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Blue Rose

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第四十四話 あえて罠にその十四

「僕達のことに気付いてはいないですね」
「ええ、そうね」
「間違いなく」
「気付いていればすぐに立ち去ってるわ」
「いるとか夢にも思わないからですね」
「ああしてね」
「蓮見さんに近付いているんですね」
 優花からも目を離さない、これは岡島だけでなく他の面々も同じだ。
「そういうことですね」
「自分達のやることに絶対の自信があるからよ」
「ああしてですね」
「堂々と来ているのよ」
「悪事を堂々とやってるんですね」
「誰も捕まえてこなかったからよ」
 それ故にというのだ。
「悪事がばれもせずに」
「だから今もばれないと思っていて」
「あそこまで堂々としているのよ」
「本当にヤクザ屋さんみたいですね」
「何度も言ってるでしょ、ヤクザ屋さんは世間からマークされているわ」
 副所長はここでこのことを指摘した。
「常にね」
「けれど学校の先生は、ですね」
「新聞記者もね」
「逆に立派な人達だって思われていてですね」
「聖職者や正義を行う人達とね」
 昭和の幻想と言うべきであろうか、もっとも昭和の頃から幻想であったというのが現実のことであったのだが。
「まだ思われているからよ」
「ああしてですね」
「やりたい放題をしてもね」
「堂々としてるんですね」
「ええ、ではそろそろね」
「二人共蓮見さんの前に来ましたし」
「いよいよよ」
 勝負どころだというのだ、優花にとっても。そしてだった。
 四人共はやる気持ちを抑えつつ優花を見守った、その優花は。
 衝夫そして鍛冶元と対していた、衝夫は優花を高圧的かつ下卑た顔で見下ろしながらそのうえで彼女に問うた。
「俺のことは知ってるな」
「ええと、学校の先生の」
「そうだ、衝夫だ」
 その下卑た笑みで名乗った。
「御前の学校の体育教師だ」
「そうでしたね」
「御前をここに呼び出したのには訳があるんだよ」
「休んでることは担任の先生にお話してますが」
「そんなことはどうでもいいんだよ」 
 休んでいることはとだ、衝夫は優花に告げた。
「御前の身体のことでだ」
「私にですか」
「言いたいことがある、俺は知ってるんだよ」
「私の身体のことを」
「元は男だったな」
 衝夫は優花を左手の人差し指で指し示しつつ問うた。
「そうだったな」
「それを何処で」
 優花は衝夫に応えながら打ち合わせ通りだと思った、療養所で優子達と衝夫達がどう言ってくるのか打ち合わせの中でシュミレーションをして対応を考えていたのだ。
「知ったんですか?」
「ちょっと気付いたんだよ、御前がそそるからな」 
 ここでだ、衝夫は好色な笑みも見せてきた。これまで数多くの女子生徒達に見せてきた笑みである。その笑みを見せてからだったのだ。
「脅すネタを探しててな」
「それで、ですか」
「この人の助けも借りたんだよ」
「俺は新聞記者でな」
 ここでだ、鍛冶元も口元を歪めた下卑た笑みを優花に見せた。
「色々調べられるんだよ」
「私のことを」
「知り合いには市役所の人間もいてな」 
 鍛冶元は優花を彼もまた好色な目で見つつ語った。 
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