Three Roses
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第三十三話 落ちる薔薇その十二
「何かと協力は惜しまないが」
「しかしですね」
「それでもですね」
「この国にはおられなくなる」
「そのことはもう、ですね」
「妃のことは覚悟している」
太子は言った、二人に対して。
「もうこの国は新教徒達のものとなり定まるだろう」
「旧教に戻ることはない」
「最早ですね」
「そうなることはない」
「そうなのですね」
「そうだ、このままマリー王女は地盤を固める」
彼女達のそれをというのだ。
「新教徒の国にしていく」
「我々は後塵を排する」
「それに甘んじるだけですか」
「最早この国での旧教の復権はない」
「そのことも決まりましたか」
「論戦を凌がれ儀礼も定められた」
この二つがあり、というのだ。
「流れは完全にあちらになった、ではだ」
「その流れに乗られ」
「マリー様はさらにですね」
「政策を進められ」
「この国を新教徒の国にされ」
「地盤も固め」
「そうしていかれるのですね」
オズウワルド公と司教は苦い顔で言うしかなかった、二人もそうなるとわかったのだ。この国の政治の重要な部分に携わっているが故に。
「我等は少数派のまま」
「そのうえで過ごしていきますか」
「地位や身の安全は保障されても」
「それでも」
「マリー王女は血を好まず公平だ」
このこともまたマリーの美点だ、それが為に多くの者が彼女ん下に集まっているのだ。彼女のそうした資質に惹かれ。
「卿等旧教徒達も無下にはしない」
「資質があればですね」
「その資質に応じて遇して頂けるのですね」
「そうだ、しかも弾圧もしない」
彼等旧教徒をというのだ。
「間違っても命を奪うなぞしない」
「魔女狩りも禁じられるとか」
司教が太子にこのことを話した。
「何でも」
「その様だな」
太子も知っていて頷く。
「異端審問もだ」
「この国では廃止されて」
「惨たらしい拷問も禁じるのだな」
「そうされるとか」
「いいことだ、あれ等は帝国でも廃止したい」
魔女狩り、そして異端審問にそういったものに伴う惨たらしい処刑はとだ、太子も己の考えを司教に応えて述べた。
「教皇庁の介入の元でもあるしな」
「だからですね」
今度はオズワルド公が応えた。
「太子もその様に」
「そうだ、私も血は好まないしだ」
拷問もだ、太子も残暴な人物ではない。
「やはり教皇庁だ」
「あちらですか」
「彼等は血を好む」
マリーや太子と違いだ。
「そこから国に介入し利も狙う」
「それもですね」
「教皇庁の貪欲は知っている筈だ」
太子は二人に問うた。
「そうだな」
「はい、我々もです」
「そのことについては」
二人もすぐに答えた。
「よく知っています」
「この国でもそうでしたから」
「百年程前は特にでした」
「何かと教皇庁の介入を受けてきました」
「そして暴利を貪られてきました」
「異端審問でもそうでした」
「国に煙があがらない日はなかったです」
火炙りのそれだ、魔女とされたならばその末路は火炙りである。それでこの国でも多くの者が犠牲になってきたのだ。
「どれだけ焼き殺されたか」
「それこそすぐにはわからない位です」
「魔女の財産は全て教皇庁のものとなりますし」
「忌まわしいこともありました」
「そうだな、特にだ」
太子はここで司教を見て言った。
「卿はだな」
「はい、かつてはです」
「教皇庁にいてな」
「近い考えでした」
こう太子に答えた。
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