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真田十勇士

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巻ノ八十一 上田城へその一

                 巻ノ八十一  上田城へ
 家康は己の軍勢を率いてそのうえで一路東海道を進んでいた、彼はその中で本多正信にこう問われていた。
「殿、後ろはいいとしまして」
「中山道か」
「はい、竹千代様ですが」
「あ奴が初陣だからか」
「ですから過ちがあれば」
「だから三河以来の者達を多くつけたのじゃ」
 家康はこう本多に答えた。
「あ奴が初陣だからな」
「それで、ですか」
「あ奴が雌雄を決する場に遅れたらというのであろう」
「はい」
 その通りだとだ、本多は家康に答えた。周りは一面黄色の徳川の軍勢であるが井伊の軍勢だけは赤備えである。
「そうなれば」
「何、そうなってもじゃ」
「よいというのですか」
「備えはしてある」
 家康は本多に落ち着いた顔で述べた。
「既にな」
「では」
「わかったな」
「あちらにですか」
「以前より仕掛けておいた、七将にも働いてもらってな」
 そのうえでというのだ。
「負けぬ、いやわしが率いておる軍勢だけでもじゃ」
「勝てる様にですな」
「手を打っておる」
「そうでしたな」
「わし等が戦うのは敵の半分程かのう」
「治部殿と刑殿にですな」
「小西家、宇喜多家のな」
「それ位ですか」
「では勝てる」
 敵の中で彼等の軍勢だけではというのだ。
「この軍勢だけでもな」
「戦になれば」
「だからあ奴が遅れてもよい」
「そうなりますか」
「うむ、ただな」
 ここでだ、家康は眉を顰めさせてだった。本多にこうも言った。
「一つ気になることがある」
「あの城ですか」
「そうじゃ、上田の城じゃ」
 この城のことをだ、家康は東海道を進みつつ言った。
「どうしてもな」
「あの城は以前我等も攻めましたが」
「そうであったな」 
 既に鳥居、かつてその上田城を攻め先に伏見城で死んだ彼のことを思い顔を暗くもさせた。そのうえでの言葉だった。
「あの城は」
「でしたな」
「小さい城じゃ」
「しかしその城が」
「攻め落とせぬ、ただ堅固なだけでなくな」
「守っているのも」
「真田じゃ、攻め落とせぬ」
 それこそという言葉だった。
「到底な」
「だからですな」
「そうじゃ」 
 まさにというのだ。
「あの城は攻めるものではない」
「では目付の兵だけを置き」
「中山道を進めばいいが」
「竹千代様はそうされるでしょうか」
「初陣でも多少でも武の才があればそれはせぬ」
 秀忠にそれがあればというのだ。 
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