Ｂｌｕｅ　Ｒｏｓｅ

「やっぱり」
「そうですよね」
「本当に八条家の方々が動いてくれることになりそうよ」
「信じられないことですね」
「ええ、この療養所も八条グループの経営ですけれど」
「八条家といえばね」
「凄いですからね」
　何しろロスチャイルド家に匹敵するとまで言われている家だ、彼等にしてみれば想像も出来ないレベルである。
「それこそ」
「そう、だからね」
「動いてくれたら大きいですが」
「信じられないところはね」
「確かにありますね」
「ええ、このことはそんな感じだけれど」　
　どうしてもだ、感覚的にそうだというのだ。
「けれど大きいわ」
「あの人達が動いてくれるとなると」
「蓮見さんもね」
「二度とこうしたことはですね」
「起きないわ」
　そうなることはだ、副所長は断言した。
「戸籍のこともね」
「まあ具体的にどうなるかは」
「私達ではわからないでしょうけれど」
「そこまでの話ですね」
「ええ、けれどね」
「もうこれで、ですね」
「ああした人達がまた出て来ても」
　衝夫や鍛冶元の様な倫理を極めて逸脱した様な者達がというのだ。
「安心出来る位にね」
「そうなるのなら」
「蓮見さんはもう、ずっとね」
「一生ですね」
「女の子、女の人として暮らしていけるわ」
「そうなりますね」
「ええ、そして結婚して」
　そうしてというのだ、副所長は優花の将来のことも話した。
「その相手の人はね」
「問題ですね」
「そう、あの娘も過去も受け入れられて」
「そして秘密に出来る人ですね」
「そうした人であってくれれば」
「いいですね」
「そうした人に巡り会えたら」
　その時はというのだ。
「蓮見さんは最高に幸せになれるわ」
「そうなりますか」
「ええ、そうした人に出会えることを祈りましょう」
　優花のそのことをというのだ。
「私達は」
「わかりました」
　岡島は副所長のその言葉に確かな顔で頷いた。
「見付けるんじゃないんですか」
「こうしたことは本人が出会うものよ」
「僕達が見付けて紹介するよりも」
「そう、出会うものなのよ」
　他ならぬ優花自身がというのだ。
「そうしたものよ、ただ悪い人に出会ってね」
「若しあの娘の過去を知った上でそのことをばらそうとするなら」
　悪意、それを以てだ。世の中には底意地が悪いというかそうした悪意を持って動く輩も存在するのだ。残念ながら。
「その時はね」
「そいつをですね」
「ばらす前によ」
「止めますか」
「そうしましょう」
「そうしないと今回と一緒でですからね」
「蓮見さんにもお話しないといけないわね」
　優花、彼女自身にもというのだ。
「このことは」
「あらかじめですね」
「そう、交際は相手をね」
「真剣に選んでそうして」
「やる様にってね」
「自分自身の為にですね」
「そもそも交際はね」
　結婚も含めたそれはというのだ。