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銃器と幻想は相容れず。

作者:reimu@0516
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序章 嵐の中へ

 
前書き
はじめまして。名も無き物書きの小説へようこそ。

さて、このサイトでは処女作となります。

何故か 東方×海上自衛隊 の組み合わせを選んでしまいました。
取り敢えずスタートです。 

 
202X年 9月下旬

長崎県中通島東海上 約10㌔地点


「『ましゅう』、本艦との平行航路を離れる」
「了解した。進路そのまま、両舷第2戦速」
「進路そのまま、両舷第2戦速」

鉛色の雲が空を覆っていた。
艦橋のガラスを雨が音を立てて強く叩く。先刻から暴風も著しく酷くなっていた。

今年1番の勢力を誇る台風17号が九州北部を襲う中、海上自衛隊佐世保基地所属の第2護衛隊群の次世代型ステルス艦『まきなみ』は一路対馬沖を目指していた。
米海軍との合同訓練をフィリピン沖の西太平洋で行ったあと、『まきなみ』は佐世保基地へ帰港するために東シナ海を北上していた。
まもなく長崎県本土と五島列島を隔てる角力灘に入ろうとしたところ、《対馬西方沖の韓国EEZ(排他的経済水域)にて中国海軍艦艇と韓国海軍艦艇が睨み合っている》と第2護衛隊群司令部から報告が入ってきた。
韓国海洋警察巡視船と中国海洋監視船の間で発生した韓国の排他的経済水域における中国漁船拿捕を巡るトラブルが両国当局の不手際も重なり軍艦を巻き込んだ局地的緊張を生み出したのだ。
すぐさま第2護衛隊群司令部を通して自衛艦隊司令部から《状況の監視に当たれ》との指令を受け北上を続け平戸沖から対馬海峡へ抜ける事にした。
現場海域より東側に離れた対馬沖日本領海内には、同護衛隊群『てるづき』が先に現着しており、膠着した状況を東京へ報告しつつ監視していた。
『まきなみ』の追加派遣は監視活動に入っている『てるづき』のバックアップを想定したものと受け止めていた。
先程、同じく佐世保基地所属の補給艦『ましゅう』より燃料及び武器弾薬の補給を受けた所である。荒波の中の補給活動は至難の業だが、熟練の乗組員達はそれをやってのけてくれた。


荒れ狂う海上を進み、収まらぬローリングとピッチングに襲われる中、艦橋は独特の緊張感に包まれていた。
先行した『てるづき』からは《両軍艦艇が160mを挟み艦外スピーカーを用いた警告を発し続けている状況》という事だ。そのようならば対艦ミサイルを用いた水上戦闘は現時点では有り得ないだろう。
しかし、自衛艦隊司令部引いては海上幕僚監部が恐れているのは両軍艦艇による主砲や機銃を用いた砲撃戦へ発展するケースである。そうなれば死傷者が出る事が予想され、さらなる増派で中国と韓国の本格的な軍事衝突へ繋がる可能性すらある。
その時点になれば『まきなみ』『てるづき』の2隻が無傷でいられる保証はない。その頃に護衛隊群本隊が到着するのを祈るしかないのだ。



「…漁船拿捕ごときでなんで海軍艦艇派遣する騒ぎになるんだよアホ」

副長兼船務長の山川修2等海佐の悪態に、艦長の三浦俊彦1等海佐は同様の念を抱いた。
今回の両国の対応はあまりにも稚拙と言わざるを得ないものだった。子供同士のちょっとした諍いが大ゲンカとなり、そして互いの親が介入して睨み合うような愚行が、中国と韓国の間で繰り広げられているのだ。
国際法や海洋条約の観点から見ても極めておかしいものである。
異様なのは状況だけでなくその海域である。
両軍が居るのは韓国の排他的経済水域。何らかの軍事行動を起こさない限り軍艦のEEZ内通行が認められる無害航行が一般的な現代において韓国EEZに中国海軍艦艇が居るのは珍しくない事だが、その韓国の海軍艦艇と対峙するとなると話は別となる。
そもそも何故中国海洋監視船が韓国EEZへ接近していたかと言うと1週間前にも発生した中国漁船拿捕である。
EEZ内を逃亡する漁船に巡視船を体当りさせ強行逮捕を執行した韓国側に中国が反発、『自国の漁民を守るための正当な防衛行為』と称して海洋監視船を韓国EEZの外側で遊弋させていたのだ。当然韓国側も抗議したが中国は聞く耳持たず、そうして現状況が生み出されたのだ。

「台風17号の中心まで30㌔です」

海洋天気を担当する古川気象長が台風下でも危険な中心海域に『まきなみ』が接近している事を知らせた。さらにローリングが激しくなってきた。

「しかし、この荒れ模様の中でよくも飽きずに睨み合えますね」
「全くだ、両軍共にシャレにならん状況であるのは分かっているはずだが」
「そんな意地っ張りになる事なんですかねぇ両国政府も」

山川の呆れ口調に、三浦も同調する。当該海域は台風の左側にあり 、右に入ったこちら側よりは幾分マシであろう。それでも台風中心に近ければさほど差がなくなってくる。その状況下で争うとは、もはや両軍がバカをやっているようにしか思えてきて仕方ない。
しかし、韓国と中国がここまでに強硬姿勢を取るのは三浦にとって意外だった。
北朝鮮による核開発がなおも予断を許さない状況にある東アジア情勢をさらに混迷に陥れるのは確かだ。

「ま、我々自衛官は政治状況に囚われず与えられた任務を全うする事が仕事ですから。この話題はここまでにしましょう」

そうだな、と山川に同調するために頷いた瞬間である。
いきなり目の前が真っ白になった。
それと同時にタダでさえ足元が不安定だった艦橋が重い衝撃に襲われた。
ローリングに対し踏ん張っていた三浦の足が瞬間的に地を離れた。そのまま吹っ飛ばされて何かの計器に頭をぶつけた。凄まじい痛みが後頭部を襲う。幸いまだ視野はあった。

「…艦……大………です………」

山川の声が少し遠い気がした。気のせいか。

「…雷発生………を受けま……………………」

どうやら気のせいではないようだ。
何も考える暇も無く、三浦の意識は闇へ引きずり込まれた。 
 

 
後書き
東方×ミリタリー。
かなりバランス難しいジャンルですね…。
と言いつつ早速オリジナル艦艇登場とか何考えてるんでしょうか。といっても海の無い幻想郷で活躍する場ってほとんど無いですね。

自衛隊側の主人公がダブルキャストで早速登場です。

第1話における設定
登場人物

○自衛隊側
・三浦俊彦1等海佐
第2護衛隊群『まきなみ』艦長。

・山川修2等海佐
同『まきなみ』副長兼船務長。

・古川新1等海尉
同『まきなみ』気象長。

登場艦艇

・おおなみ型ステルス護衛艦『まきなみ』
第2護衛隊群第2護衛隊(佐世保基地)所属

艦艇諸元については追々物語の途中で説明してまいります。 
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