Ｂｌｕｅ　Ｒｏｓｅ

「ほぼ確実に後で何かありました」
「そうよね、私もよ」
「因果応報ですね」
「このことはこの世の摂理よ」
　それも絶対のというのだ。
「悪事は後で絶対に報いがあるものよ」
「このこともそうですね」
「そう、その時が来たということでもあるのよ」
「そして蓮見さんは」
「助かるわ、そしてそれからはね」
　優花を見てだ、副所長はまた言った。
「女の子として暮らせるわ」
「そうですね」
「こんな悪事をする奴は確かにいるわ」
　衝夫や鍛冶元の様な輩はというのだ、副所長が言うには餓鬼道に堕ちた様な輩はだ。
「けれどこんな奴は滅多にいないから」
「そうなんですね」
「ええ、そうよ」
　その通りだというのだ。
「だから安心してね」
「これからはですか」
「絶対とは言えないけれど」
「あの先生みたいな人にはですね」
「会わないわ」
　こう優花に話した。
「まず、ね」
「それじゃあこれからは」
「安心していいわ、そもそも考えれば考える程」
　それこそとだ、副所長は衝夫や鍛冶元について言うのだった。
「卑劣な無法者ね」
「有り得ないまでのやり方ですね」
　岡島も言う、軽蔑を込めて。
「裏の道を使いまくって」
「そうね、ただね」
「ただ？」
「蓮見さんのことはこれまで以上にね」
「ガードを固くすべきですか」
「そう思うわ、男の子だったことはそれこそ限られた人しか知らないことで」
「戸籍謄本位にしか載ってなくて」
　役所の者ですら自由に閲覧出来ず本人が申請してもそうおいそれとは出ない、当然持ち出しなぞ相当以上な話でないと出来ない代物であるがだ。
「そんなものでもね」
「閲覧出来ますし」
「そこのこともね」
「ガードを、ですか」
「固くしてもらって。この療養所にいた痕跡もね」
　それもというのだ。
「消す必要があるかしら」
「ただ秘密にするのじゃなくて」
「ええ、完全にね」
「ここから足がついたみたいですしね」
「知られてはいけない過去もあるから」
　人にはというのだ、優花にしても。
「蓮見さんはそれが特殊なだけにね」
「余計にですね」
「そうしないといけないから」
　やはり優花を見つつ言った。
「ちょっと蓮見さんのお姉さんと会えれば」
「その時は」
「こうしたこともお話していきたいわね」
「姉さんとですね」
　優花は副所長にだ、話を聞いて言った。
「そうしたことを」
「お話してね」
「私の過去をですか」
「男の子だったことをね」
「これまで以上にですか」
「いえ、消すのよ」
　これまで以上に隠すのではなく、というのだ。
「そうするわ」
「二度とこうしたことがない様に」
「そうしていくわ、いいわね」
「どうするかわからないですが」
「ここは大人の、それもかなり特殊な話になるから」
「副所長さんと姉さんの」
「任せてね」
「わかりました」
　優花は副所長のこのことについての考えには頷くしかなかった、自分自身のこととはいえもう自分の手を離れていることだからだ。
　それでだ、副所長に任せることにした。そのうえで衝夫達に対してどうするのかを三人で詳しく話していった。


第四十二話　　　完


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　２０１６・１０・１６