐ離婚すると思うの」
「えっ?」
そもそも離婚が成立する用件って……
そんな、不思議そうな顔をしてたのがわかったのか、
「あのね。私って、結婚式をあげていないのよ。だからまだ結婚は不成立だから……」
「だから?」
「近いうちに実家にもどることにはなると思うの」
「性格の不一致ってやつか?」
「うん、まあ、そういうのに近いのかも……」
「無理に聞くような内容でもないけどな」
女性が話したくない内容は聞かない方が良いのは、あくまで自分がソースなだけだ。
「どうせ、あとである程度はわかるんだから言っちゃうね。実は夜の生活の不一致っていうやつ。下手なのに、こっちのせいにして」
「……下手って言ったのか?」
「さすがに私でも言わないわよ。態度にでていたかもしれないけれどねぇ」
俺は心の中で下手と思われた相手に多少は同情した。
直接言われると、もっときついだろうけどな。
「っていうことで、家にいても雰囲気は悪いし、気分転換でパーティにでてみたら、ジャックが居たってわけ」
「じゃあ、今日は時間がとれるのかな?」
「そうね」
「つもる話しもあるし、さっきのパーティでは食事をとりそこねたし、一緒に食事でもどう?」
「いいの?」
「そちらの夫にわからなければ問題なし」
「って、まさか、貴方、私を口説こうとしているの?」
「そのつもりだけど」
そう言いつつも、夕食をオーダーするために呼び鈴を鳴らした。
後書き
これにて、本作は終了したいと思います。
皆さまありがとうございました。
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