ハイスクールD×D 黒龍伝説
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1話
前書き
匙を主人公にしてみようと考えたら、意外にも簡単だった
「情報通りだな」
監視していた家から女性が家から出てくる。念のための細工を女性に施してから気付かれない様に後を追いかける。しばらく追跡していると、町外れの廃墟に女性が入っていく。ここに何かがいるのだろう。追いかけようとした所でオレが通う学園の生徒会の人達が現れる。
「まさかあの人達が?」
オレは女性に施しておいた細工と同じ力を使って廃墟の中を覗く。廃墟の中ではオレが付けていた女性を盾の様にしている男とそれに対峙する生徒会の人達がいた。つまり生徒会の人達もオレと同じ側の者だと思えば良いのか。
「まずい、ラインよ!!」
女性を盾にしていた男は自分を囮にして背後から蝙蝠達で襲わせようとしていた。オレは覗き見に使っていた黒いラインの先端を尖らせて蝙蝠を貫かせながらオレの方からも新しく30のラインを伸ばす。その内25を生徒会の人達を守る様に配置し、残りの5を女性を盾にしている男に向ける。オレ自身もラインを操る精度を上げる為に廃墟に突入する。
「学園の制服!?」
「余所見をするな!!」
オレが現れた事でまた生徒会の人達の動きが止まり、蝙蝠達が隙を点こうとする。守りに着かせていた25のラインの幅を最大にまでしてドーム状にして防ぐ。ついで男に向けていた5のラインを接続し一気に魔力を引き抜く。急激な魔力の減少による虚脱感によって体勢が崩れた男の顔面に蹴りを入れる。気を失うまで全力で蹴りを入れながら、ラインによって体力や生命力を奪い続ける。
「ちっ、予想以上にしぶといな」
2分程蹴り続けてようやく男が落ち、生徒会の人達をラインのドームから解放する。
「貴方は何者なんですか?」
ドームを解放した生徒会の人達の中から一人が一歩前に出てオレに問いかけてきた。
「駒王学園1年匙元士郎です、支取会長」
防御に使っていた25のラインは戻さずに影に潜ませながら、追加で透明なラインを10追加で展開する。透明な内の3はオレの防御用に、残りは生徒会の人達に接続しておく。
「こちらのことは知っている様ですね。表の方は」
「表か。確かにそうだな。会長とこの男は同類、生徒会の他の人は近いけど違う」
オレの言葉に全員が驚くも会長と副会長以外は戦闘態勢を取らない。甘い、甘すぎる。オレは敵ではないと確定していないのだ。それどころかオレはまだラインを展開しているのだ。戦闘態勢を取る事は無礼と取られる事はない。
「貴方のバックには誰かいるのですか?」
「それを正直に話すとでも?」
ようやく生徒会の全員が戦闘態勢をとります。まあ、それも意味をなくすがな。
「と、言いたい所ですが、オレはこの娘の妹に頼まれて来ただけですよ。最近、姉の様子がおかしくて、日常的に暴力を振るうどころか昨日から異常な怪力を見せ始めたって。それだけですよ」
そう言って見えるラインを全て回収して敵意がない事を見せる為に両手を挙げる。
「先程から素直に質問に答えている訳ですが、一つだけ聞かせてもらえますか?」
「なんでしょう?」
「会長達は一体何なんです?こいつみたいなのは今までにも数回戦ってますけど、まともに会話も出来ない奴ばっかだったものでさっぱり分からないんですけど」
「知らずに戦っていたのですか!?まさか神器の事も?」
「神器?」
「貴方が使っている黒い物の総称です。詳しい名前まではちゃんと調べない事には分かりませんが、神器で間違いないでしょう」
「なるほど。それで、オレの質問の方は?」
「そうですね、率直に答えましょう。私達は悪魔です」
そう言って生徒会の人達に蝙蝠の様な羽が現れる。あ~、さすがにちょっと予想外だったな。
翌日、オレは生徒会室に呼び出され、詳しい説明を受ける事になった。意外とめんどくさいことが判明したが、会長は真摯に事細かに説明してくれた。そして最後に眷属に、転生悪魔にならないかと問われた。オレは答えを保留してもらい、会長の人となりを知る為に生徒会への所属を願い出た。結果、オレは庶務として生徒会に所属する事になる。
生徒会に所属する事になったオレは、生徒会の仕事を教えられながら会長や副会長の悪魔の仕事に付き添って見学や補助を行わさせてもらっている。たまにあるはぐれ悪魔の討伐は黒い龍脈のラインがギリギリ届く位置からの覗き見だけしかさせて貰えない。さすがに偶発的な戦闘ならともかく、眷属ではない者を連れて行く事は出来ないと言われれば素直に下がるしかない。たまに手を出したくなる様な事体に陥っているが、歯を食いしばって我慢する。戦闘が終わった後に黒い龍脈の力を応用して治療を行うのは許されている。
オレの持つ神器、黒い龍脈はラインを接続する事で接続対象から力を吸い取る事の出来る神器らしいのだが、オレが昔から色々と使い込んでいる所為で吸い取る物を選択出来る上にラインをオレから切り離して別の対象に繋げる事も可能で、不可視化やラインの本数、ラインと視覚の共有や吸い取った物を蓄えておく能力など資料外の性能がごろごろと判明している。それも仕方のない事だろう。黒い龍脈はオレだけの神器じゃないからな。
そしてしばらく時が経ち、2年へと進級したすぐ位に隣のクラスの兵藤が堕天使に殺され、会長と同じく悪魔であるリアス・グレモリー先輩によって転生悪魔となったそうだ。そして、堕天使に関してはグレモリー先輩達、オカルト研究会が対応することになった。することになったのだが、この場合は不可抗力だよな。
「死んでもらうっす!!」
「甘えよ」
生徒会の仕事を終えて帰宅する途中にゴスロリ服の堕天使に襲われた。まあ、最初の軽い会話の内にラインを接続しておいたので一気に光力を引き抜いてダウンさせる。そのまま軽く記憶を漁らせてもらう。こいつらの目的が分かればこれ以上の被害者を防げるからな。
「ちっ、まずいな」
携帯を取り出して会長に連絡を取る。
『どうしましたか、匙』
「帰宅中に堕天使に襲われましたので正当防衛で気絶させてます。ついでに記憶を少し漁ったんですが、奴らの目的が判明しました。グレモリー先輩から伝わってきていた兵藤が接触したシスター、彼女から聖母の微笑みを抜き取る事です。その儀式がもうすぐ始まるみたいです」
『……少し待って、いえ、場所は分かっていますか?』
「町外れの廃教会です」
『では、そちらに向かって下さい。ただし、突入はしない様に。指示があるまで隠れていて下さい』
「了解しました」
まずは目の前の堕天使から情報を更に抜き出す事にする。抱きかかえてベンチに寝かせて、ラインを接続し直す。ほぅ、かなり上の方の堕天使に気に入られているのか。なら、殺すのは無しだな。貸しにしておけば良いだろう。だがオレの事を覚えていてもらっては困るからな。オレに関する記憶だけは完全に吸い取らせてもらう。それから、駒王での出来事の曖昧にしておくか。最後に駒王からすぐに離れる様にメモを置いておけば良いだろう。
そして廃教会に向かう前に、姿を見られても問題無い様に制服を脱いで黒いTシャツに着替え、ゴーグルとマフラーで顔を隠す。次いで、ラインを周囲の家の屋根へと伸ばして手繰り寄せながら跳躍する。着地せずに次の屋根へとラインを伸ばして空を駆ける。
廃教会に到着したオレは少し離れた位置から慎重に不可視状態のラインを廃教会へと伸ばし、中の様子を監視する。地上の教会部分には神父服を着た男が一人だけで、残りは地下にいるようだ。男にラインを接続して更に地下へとラインを伸ばす。地下にはかなりの人数のはぐれエクソシスト、それに翼の数から中級だと思われる堕天使が一人、そして十字架に張り付けにされているシスターが一人。
オレは儀式に使われている呪具にラインを接続して注ぎ込まれる光力を怪しまれない程度に吸い上げる。これで少しは時間が稼げるはずだ。しばらくすると、廃教会の前に兵藤がやってくる。それに続いて木場と塔城さんも追い付き、兵藤に何かを話している。そしてオレにも会長から電話がかかってくる。
『匙、貴方にはオカルト研究会の三人の援護を行ってもらいます。私達はすぐにそちらに向かう事は出来ませんが、後ほど合流します』
「優先目標は?」
『シスターの保護を。ついで主犯格の堕天使の確保、無理なら処分を』
「了解しました」
電話を終えたオレは物陰から姿を現し、オカルト研究会のメンバーの元へと向かう。
「誰だ!?」
兵藤がオレに気付いて構える。木場と塔城さんも構えをとる。ああ、そうか、顔を隠していたな。マフラーとゴーグルを外して顔を見せる。
「生徒会庶務の匙元士郎だ。援軍に来た」
「悪魔じゃないのにかい?」
「問題無い。オレの神器は特別だからな。こんな風に」
呪具に溜まっている光力を全て吸い上げてみせる。そうすることによってオレの身体に光力が入り込む。
「「「っ!?」」」
オレが光力を得た事で三人が一歩下がる。
「それに戦いにも慣れている。オレだけでも対処は可能だが、オレも会長からの命令があるからな。主犯の堕天使を確実に捕縛する必要がある」
「分かったよ。リアス部長からも生徒会からの援軍があるとは聞いているから」
「なら、行こう」
光力で強化した肉体で教会の扉を蹴り開ける。
「おやおやぁ~、悪魔さんご一行に」
下品そうな笑みで何かを言おうとしたはぐれ神父に接続していたラインではぐれエクソシストの血中酸素を吸い取らせて一気に落とす。いきなり倒れたはぐれエクソシストにオカ研の三人が驚いているが説明はしない。
「こっちだ」
ラインのおかげで迷うことなく地下への道を案内する。
「なあ、匙。なんでそっちだって分かるんだ?」
「神器で偵察は終わっている。優先目標のシスターの為に儀式の妨害も既に終わらせてある。神器の特性を良く理解した上で使いこなせば簡単な事だ。止まれ。扉の向こうで敵が構えている。此所から無力化する」
扉の向こうで銃を構えている奴らを上で倒れているはぐれエクソシストと同じくラインを接続して血中酸素を吸い上げて無力化する。件の堕天使が驚いているのが手に取る様に分かる。
「制圧完了だ。行くぞ」
教会の入り口と同じ様に扉を蹴り開けて中に入る。同時に光力で作られた槍が飛んでくるのをラインを壁にして防ぐ。
「ばかな、私の槍が」
「ああ、兵藤。シスターを助けるのは少し待て。すぐにこの堕天使を捕縛するから」
「たかが人間風情が舐めるな!!」
「いや、遅いから」
はぐれエクソシストにラインを接続した時に、ついでにこの堕天使にもラインを3程仕込んでおいた。
「ラインよ!!」
見せる様に新たに3のラインを堕天使に伸ばしながら仕込んでおいた不可視のラインで動きを封じ、新たなラインを接続し光力を全て抜き取る。そのまま見える方のラインで簀巻きにして転がしておく。ついでに無力化したはぐれエクソシストも全員簀巻きにしておくか。ついでに光剣と銃を貰っとこう。
「兵藤、そっちは終わったか?」
「ああ、アーシアも気を失ってるだけだ」
「なら、とっとと離れ、るのはまずいな。他にも敵が居るかもしれないからな。しばらくは待機だな」
しばらく待っているとグレモリー先輩と姫島先輩と生徒会のメンバーが集る。
「無事の様ですね」
「そちらこそ大丈夫でしたか?」
「ええ、問題ありません。匙、報告を」
「神器持ちのシスターは無事に保護、主犯と思われる堕天使はそこに転がってます。堕天使の配下のはぐれエクソシストも全員拘束。負傷者0です」
「そちらも問題無かった様ですね」
「はい。それでオレ達はどうします?思っていたよりも数が多いんですが」
簀巻きにしているはぐれエクソシストを指差して尋ねる。
「そうですね、リアス、私達はこちらをどうにかしておきます。堕天使の方は任せます」
「ええ、ありがとうソーナ。それから匙君だったかしら、貴方もありがとう」
「いえ、大した事じゃありませんから」
グレモリー先輩からのお礼の言葉を受け取り、簀巻き状態のはぐれエクソシストを引きずっていく。
「匙!!」
階段を数段上った所で後ろの方から声をかけられる。オレはそれに振り返らずに答える。
「なんだ、兵藤?」
「その、今までお前の事を悪く思ってたけど今回は助かった。ありがとう!!」
「感謝するなら覗きを止めろ。特に壁に穴を開けたり、カメラを仕掛けたりするのを。修理や駆除をするのも面倒なんだよ」
「お前が邪魔してたのかよ!?」
「学園での面倒事の大半はオレが処理してるんだよ。手間をかけさせるな。まあ、今回みたいに荒事で助けが欲しいなら言って来い。手があいてたら助けてやるよ」
ひらひらと手を振って階段を再び上っていく。これで少しは修理が減れば良いんだけどな。まあ、無理だろうな。
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