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ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜

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52部分:雷帝その五


雷帝その五

「こちらこそ・・・・・・天下に名高き雷帝と剣を交えられるのだからな」
 鞘から剣を抜きその剣を顔の前に縦に置くイザークの敬礼でシャナンも応える。
「それでは死合いましょう」
「うむ」
 双方構えを取った。二人の間に風が吹いた。
 まずイシュトーが動いた。左腕が炎に包まれ地面に投げ付けられる。
「ボルガノン!」
 高く燃え広がった炎が地走りしてシャナンに襲い掛かる。シャナンは跳んだ。大地が爆発する。
 シャナンが跳んだ間にイシュトーは剣を抜いた。普通の鋼の剣である。
 地に降り構えを取るイシュトーをシャナンは見た。
「どうやら普通に剣を使うわけではないな」
 イシュトーはそれに答えず無言で笑った。
 離れた間合いでありながらイシュトーは剣を突き出した。
「トローーン!」
 剣に稲妻が宿るやいなやそれは雷となり放たれた。雷の光が一直線にシャナンへ襲い掛かる。だが雷はシャナンの身体をすり抜けた。
 シャナンが雷を見切りでかわした次の瞬間剣に炎を宿らせたイシュトーが斬りかかって来た。バルムンクでそれを受ける。
 イシュトーはさらに一撃を加えんと剣を振り下ろした。シャナンはその一撃を受け流しそのまま脇腹を狙う。だがイシュトーはそれを紙一重でよけた。
 打ち合いは百合を越えた。両者は互いに譲らず五分と五分の勝負が続く。イシュトーは雷を宿らせた剣を叩き付けた。シャナンはそれを受けた。間髪入れず二撃目が来る。今度はよけた。イシュトーの体勢が僅かだが崩れた。それを見逃すシャナンではなかった。
(もらった!)
 流星剣を出した。一撃、二撃とバルムンクが繰り出される。三撃目、四撃目、イシュトーは信じ難い身のこなしでかわす。五撃目がきた。シャナンはこの一撃にかけた。イシュトーは後ろに跳ぼうとする。だが剣の方が速かった。
 イシュトーの胸をバルムンクが一閃した。急所は外したがかなりの痛手だった。思わず片膝を着く。
「・・・・・・私とここまで渡り合うとはな。流石は雷帝と呼ばれるだけはある」
 シャナンは剣を構え直した。
「これで最後だ」
「くっ・・・・・・」
 シャナンが斬り掛かろうとしたその時だった。淡い青の光がイシュトーを包んだ。
「むっ・・・・・・」
 それはレスキューの杖だった。術をかけた者を近くへ呼び戻す術である。光が消えた時イシュトーの姿は何処かへ消えていた。
「メルゲン城・・・・・・か!?」
 だがシャナンは直感的に違う、と感じた。同時に近いうちに再び会う事になると感じた。
「我が軍の敗北!?」
 大広間で報告を聞きリンダは一瞬己が耳を疑った。兵力で劣っていたとはいえあの従兄が敗れるとは考えられなかったからだ。
「残念ながら・・・・・・ライザ将軍は行方不明、オルエン、フレッド両将軍は負傷、イシュトー様は何者かに御命を救われた様ですが現在のところ御行方が解かりませぬ」
「兵の被害は?」
「被害はそれ程多くはありませぬ。ですがもう一度打って出るというのは・・・・・・」
「そう・・・援軍が来るまで篭城するしかなさそうね」
 リンダは隣のアマルダの方へ顔を向けた。
「アマルダ将軍」
「はい」
「指揮は私が執るわ。援軍が来るまで頼むわね」
「解かりました」
 アマルダは思った。イシュトー王子の目は正しかった、と。目の前にいる小柄な少女は立派に将としての務めを果たせる、この少女について行きたい、と。
「リンダ様」
 アマルダは思わず口にした。
「はい」
「このアマルダ命に替えてもリンダ様を御守り致します。どうか御一緒させて下さい」
「将軍・・・・・・」
 二人は城門の上に立った。解放軍の大軍が姿を現わした。そこから一騎前に出て来た。
「何?」 
 その騎士は白旗を掲げていた。どうやら話し合いの使者らしい。
「入れてあげて」
 リンダとアマルダは大広間において使者との会見の場を設けた。使者は入室すると片膝を折り敬礼をした。使者はブライトンと名乗った。話の内容は解放軍に是非リンダと話がしたいという者がいるというものだった。
「どうすべきかしら、将軍」
 リンダはアマルダに意見を求めた。彼女は暫し思案したが口を開いた。
「御会いすべきかと存じます。シアルフィ軍のセリス公子、若いながら良く出来た人物と聞いております」
「解かったわ、ブライトン殿でしたわね」
 首を縦に振るとブライトンの方へ向き直った。
「セリス公子にお伝え下さい。是非御会いしたいと」
「はっ」
 二刻後リンダは後方に軍を置いたうえでアマルダと数人の護衛の騎士を伴い会見の場へ向かった。向こうには解放軍の陣がありシアルフィの旗が林立している。暫くすると数人解放軍の方から歩いて来た。先頭には青い軍服とマントの少年がいた。
 
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