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真田十勇士

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巻ノ八十一 上田城へその八

 だが物見櫓から彼等の動きを見てだ、昌幸は笑って言った。
「これは勝ったわ」
「勝ちますか」
「敵はかなりの数ですが」
「うむ、敵はわし等が城の中にだけいると思っておる」
 敵の動きを見てだ、昌幸は彼の家臣達に言う。
「外にはと思っておるな」
「ですな、確かに」
「しかしこの地は我等にとって遊び場です」
「代々住んで隅から隅まで見てきた」
「そうした場所です」
「だからじゃ」
 そうした場所だからだというのだ。
「城の外もよく知っておる」
「無論城の中も」
「全て、ですな」
「外には源次郎様の軍勢がおられます」
「そして十勇士達も」
「わしはこの城を守る」 
 昌幸はにやりと笑ってこうも言った。
「そしてな」
「はい、源次郎様がですな」
「外で思う存分暴れる」
「そうされますな」
「我等が守っている間に」
「外はあの者に任せた」
 幸村、彼にというのだ。
「ではな」
「はい、それでは」
「我等は護り」
「源次郎様が攻められる」
「そうなりますな」
「真田の戦、徳川家に再び見せてやる」
 かつての上田攻めの時と同じくだ。
「前の時とは違う攻め方じゃが」
「守ることは守る」
「そうしますな」
「完全に」
「そうするとしよう、鉄砲を全て用意せよ」
 それをというのだ。
「敵が来たらな、そしてじゃ」
「それを合図にですな」
「源次郎様が動かれますな」
「外から」
「久し振りに十勇士達の戦いが見られる」 
 昌幸はこのことも期待して述べた。
「日々鍛錬を重ねておったしな」
「腕は衰えていませんな」
「あの者達も」
「源次郎様と同じく」
「それも見せてもらうとしよう」
 こうも言ってだ、昌幸は采配を手にしてだった。戦の指揮にかかった。真田方は徳川の軍勢、城に迫る彼等にだ。 
 一斉に鉄砲を放った、秀忠はそれを聴いても驚かなかった。
「敵も黙ってはおらぬな」
「はい、鉄砲を撃ってきましたな」
「それも結構な数ですな」
「戦には備えていましたか」
「それも万全に」
「そうじゃな、しかし怯んではならぬ」
 秀忠は自ら陣頭に立ち指揮を執りつつ言った。
「このままじゃ」
「間合いを詰めて」
「そうして、ですな」
「数で攻めますか」
「そうしますな」
「上田城のことはわかっておる」
 その縄張り等がというのだ。
「全てな」
「はい、既に多くの城の中はわかっています」
「見取り図もあります」
「それに従って攻めればいいこと」
「まずは門の全てを集中的に攻めてです」
「門を破りそこから先に進みましょう」
「門や櫓に鉄砲を撃ち込みましょう」
 彼等もというのだ。
「鉄砲の数も負けておりませぬ」
「それならばです」
「その数で、です」
「門の傍の櫓も門の兵達も倒し」
「そうして門を破り先に進み」
「本丸に迫りましょう」
「そうせよ、昼も夜も攻めよ」
 こう命じてだ、実際にだった。 
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