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真田十勇士

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巻ノ八十六 剣豪その六

「姫路城で少し」
「あったのですか」
「天守閣で、そしてです」
「そのことで、ですか」
「池田様に暫しいて欲しいと言って頂き」
「そうしてですな」
「ここにおる次第、そして」
 幸村を見てだ、宮本は言った。その目の光を鋭くさせて。
「貴殿達は普通の方ではないですな」
「普通ではないとは」
「それがしは剣術だけと言っていいですが」 
 しかしというのだ。
「他にも様々な術を備えていますな」
「それは」
「いや、見ればわかること」
 宮本は微笑んでこう返した。
「目と身体つきで」
「そうですか」
「特に貴殿は」 
 根津よりも幸村を見て言うのだった。
「かなりの気品をお持ちですな、大名かそのご子息か」
「そう言われますか」
「言葉は信濃の訛り。では」
「宮本殿、それ以上は」
 根津がだ、すっと前に出て制止した。
「お願い出来ますか」
「いや、それがしもそうしたことはしませぬ」
「左様ですか」
「拙者と手合わせをしたくて来られたのですな」
「はい」
 根津も幸村にはっきりと答えた。
「左様です」
「ではです」
「このことはですか」
「これ以上は聞きませぬ」
 確かな声での返事だった。
「決して」
「さすれば」
「はい、これ以上は言いませぬ」 
 また約束をした。
「何があろうとも」
「そうして頂けば何よりです」
「では手合わせを」
「それがしもですが」 
 幸村は宮本にあらためて言った。
「実はこの者と特にです」
「そちらの方と」
「はい、お願い出来ますか」 
 宮本に対して頼んだ。
「その様に」
「そちらの方は剣術ですな」
 宮本は根津をあらためて見て述べた。
「それも尋常ではない腕ですな」
「それも見てですか」
「はい、わかります」
 幸村に答えるのだった。
「やはり目と身体で」
「そうですか」
「これだけの御仁、それがしもそうそう見たことがありませぬ」
 吉岡一門等多くの者達と死闘を繰り広げてきた彼でもというのだ。宮本の生涯はまさに決闘の生涯であり多くの者達と戦ってきたがだ。
「どれだけの修羅場を潜り抜けてこられたか」
「わかりませぬ」
 根津はにこりともせず答えた。 
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