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真田十勇士

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巻ノ八十五 猿飛大介その四

「そうすれば聞ける」
「草木や石の声も」
「川の声もじゃ」
「そうして動き潜むべきか」
「そうせよ、わしの忍術の極意じゃ」
 そうしたものの声を聞くこと、そのこともというのだ。
「わかったな」
「それではな」
「まだ聞こえぬな」
「猿や犬、鳥の言葉はわかる」
 このことは幸村と会った時からだ、猿飛はそこまでは出来ているのだ。
「しかしな」
「そうじゃな、ではな」
「さらにか」
「そうしたものの声も聞ける様になれ」
「出来るか、わしに」
「出来る、御主だけでなくな」
「殿にじゃな」
 猿飛はまた言った。
「十勇士の他の者達も」
「必ず出来る」
 大介も太鼓判を押した。
「だから言うのじゃ」
「そういうことか」
「そのこともこれから教える」
「そうしてくれるか」
「それはあと少しでじゃ」
「我等全員が出来るか」
「必ずな」
 鳥や獣の声だけでなくというのだ。
「だから修行をしていくぞ」
「わかった、ではな」
「御主にはわしの全てを授ける」
 特に孫にはだ、大介は強く言った。
「他の方にもそうするが」
「わしにはか」
「御主はわしの孫、しかもわしに最もよく似ておる」 
 だからだというのだ。
「教えればわしの全てをありのまま受け継いでくれるわ」
「忍としてか」
「そうじゃ、そしてな」
「そして?」
「わし以上の者になる」
 さらにというのだ。
「それだけのものがあるわ」
「そうなのか」
「佐助、わし以上に強くなれ」
 これまで以上にというのだ。
「そしてその力で殿をお助けし」
「そうせよというか」
「天下に翔けよ、御主にはそれが出来る」
「天下をか」
「翔けてそしてな」 
 さらにというのだ。
「永遠に名を残すわ」
「それが出来るか」
「だから強くなれ」
「うむ、ではな」
「わしよりも遥かにな」
 こう言ってだ、大介は自ら猿飛に稽古をつけた。それは幸村も十勇士達も同じでだ。彼等は大介の教えを受けてだ。
 これまでとは違った修行を行った、すると実際にだ。
 鳥や獣の声だけでなく草木や水、石の声が聞こえる様になった。聞こうと思えばその声が自然と耳に入る様になった。
 それでだ、猿飛は幸村の屋敷で祖父に言った。幸村そして十勇士の他の面々も共にいるその場所においてだ。 
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