ひょうすべ
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第四章
そして雅道を見てだ。こう言うのだった。
「彼を病院に連れて行こう」
「そうだね。とりあえずそうしないとね」
「山を降りよう」
仲間達も彼の言葉に頷いてだ。そのうえでだった。
雅道を車の中に入れてすぐに山を降り病院に向かう。雅道は原因不明の熱病と診断され入院することになった。暫くはベッドから起き上がれなかった。
だが五日程してようやく身体を起こせることができた。それで見舞いに来た隆達にこう言った。
「とりあえず三日程したらね」
「退院だね」
「そうなったんだね」
「うん、お医者さんにそう言われたよ」
こう隆達に話す。無事快方に向かっているとだ。
だがここでだ。彼は首を捻りながらこう言うのだった。
「あれが妖怪っていうのは聞いたけれどね」
「ひょうすべのことだね」
隆が彼の言葉に応える。
「あれのことだね」
「河童に近いんだね」
「そうらしいよ」
「それはいいとして。何でだろうね」
雅道は首を捻りながら言う。
「あの時僕はそのひょうすべにつられて笑ったけれどね」
「それでどうして入院する様になったかだね」
「お医者さんも言うんだ。原因不明の熱病だってね」
「そうなの」
「うん。何でつられて笑ってそうなったのかな」
「理由はないと思うよ」
隆はこう首を捻る雅道に答えた。
「それはね。ないと思うよ」
「理由がないって?」
「うん。妖怪は自然の産物だっていうけれど」
自然の様々な事象が実体化したものだという説がある。そうした観点から考えていくと妖怪は西洋で言う妖精と近いものだろうか。
「自然の動き一つ一つに理由があるかっていうと」
「ないっていうんだね」
「妖怪がその自然だったら」
それならばだというのだ。
「理由なんてないと思うよ」
「そうなるんだ」
「まあ僕の考えだけれどね」
「成程ね。妖怪の行動にもどうしてそうなるかにも理由はない」
雅道は釈然としないながらも隆の言葉を聞いて頷きはした。
「そういうものなんだ」
「訳がわからない、そうだね」
「それが妖怪っていうのかな」
「そうなるんだね」
他の面々も釈然としない顔で話していく。そしてだ。
彼等は釈然としないながらも頷くのだった。納得はしないが。だがそれが妖怪というものだという隆の言葉には納得した。妖怪とはそういうものだということには。
ひょうすべ 完
2012・7・1
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