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殺人鬼inIS学園

作者:門無和平
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第四話:生徒会長と殺人鬼

「皆様も知っているようですが、昨日我が校の教員がお亡くなりになりました。この件は警察の方々が出てこなければならないような一件となっており、現在も調査中です。つきましては…」

 翌日、体育館で開かれている全校集会を聞き流しながら、ラシャは曇天の下、花壇の草むしりを行っていた。何てことはない用務員としての日常の一つだ。周囲の目からは、注目なぞされないだろう。だが、その裏では大規模な生徒と教員の人事入れ替えが起きていた。女尊男卑を始めとした過激な危険思想を持ちつつ、今年入学予定の織斑一夏と篠ノ之箒の身柄を狙う輩を特定し、それらの排除を敢行したのだ。
 何人かの教員の異動という名の免職が行われ、生徒も適当な罪をでっち上げられて停学・退学に追い込まれた。停学に追い込まれた連中も、いずれラシャの手によって退学の名のもとに消される運命にあるであろう。

 何時手を下せるか楽しみだ。と、ラシャは鼻歌を唄いながら雑草をゴミ袋に放り込んでいた。その時、唐突に背後から声がかけられた。

「『ハンガリー舞曲第五番』…でしたっけ?ブラームスの」

 振り向くと、曇天に似合わぬ、快晴の空を連想させる眩い水色のショートヘアーの少女がこちらを見つめていた。リボンの色からするに一年生だ。

「ご名答」

 ラシャは精一杯の笑顔で出迎える。大抵の生徒はこう対応すれば真っ赤になって足早に去っていってしまうからだ。気に入った人間以外との会話は手短に済ませたいラシャのこの学園なりの処世術だった。

「そんな笑顔はお屋敷では一回も見たことありませんでしたね?」

 だがしかし、眼前の少女にはそれが通じなかった。あからさまに不機嫌な表情を浮かべている。

「まさか、君は…刀奈ちゃん?」

 ラシャは恐る恐る名前を口にする。この少女が自らを知っているならば問題が生じる。この少女は、間違いなく。

「ええ、お久しぶりです。羅赦先生」

 自らが鍛えた少女にほかならないのだから。



「ほ、ほう。簪くんと仲違い…ねぇ」

「そ~なんですよぉ!!先生が家庭教師辞めてすぐに当主の襲名式があって…な~んであの時カッコつけちゃったんだろうあたしぃ!!!」

 現在昼休憩中の生徒会室。ラシャは眼前の女生徒の悩みを聞いていた。悩みを聞く内に疑惑は確信へと変わっていった。この女生徒の名前は更識刀奈。現在は更識楯無と名乗っている暗部を司る由緒正しき家系の長女だ。数年前に己が武術の手ほどきを少々行った事以外には接点の無いはずの少女だった。
 だが、今は当主に代々受け継がれる楯無の名前を名乗っている。ということは家業の何たるかを理解し、それに従事する資格を得ている存在なのだ。結果、自らが更識家に家庭教師という名の食客として身を置いていた事自体に気付いていた可能性が考えられた。
自らの正体を知るものは少ないほうが良い。と、ラシャは更識楯無を危険人物として認識した。

「先生~聞いてます~?」

と、楯無が酔っぱらいもかくやという迫真の表情で詰め寄ってくる。ラシャはうんざりした表情で口を開いた。

「仲直りしたいんなら謝れば良いでしょう?少なくとも自らに非があると考えるなら、それを認めてお詫びすべきです」

「それが出来たらしてるわよぉ!!今更どの面下げて会えばいいの!?」

「その面とかどうです?少なくともつかみはOKな表情ですよ。簪さんも出会い頭吹き出すこと請け合いでしょう」

「先生、もしかしなくてもおちょくってます?」

「少なくとも簪さんのプリンを勝手に食べてしまったことを半年悩んでいたヘタレな貴女は十分におちょくり甲斐があります」

「ちょっとぉ~~~~~!!」

 昨今のアニメにありふれた顔芸の様な変顔を披露する楯無を、ラシャは楽しそうにおちょくる。かつての記憶に合致するリアクションから、ラシャは楯無が自らの正体を察知していないことを確信した。結果、家庭教師時代の記憶を何とか掘り出し、おちょくりつつ処世していった。


 イレギュラー達の入学まであと2週間。
 
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