ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜
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93部分:動きはじめた時その四
動きはじめた時その四
「そうか、母様はイードへ・・・・・・」
デルムッドは視線をやや下にし寂しそうな笑みを浮かべて言った。
「ええ、アグストリアへ行く前に兄さんに会いに行くって言われてそれっきり・・・・・・」
ナンナが沈んだ顔で答えた。
「イードには賊がいたよ。俺達が一人残らず成敗した」
「そう・・・・・・」
「けれど何か寂しくないな。悲しいけれど。セリス様もここにいる皆もいるしね」
「ええ」
ティナとジャンヌは飲んでは騒ぎ飲んでは騒ぎを繰り返す。それを気遣うサフィやスルーフにその度に席に優しく戻される。マチュアとブライトン、ディーンは酒と羊肉を賭けて腕相撲を始めた。セイラムが泥酔寸前の状態で審判を務めている。何時の間にかシャナムがアナウンサー、ロドルバンが解説者になっている。
「へえ、昔はそんな魔法が本当にあったんですね」
リノアンの話にマナが驚嘆の声を出す。
「はい。人を石にする禁断の呪術・・・・・・。極めて位の高い暗黒司祭にしか使えず先の聖戦で暗黒教団が滅んだ今完全に失われた術なのですけれど」
リノアンが話している。
「石化は解けないんですか?」
フェミナが尋ねる。
「解けましたけれどそれが出来るのはごく限られた術者のみが使える特別な杖・・・・・・」
「その杖の名は・・・・・・?」
二人が同時に尋ねた。
「確か・・・・・・キアといいました」
ヨハンがラクチェに無謀にも熱烈なアプローチをかける。そして派手な効果音付きで必殺ブローを浴びせる。
「ジェットアッパー!」
それを止めようとしたロベルトにも見事に命中する。かに見えたがかわしていた。
セルフィナとグレイドはまるで新婚の様に仲睦まじく話し合っている。誰も入る余地が無い。
ホメロスはリフィスとパーンの取っ組み合いに面白そうだからと言って入っていった。ラルフも入りキリのいいところで話を収め飲み食いを再開した。
リーフはケインを隣に置きオルエン、フレッドと話していた。
「次はフリージの巻き返しですか」
リーフの言葉にオルエンが頷く。
「はい。おそらくイシュタル王女が全軍をもってコノートから出撃されます」
「そうですか、イシュタル王女が・・・・・・」
「そしてその下にはフリージの誇る歴戦の良将達が付きます。今までのレイドリックやグスタフの様な私利私欲しか頭に無い輩共ではなく騎士としての在り方を知り指揮官としても優れた者達ばかりです」
「どんな将達がいるんだい?」
「アルスターでの戦いでも出陣していた三姉妹、老将軍ラルゴ、闘将バルダックとリスト、巨大な歩兵方陣であるテルシオの達人ムハマド、そしてブルックやバルマン、バラート、パウルスといった歴戦の諸将、軍師として名高いコーエンとフラウス、騎兵隊の将は車懸かり戦術のオーヴァ、ミュラー、剣客としてアイヒマン・・・皆恐るべき者達です」
オルエンの言葉にリーフは嘆息した。
「将にフリージ軍の総力だね。しかも重歩兵中心のフリージらしいよ。歩兵戦で知られた人が多い。かれど一人抜けているんじゃ?」
「それは・・・・・・」
口籠るオルエンに代わってフレッドが言った。
「ラインハルト将軍ですね」
「うん。確かオルエンのお兄さんに当たる人だよね」
「はい。剣技、魔力共に他者を寄せ付けず戦術指揮はイシュトー王子に匹敵するとさえ言われています。その上正義を愛し騎士道を重んじられ正に非の打ち所の無い方です」
「おそらくセリス公子も今色々と考えておられるのだろう。かなり情報を収集されておられるようだしね。・・・・・・けれどつらい戦いになるだろうね」
「はい。それに我等はまだレンスターの西半分を解放したに過ぎません。コノート、マンスターの国力は高く戦力をすぎにでも回復させるでしょう。この度オイフェ殿が全ての将に上級職に昇格するよう指示を出されたのは兵力に優勢で将も揃っているフリージ軍に対抗する為だと思われます」
「そしてかなり質の高い武具を買ってるね。銀の武器や魔法剣、、高位の魔道書に杖・・・・・・。今まで集めた資金を惜しみ無く使っている」
「それだけではまだ・・・・・・。イシュタル王女は戦術指揮におかれてはイシュトー王子には引けを取られていますが魔力は十二聖戦士魔法騎士トードすら遥かに凌いでいると言われています」
「それも解かってるよ、皆も。けれどここで負けるわけにはいかないだろう」
「はい」
リーフの言葉に三人は頷いた。その直後新しく入ったアサエロに酒と料理を勧められ特に白葡萄酒を飲んだオルエンが軍服を脱ごうとしフレッドがそれを止めもみくちゃとなった。すると隣で蜂蜜をたっぷりとかけたケーキを食べようとしたティニーにぶつかり三人は服を蜂蜜でベタベタにした。悪い事は重なり足を滑らせたラクチェがロベルトの頭に西瓜を一個丸ごと落とし彼は瀕死の重傷を負った。
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