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真田十勇士

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巻ノ八十五 猿飛大介その一

                 巻ノ八十五  猿飛大介
 幸村達の前に猿飛の祖父が来た、それは猿飛よりも遥かに小さく背中がやや曲がった老人だった。髪は雪の様に白く髭も同じ色だ。顔は猿飛の面影があるがそれ以上に猿に似ていた。
 その老人がだ、こう幸村に対して頭を下げて名乗った。
「猿飛大介といいます」
「真田源次郎幸村です」
 幸村も名乗った。
「以後宜しくお願いします」
「孫がお世話になっています」
「いえいえ、我等こそです」
「佐助にですか」
「何かと助けてもらっております」
 微笑んでだ、幸村は猿飛大介に話した。
「その術で」
「それならよいのですが」
「それにです」
「それにとは」
「我等は全て義兄弟です」
 幸村は大介にこのことも話した。
「佐助もここにいる全ての者が」
「十一人の方全てが」
「はい、我等は義兄弟の契を交わしています」
「生きるも死ぬも共に」 
 猿飛は笑って己の祖父に言った、十勇士達はそれぞれ幸村の前に控えそのうえで大介と対している。
「そう誓った」
「そうなのか」
「そうじゃ、祖父殿には伝えてなかったがな」
「御主ずっと文一つ寄越さなかったな」
「書いて届く場所であったか」
「そう言われると違うがのう」
「そういうことじゃ、それは無理であったからな」
 だからだというのだ。
「わしも文は送らなかった」
「真田家に仕える様になったとは聞いておったがな」
「なら充分であろう」
「そしてその真田家の大殿がここに流罪となってじゃ」
「わしに会いに来たのか」
「御主もかと思ってな」
「そして実際にという訳か」
 猿飛も祖父の話を理解して言った。
「わしがここにおった」
「左様じゃ、ここに来る途中獣達の話を聞いておるとな」
「そしてこの九度山まで来たか」
「そういうことじゃ、二十年以上会うてなかったが」
 祖父としてだ、大介は孫の顔を見て笑って述べた。
「元気そうで何よりじゃ」
「ははは、そうか」
「うむ、大きくなったしのう」
「この中では小さい方だと思うが」
「わしと別れて山を降りた時よりはじゃ」
「大きいか」
「そうじゃ、だから言ったのじゃ」
 今の様にというのだ。
「そういうことじゃ」
「そうであったか」
「それでじゃが」
 大介はあらためて言った。
「ここに来て思ったことじゃが」
「何じゃ?それは」
「まだ諦めておられませぬな」
 幸村に顔を戻してだ、大介は彼に問うた。 
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