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真田十勇士

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巻ノ八十四 高野山その十一

「それでは」
「そうじゃな、しかし佐助と拙者が会ったのは二十年以上前じゃ」
 気付けばそれだけの歳月が経っていた、他の十勇士達とそれは同じだ。
「その頃に言っておったからな」
「二十年となると」
「今もご存命か」
「そうなりますと」
「果たしてどうなのか」
「わかりませぬな」
「うむ」
 どうにもとだ、家臣に答えた。
「その祖父殿以外の縁者の話は聞いておらぬ」
「それでは」
「その祖父殿と思うが」
 それでもというのだ。
「果たしてどうなのか」
「若しや刺客では」
「刺客ならば何ともない」
 強くともとだ、幸村は言い切った。
「誰が来ようともな」
「受けて立たれますか」
「そのつもりじゃ、刺客を退けるのも武士の戦」
「だからこそ」
「そうする、拙者一人でもそうするしじゃ」
「十勇士の方々がおられる」
「例え刺客が目の前、いや背中に来ても驚かぬ」
 全く、というのだ。
「その時が来てもな」
「殿は」
「そうじゃ、しかしじゃ」
「佐助殿の縁者なら」
「是非会おう」
 また家臣に言った。
「ではまずは佐助に会おう」
「さすれば」
 こうしてだ、幸村はまずは猿飛の話を聞くことにした。そのことを決めてすぐに十勇士達を全て呼んでだった。
 猿飛の話を聞いた、すると彼はすぐにこう言った。
「いや、まさか祖父殿が来るとは」
「思わなかったか」
「はい」
 全く心外という返事だった。
「ずっと伊予に隠棲したままと思っていました」
「ああ、そういえば御主伊予生まれじゃな」
「そうであったな」
 ここで他の十勇士達も言った。
「それで伊予で忍術の修行を積んでおったな」
「祖父殿に忍術を教えられてじゃな」
「それであちこちを渡り歩いておったな」
「そうじゃ、わしは両親よりも祖父殿と一緒におることが多く」
 猿飛自身も言う。
「祖父殿に手ずから忍術を教えてもらったのじゃ」
「それで忍術を身に着けてか」
「世に出て渡り歩いてか」
「さらに強くなり殿とも出会い」
「そして今に至るか」
「そうじゃ、殿とお会い出来たのは僥倖であった」 
 こうも言った猿飛だった。
「天佑であった、しかし祖父殿はな」
「ずっとか」
「伊予の山奥に隠棲しておる」
「そうとばかり思っておったか」
「父上は普通の猟師じゃ」
 それで生計を立てているというのだ。
「父上も忍の術を知っておるがそれはあまり使わずにな」
「普通にか」
「猟師をして暮らしておられるのか、お父上は」
「そうなのか」
「うむ、祖父殿は若い頃大内家に仕えておったがな」
 しかしというのだ。 
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