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真田十勇士

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巻ノ八十五 猿飛大介その十二

「確かに関白様を高野山からお救いしてじゃ」
「その後はどうにかですか」
「生き延びられる様にも出来た」
 それはというのだ。
「しかしそれでも関白様の奥方、お子の方々も助からなかった」
「あのままですな」
「首を撥ねられておった、それにあの方も武士であられた」
「だからこそ」
「あの方は逃げられなかった」
「そして」
「あの様にな」
 腹を切ったというのだ、潔く。
「そうされたのじゃ」
「そうなのですか」
「そうじゃ、しかし御主はまだ」
「無念に思っております」 
 沈痛なその顔に本音が出ていた。
「実に」
「だから今も関白様の墓参りをしておるか」
「左様です」
「そうか、そしてあの方のお言葉をか」
「忘れておりませぬ」
「それもあり天下一の武士をじゃな」
「目指しております」
 実際にというのだ。
「そうしております」
「そうか、ではな」
「これからも」
「その道を歩め、そしてまことにな」
「天下一の武士になれと」
「わしからも言う、御主の道は険しい」
 天下一の武士の道、それはいうのだ。
「しかしその道を歩むのならじゃ」
「最後までですな」
「行くのじゃ、よいな」
「わかりました」
 確かな声でだ、幸村は答えてだ。父にも誓った。そのうえでこの日も十勇士達を連れてそうしてだった。その秀次の墓に参った。彼等の脚を以てすればすぐだった。
 そしてだ、秀次の墓に花や果物を捧げてから言ったのだった。
「それがし、決して忘れませぬ」
「我等もです」
 十勇士達も言うのだった。
「関白様からのご恩を」
「殿、それでなのですが」
「関白様のことは」
「我等も残念に思っています」
「そして関白様のお言葉をです」
「胸に持っております」
「うむ、拙者は関白様にも誓っておる」
 確かな顔での言葉だった。
「必ず天下一の武士になるとな」
「そして我等も」
「天下一の忍になりまする」
「そして時が来れば」
「その時は」
「それに相応しい働きをしようぞ」
 こう十勇士達にも言ったのだった。
「よいな」
「関白様に誓った通りに」
「そのままに」
「そうしようぞ、ではこれより御主達にはさらにな」
 これまでの様にというのだ。
「天下を巡ってもらうぞ」
「わかり申した」
 十勇士達は応えてだ、そしてだった。 
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