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真田十勇士

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巻ノ八十 親子の別れその二

「何があろうともな、そしてじゃ」
「はい、そして」
「それからですな」
「勝った方はその盟主に負けた方の助命を乞え」
 そのもう一方のというのだ。
「そうするのじゃ」
「我等がですか」
「勝った方が敗れた方のですか」
「助命を乞えと」
「内府殿か治部殿に」
「どちらも無駄な殺生は好まぬ」
 家康も石田もだ、昌幸はこのこともわかっていて言うのだ。
「だから必死に助命を乞えばな」
「それで、ですか」
「敗れた方は助かる」
「例え敗れようとも」
「そうなりますか」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「だからな」
「家の者は死なず」
「家が衰えることもない」
「そうなのですな」
「そうじゃ、これがわしの策じゃ」
 こう息子達に言った。
「わかったな」
「はい、まさかです」
「そこまでお考えとは」
「ではその様にして」
「この中でも家を残しますか」
「おそらく敗れた方は流されるか幽閉じゃ」
 そうなるというのだ。
「しかし生きていればまた世に出られる」
「その時を待つ」
「そうすべきですか」
「学問と鍛錬に励みつつな」
 そうせよというのだ。
「よいな」
「わかり申した」
 そのことについてもとだ、二人は応えた。そしてだった。
 信之はすぐに家康の方に彼の軍勢を率いて向かった。昌幸と幸村は上田城に残ってすぐに守りを固めにかかった。
 その時にだ、幸村の前に十勇士達が来て言った。
「殿、お話は聞きました」
「それではです」
「この上田城で戦いましょうぞ」
「どれだけの大軍が来てもです」
「退けてみせましょう」
「勝ちましょうぞ」
「うむ、何としてもじゃ」
 幸村も十勇士達に対して言う。
「守りきるぞ」
「はい、そうしましょうぞ」
「今から腕が鳴ります」
「久し振りに暴れられますな」
「それが楽しみです」
「忍として、そして武士としてな」
 まさにというのだ。
「恥じぬ戦をしよう」
「ですな、我等は武士です」
「忍でありかつ武士です」
「なら武士としてです」
「それに恥じぬ戦をして」
「我等の武を見せましょう」
「縦横に戦いかつ武士の道からは外れぬ」
 幸村はその二つを言った。 
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