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力なんていらない

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第一章

                 力なんていらない
 マーガレット=オハラはロスアンゼルスに住んでいる、父は日系二世であり母は一世という純粋な日系アメリカンだ。父はかなり大きな寿司バーを経営していてマーガレットは所謂お嬢様であり通っている学校もそうだ。
 アメリカでは少数派の制服それも楚々とした清潔で露出の少ないものである、黒と白のその制服着てだ。
 マーガレットはいつも通学していた、長い黒髪と切れ長の漆黒の瞳に面長の顔を白い楚々とした肌、それに小さい紅の唇を持ち小柄で人形の様な肢体はアメリカ、コーカロイドやニグロイドにはないモンゴロイド特有の美貌だ。
 その外見故に注目されやすい、しかも性格は温厚で心優しく誰からも好かれる性格だ。部活はソフトボール部でポジションはショートだ。
 学校の中でも目立つタイプだ、だが。
 言い寄る者はおらずだ、クラスメイト達はこのことを不思議に思っていた。
「マーガレットって奇麗なのに」
「どういう訳か噂ないわね」
「恋話ってのがね」
「どうもね」
「というか」
 ここでだ、クラスメイトの一人がこんなことを言った。
「マーガレットって変な場所には寄らないし」
「そうそう、悪い奴にもね」
「やましいこと考えてる相手には近付かない?」
「そうよね」
「そんなところあるわよね」
「何でかしらね」
 このことについてだ、彼女達は言うのだった。
「あの娘そんな話はなくて」
「変な場所や男には近寄らない」
「そうよね」
「不思議よね」
「あと護身術知らない筈なのに」
 ソフトボール部だから当然と言えば当然だろうか。
「腕力あるというか」
「強い?」
「そうよね」
「そんなところあるわよね」
「どうもね」
 こうしたことも話すのだった。
「鍛えてるのかしら」
「バット毎日振ってるしね」
「そのせいかしらね」
「守備もいいしね」
「普通にね」
 こうしたことを話していた、実際にマーガレットは危険な場所や人間には近寄らず腕力も強かった。そしてだ。
 勘もいいと言われていた、だが。
 マーガレット本人はその噂についてだ、家で両親に眉を顰めさせて言っていた。
 立派な家である、アメリカの中でも。見事なプールがあり駐車場も広い。和風建築の家はまさに御殿と言っていい。
 その家の中でだ、マーガレットは両親に言っていた。
「ずっと噂になってるの」
「御前自身のことか」
「それでよね」
「そうなの、勘がいいとか力が強いとか」
「それは仕方ないな」
「ええ、そればかりはね」
「これはね」
 マーガレットはここで母を見て言った。
「お母さんの血よね」
「そうよ、私の家は代々忍の者でね」
「忍者って本当にいるのよね」
「ええ、お母さんの実家は伊賀でね」
 アメリカでも有名な忍の里だ、三重県にある。
「お母さんの家は何百年も前から代々よ」
「忍で」
「そう、忍者同士で結婚して忍の鍛錬もして」
「それで遺伝になっていて」
「お母さんも毎日修行をしていたのよ」
 忍者のそれをというのだ。
「それでその血をよ」
「私も受け継いでいるのね」
「トーマスは受け継がなかったがな」
 父がこう言った、二人の息子でマーガレットの兄で今は大学で医学を学んでいる。 
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