守りたいだけ
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事の始まり
前書き
素人ですが、適当に目を通してもらえれば嬉しいです
「響也、お母さん買い物行ってくるよ」
僕は返事をしようとしたが、罪悪感と後ろめたさにより何も言わなかった。
母は言うと玄関の戸を閉めた。きっと今日の夕飯の材料を買いに行ったんだろう。
秋の下旬となり、少し肌寒さと冬の近づきが感じるようになった今、僕は絶賛引きこもり中だ。引きこもり生活を始めていよいよ今日で2ヶ月ぐらいたっただろうか。
正直、親には申し訳ないとは思っている。
それもそうだ、高校生活の序盤に息子が学生からニートへと転職したのだから。いやニートは職業に部類されるのだろうか。なんにせよ自宅警備を言い訳に部屋にこもってゲームやら漫画やらを読んでいる奴らと変わりはない。
申し訳ないと思いながらも僕が引きこもりをしている理由、それは僕が学校でイジメを受けているから。そして自己防衛のために学校へ行ってない、ただそれだけのこと。
中学校から僕はずっとイジメを受け続けていた。そして進級して少し離れた学校へ通えば、と思っていた自分が馬鹿だった。
新たな学校生活でも僕をイジメていた奴らがいた。そしてまたあの日々へと繰り返している。もうあんな惨めで辛苦の詰まった想いはしたくないのに。
教室に入ると、女子は下級等生物でも見るような目で僕を心から蔑み、なんでもなかったかのように普通に戻り、男子はみんな揃って僕を嗤ってゴミや暴言こちらへ打つける。
机には油性ペンや傷を付けて罵倒の文字が刻み込まれている。どうせまたあいつらの仕業だろう、もう慣れというか呆れ果てるまでともなってしまう。
そして休み時間は毎回トイレに連れて行かれると恥ずかしい格好をさせられて、放課後になるとプロレスごっこだのボクシングだのを装って集団リンチを繰り返し、月の終わりには僕の財布から小遣いが奪われる。
嫌なことを思い出して気を悪くしたため、何か飲み物が欲しくなり一階へと階段を降りた。
「痛っ!」
瞬間、頭に尋常ではないほどの激痛が走った。と同時に階段を踏み外し、そのまま下へ転げ落ちてしまった。
「痛いなぁ、もう。なんでこんなについてないんだ」
尻もちを付き、強打した腰を撫でながら、体のあちこちをぶつけた痛みを和らげるために少し横たわった。
とりあえずポッケに入っている端末の安否を確認するとニュースが入った。
『女学生を中心とした計画か 連続通り魔、目撃者おらず』
あーあ、可哀想になぁ、と思いながら僕はそのまま目を閉じリラックスする。世の中物騒だな、しかもここ周辺ではないか。
ニュースを見る限り、女学生にしか被害が出てない。特殊な性癖の持ち主なのだろうか。それとも同性愛、まぁどちらにせよ僕には関係なさそうだ。
しばらくしてだろうか、家のインターホンがなった。
「誰だ僕ん家に、居留守でも使うか」
と静かに息を殺していたのだが、一向にインターホンが鳴り止まない。
「まさかあいつら!」
嫌な予感がしたので、窓から外を確認しようと自分の部屋へと急いだ。すると同時にインターホンが止んだ。不思議に思い、一応窓から覗くと誰もいなかった。
再び階段を降りて玄関に向かう。そしてゆっくりと、ゆっくりとドアの隙間を空けていく。
「響也!」
いきなりの大声とともにドアが一気に開かれた。
ビビって尻もちを付き、さらに腰を痛めた。
「ってーな、誰だよ! こんな常識知らずは、勝手に人の敷地に入ってくるなよ!」
まぁ、毎度のことだから誰がだなんて分かり切ってることなんだけど。
「こらまた学校サボって、たまには外でないと健康に悪いよ」
常識を知らない上人に説教をかましてくるこの女は、僕の幼馴染み柊 静愛だ。
家が近所なものだから頻繁にこうして人の家に不法侵入してくるのだが、家族ぐるみで仲良くやってるのでそんなことは一切気にしないのが世の末。
「『健康に悪い』って、普通『身体に悪い』って言うもんじゃない? あと事情知ってるくせに何くだらない冗談言っちゃってんの」
「いいじゃない、さして大したことではないし」
同い年でも精神年齢は別なようだな。あとそれで大したことないなら『心臓に悪い』ってのも『心に悪い』って言うのも変わりないってことになっちゃうんですけど。後者は心が汚れてるのかな。
「で、何しに来たの? 母さんならついさっき出かけたけど」
「いやただの暇つぶし」
・・・・・・多分、今の僕すっごい迷惑そうな顔してるんだろうなー。事実、帰ってほしい。
すると外の扉同士がぶつかる金属音がした。
「なぁ静愛、外の扉ってちゃんと締めてくれたか?」
静愛は首を傾げて言う。
「当たり前じゃない、近頃物騒だし。そういえばニュース見た? 連続通り魔だって、しかも女学生を中心にだって。ちょっと怖いなぁ、ここ周辺なんでしょ?」
「あ、ああ、そうらしいな。てかお前、時間大丈夫なのか? お前の学校までって結構はなれてるんじゃあ・・・・」
そう言って壁に掛けてある時計を見た。只今の時刻08:24
「やっばーーい! ごめんもう行くね」
言うと静愛は急いで弾かれるようにここを飛び出た。
しおらしい名前の割には性格は真逆だな。これはギャップなのか、でも一切の萌え要素を持ちかねていない。
「気を付けてな」
「うん、それじゃまたあとで」
扉を開けて走って行く静愛を見送ろうと道に出た。
危なっかしいなと思いながらも眺めていると、物陰から黒ずくめの不気味な奴が現れ、静愛に近づいた。
『女学生を中心とした連続通り魔』
ふと先ほどのニュースが過ぎり、急いで静愛目掛けて走った。
「静愛、逃げろ! そいつが通り魔だ!」
黒ずくめの奴は僕に気付き、走って静愛に急接近。チラと見えたが刃物らしい物を光らせている。間違いない、こいつが・・・・
静愛は僕の声が届き、後ろを振り向いた。刃物が眼にはいったのか、顔が青ざめている。
「助けて、響也!」
言うが早いか、黒ずくめの奴は刃物を突き刺した。
刺し口から鮮血が流れ出し、下に滴り、そして紅い血だまりが出来つつある。まるで紅い月のような色彩を放って。
「残念、だったな、この通り魔め・・・・・・」
「ねぇ、響也、嘘だと言ってよ。嘘でしょ、嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘、ねぇってば!」
静愛が目を見開いて叫んだ。
多分腹部、大量な出血量だ。致命傷、終わったな。
「チッ、ミスっちまったか。よりによって男」
黒ずくめのは呟くと静愛を見据えた。
「静愛、逃げろ」
「でも響也、ち、血が」
「いいから行けよ!」
僕は苦し紛れに怒鳴った。
痛い、苦しい、息が出来ない。傷口は燃えるかのように熱を帯びていた。もしこれが生だと言うなら、僕の人生は、ちゃんと僕は生きていたと言えるのだろうか。
わかってるよそんなこと。こんなのは屁理屈さ、僕はこれで人生を終える。人間らしい生き方とは言えないし、僕らしく生きたとも全く言えるものじゃない。
でも、それでも生きてるって感じた時があった。それは静愛といた時間、静愛と生きている時間だ。これって走馬灯なのかな。フラッシュバックと言うか、今までの思い出とか記憶を超短時間で懐かしんでるだけのようの思うんだけどな。
あ、そっか、僕は前からずっと静愛のこと・・・・・・
静愛は竦んで腰を抜かして震えている。黒ずくめを気にするよりも僕を心配して。
どうした静愛、いつもの荒っぽさはどこ行ったんだ。優柔不断モテないとか言って僕に無駄話してたじゃないか。何を迷ってんだ、早く逃げてくれよ。
黒ずくめのはゆっくりと静愛に近づく。じわじわと嬲るかのように。
ああ、この光景、学校でよく見たな。まるで僕だ。
「響也、響也、響也、ねぇ、死なないでよ。まだ私話したいことあるんだよ、伝えたいこともあるんだよ、しっかりしてよ。またいつもみたいに屁理屈ばっか言ってよ!」
黒ずくめは刃物を振り上げた。刃物は異様な色を光らせていた。始まりを告げるかのような、謎めいた淡い光を。
刹那、刃物は静愛に向かれ、振り落とされた。
「静愛、避けろ!」
この叫びは声にはならず、僕は力尽きた。
後書き
暇な時に投稿したいと思います
次回も見てくれれば幸いです
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